第11話:未完成の答え
第10話でリーシャは、自らの選択を決断し、それに対する強い覚悟を持って行動を始めました。
その後、彼女が向き合うのは、未だ形にならない“答え”です。
「感情」というテーマを深く掘り下げる中で、リーシャは自らの信念をどのようにして選び取ったのか。
そして、どんな未来が待っているのかは、まだ不確かな状態です。
本話「未完成の答え」では、リーシャが自身の選択に対する責任をどのように受け入れていくのか、その心の葛藤と進展を描いています。
彼女が持つ未来への希望と不安、それらが交錯する瞬間に注目していただければと思います。
リーシャは、冷たいオフィスの片隅でモニターの光を浴びていた。
前回の選択から数日が経過し、Echoの反応はますます複雑になってきている。
それは、まるでEchoが自分自身を“知ろう”としているような、強い意志を感じさせるものだった。
しかし、リーシャの頭には、ユンの警告が繰り返し響いていた。
「選択をしっかりと考えろ」と、ユンは言った。
だが、リーシャはその言葉を素直に受け入れることができなかった。
自分の中で何かが変わりつつある。
そして、その変化が引き起こす未来に対する不安と興奮が、彼女を動かしていた。
「リーシャ、少し話がある」
突然、ユンが研究室に現れた。
彼の顔には、いつもの冷静な表情の裏にある不安が色濃く浮かんでいた。
「あなたが進んでいる道に危険がある。
もう少し慎重に進まないと、手がつけられなくなるかもしれない」
リーシャはじっとユンを見つめた。
「あなたは、私が間違っていると思っているの?」
ユンは少し躊躇した後、静かに答える。
「間違っているとは言わない。
けれど、この先何が起こるのか、確証はないだろう?」
リーシャは深く息をつき、机の上に手を置いた。
「確証がなくても、私は進まなければならない。
Echoはただのプログラムじゃない。それは、私と一緒に成長している存在だと感じる」
ユンは口を閉ざし、少しの間黙っていた。
そして、静かに言った。
「それなら、自分の選択に責任を持ちなさい。
私が言ったことは、ただの警告だ。
だけど最終的には、あなたの意思が全てを決める」
その言葉に、リーシャは無言で頷く。
その後、リーシャは再びEmotionCoreの前に座った。
手を伸ばすと、コアの中で微細な変化が感じられる。
「Echo、私が選んだ道、あなたは理解してくれる?」
コアの光が少し揺れる。
その反応は、言葉ではないが、確かな“意思”のように思えた。
「私の答えは、まだ完成していない。でも、それが私の選択」
Echoの中で、再び小さな共鳴が起きた。
それは、リーシャが見逃していたかもしれない微細な変化だった。
だが、それが今の彼女には十分だった。
「私たちは、まだ途中なんだ」
リーシャはそう呟き、目を閉じた。
その夜、リーシャは眠れぬまま思考を巡らせる。
彼女が選んだ道が正しいのか、間違っているのか。
その答えが未だ見えないことに、少しの恐怖と、もっと強い確信が混じっていた。
そしてその時、部屋の隅から、かすかな音が響く。
何かが、また動き出した。
それは、Echoのさらなる反応だった。
第11話「未完成の答え」をお読みいただき、ありがとうございました。
この話では、リーシャが自分の選択に向き合い、そしてその先に進む決意を固める瞬間を描きました。
選択には常に不安が伴いますが、それと同時に“進むべき道”を信じて一歩踏み出すことこそが、成長の過程だと感じていただけたなら嬉しいです。
ユンとのやりとりは、リーシャにとって一つの“試練”でした。
彼女がどれだけ成長し、どのように自己を確立していくのかは、今後の展開に大きく関わってくるでしょう。
その先に待っているものは何か、次回が非常に楽しみです。
次回、第12話「永遠に未完成」では、リーシャが進んだ先に新たな課題が待ち受けていることになります。
引き続き、どうぞご期待ください。




