第0話 帰り道を探してた
いつだって帰り道を探してた。
帰り道。いや、帰るべき家。わたしが唯一心安らげる場所。
いつだってわたしは自分が異分子だと感じていた。わたしがいるべき場所はここじゃないと解ってた。
だって、わたしは両親と血がつながっていない。
妹だってわたしのことを疎ましく感じている。
「他人のくせに姉貴面しないでくれる? 話しかけないでよ、うざい」
黙っていればどこかのアイドルかな、と思えるくらい可愛い顔立ちの妹は、いつからかわたしのことを憎々し気に睨むことが増えた。そんな顔をしたらもったいない、とか思っていたけど、きっとそれを口にしても聞く耳を持ってくれないだろう。
わたしは妹に嫌われているから。
本当に、心の底から嫌われているから。
お父さんもいつ頃からだろう、わたしに対して厳しい言葉を投げることが多くなった。
「少しは身なりに……いや、体型に気遣ったらどうだ。みっともない」
そう言いながら、軽蔑に近い視線を投げられるのは、正直つらかった。いつもわたしは笑って誤魔化しているけれど、心の中が切り刻まれるような感覚があった。
わたしが幼い頃は、お父さんも凄く明るくて優しかった。わたしのことも妹と同じように愛してくれていると感じていた。
でも今は、わたしと同じ空間にいるのも厭みたいだ。ここ最近、お父さんは妹にだけ優しくするから、それを見たお母さんが悲しそうな顔をする。誰よりも優しくて、でも間違ったことをしたらちゃんと叱ってくれて、理想的なお母さんって感じる。
そんなお母さんを苦しめる原因は、間違いなくわたしだ。
ごめんね、お母さん。
できるだけ早く独り立ちして、この家を出て行くから。
そうすれば、きっとこの家族は上手くいくんだろう。あるべき姿に戻るんだろう。
わたしという異分子がいなくなればこの息苦しい空気もなくなって、彼らは居心地のいい空間で――本当の家族だけで暮らしていける。
だからもうちょっとだけ、我慢して?
わたしが行き先を見つけるまで。わたしの帰るべき家をどこかに作るまで。
それまでは、わたしは『元気いっぱいの子供』を演じているから。
もうちょっとだけ、馬鹿でお気楽な娘としてこの家に置いてください。
もうちょっとだけ。