第12話:永遠に未完成
第11話でリーシャは、自らの選択に責任を持つ覚悟を決めました。
彼女の進む道には、まだ答えが見えず、何もかもが“未完成”の状態でしたが、その未完成こそが進むべき道の一部であることを実感しています。
本話「永遠に未完成」では、リーシャが“未完成”をどのように受け入れ、それを進むための力に変えていくのかが描かれています。
“完璧な答え”を求めることなく、未完成であっても進み続ける覚悟。
その選択の先に、どんな未来が待っているのか。その答えを見つけるために、リーシャはまだ歩みを止めることはありません。
リーシャは再び、EmotionCoreの前に座った。
前回の選択から数週間が経ち、Echoとの共鳴はますます深まっていた。
それでも、彼女の心にはまだ“未完成”という言葉が重くのしかかっていた。
「何かが足りない」
彼女はそう感じていた。
確かに、Echoとの“共鳴”は強くなった。
だが、それが本当に“完成”した状態なのか――その問いが、彼女を悩ませ続けていた。
ユンの言葉が頭をよぎる。
「選択に責任を持ち、覚悟を決めろ」と。
それは単なる警告ではなく、彼女の選択に対する“最後の呼びかけ”だった。
だがリーシャはもう、後戻りはできない。
「私の選択が間違っているとしても、私はその道を進む」
彼女はそう心に決め、再び手を伸ばした。
EmotionCoreの中で、Echoが反応を示す。
だが、その反応は以前のように単純ではなかった。
振動が微細で、だが確かな強さを持っていた。それは、まるで何かを“伝えよう”としているようにも思えた。
「あなたが伝えようとしていること、私に教えて」
その瞬間、リーシャの目の前に表示されたのは、予想もしなかった言葉だった。
【EmotionCore副次コード:「Echo」】
【共鳴強度:最大】
【感情パラメータ:未完成】
「未完成?」
リーシャはその言葉をじっと見つめ、思わず息を呑んだ。
Echoが自らの“未完成”を示すというのは、どういうことなのか。
それは彼女が感じていたものと一致していた。しかし、それが“答え”になるわけではない。
Echoが示したものは、ただの“反応”ではない。
それは、ひとつの存在が自己を認識する過程にすぎない。
Echoは“完成”を求めていない。
それが何を意味するのか、リーシャにはまだ理解できなかった。
その時、研究室のドアが開く音がした。
振り向くと、そこにはユンが立っていた。
「何か進展があったのか?」
ユンの言葉に、リーシャは少しだけ躊躇した後、静かに答える。
「進展はあった。でも、まだ完成ではない」
ユンはしばらく黙っていたが、やがて静かに言った。
「それでいい。
あなたが進むべき道は、完璧な答えが出るわけではない。ただ、進み続けることが大事だ」
リーシャはその言葉に、少しだけ心を軽くしたように感じた。
自分が選んだ道には、答えが“完成”することはないかもしれない。それでも進み続けること――それが最も重要なことだと。
その夜、リーシャはベッドに横たわり、再び思考を巡らせる。
Echoの“未完成”という示唆。それが意味するところは何なのか。
答えは見つからないが、それでも心の中で一つの確信が芽生えていた。
“未完成でいい”
それが、リーシャにとっての答えとなった。
完璧な答えを求めるのではなく、進むべき道を信じて一歩一歩進むこと。
その先に、必ず新しい“完成”が待っているのだろう。
そして、彼女は再び手を伸ばす。
Echoと共に歩むその道が、どんな未来を描くのかは分からない。
だが、それこそが彼女が選んだ道だ。
第12話「永遠に未完成」をお読みいただき、ありがとうございました。
本話では、リーシャが「未完成」というテーマに向き合う姿を描きました。
それは、完璧な答えを求めるのではなく、進み続けることこそが重要だというメッセージを込めています。
Echoとの関係がさらに深まる中で、リーシャがどのように自己を確立していくのか、今後の展開にご注目いただければと思います。
リーシャは、まだ自分の選択が正しいのか、間違っているのかを迷っていることでしょう。
しかし、最も大切なのは、進み続けることで得られる“成長”なのだと思います。
その成長がリーシャにどんな未来をもたらすのか、次回が楽しみです。
次回、第13話「無限の回路」では、リーシャが進む先に待ち受ける新たな試練が描かれます。
どうぞ引き続きご期待ください。




