公将家家長としてよりも父として。② ファーレのお父さん視点です。
保存が上手くいかず消えてしまい遅くなりました。
前半と続く位は書き直したので投稿します。また後で入力し直すかもしれません。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
(何故?全て処分した筈なのに……!!)
息子のその人間とは思えない表情には見覚えがあり、またかと1度きつく目を閉じると父としての顔を捨て、スヘスティー公将家家長としての顔に切り替える
「スヘスティー家家長殿!?」
「エクソルツィスムス子将家家長殿此処は任せて貰えないだろうか?決して義娘を傷付ける真似を私が2度とさせない。
「………。」
それと父としてではなくスヘスティー家家長として話しをしたいと思っている。一度引いては貰えないだろうか?」
エクソルツィスムス子将家家長の非難する声に凛とした態度で落ち着いた声で言葉を返すと、雰囲気が変わった事を察した彼はただ黙って話しに耳を傾けてくれる。
「……それなら…分かりました。」
渋々と言った表情で色々と飲み込んだ後にエクソルツィスムス子将家家長は納得を示してくれた。
「スヘスティー家家長様……私からも1つ宜しいでしょうか?」
「……勿論、構わない。」
花嫁の衣装を整え直し終えた家長夫人が凍えそうな視線をこちらに向けて声を掛けてくる。
「今回の責任の件につきましては私と息子のエレミタが伺いますのでそのおつもりでお話し下さいね。」
「……そうだな……本当に申し訳無い。」
視線は変えず柔和に微笑む姿に氷の女神と呼ばれる彼女が、未だ花嫁に心配そうに付き添う息子も今回の件についての話し合いの席に着かせると言う言葉に、腹に据えかねている様子が伺えた。
「私はエクソルツィスムス子将家家長様達とファーレの控え室に参りますね。」
「ああ頼む。」
妻は悲壮な表情でそう告げるとエクソルツィスムス子将家家長達に申し訳なさそうに声を掛け一緒に部屋から出ていった。
「……それでお前はボイティ嬢に何をした?」
「……何も。」
先程のあの表情から以前断れずに作り上げたとファーレから聞いていたスヘスティー家に裏で抱えきれない程の膨大な富と、知られれば家が取り潰しになりかねない諸刃の刃の様な薬の副作用が見て取れて、どうしてと遣る瀬無い気持ちが湧き上がっていた。
「……お前は今自分がどんな表情をしているか見えてないだろう?その言葉を鵜呑みには出来無い!!」
「………。」
焦点は合うが何処か虚ろな瞳の息子の言葉に少し感情的に否定をしてしまった。
「もう作らないと約束しただろう?」
叫び出してしまいたい気持を抑え少し脅え始めた息子に冷静に尋ねた。
「……約束はまもっている。父上僕はもう造っていないよ。」
そう表情を曇らせながら告げて来る言葉に引っかかりを覚えて凝視してしまう。
(僕はもう?ファーレが本当に造っていないのなら、一体誰があんな薬を造り続けている?)
「…………?」
それが誰かを問いかけたかったが、横で動く気配を感じて口を閉じ視線を向けると気を失っていた花嫁が重そうに瞼を開け虚ろな気な視線でこちらを向いた。
(ああやはりそうか…でも良かった……。)
ファーレによく似たその瞳に何か飲まさせた事を確信して、こんな恐ろしい目に合わせてしまった事への公将家家長として申し訳無い気持ちが只々押し寄せて来たがそれと同時に彼女が目覚めた事で婚姻式を迎えられると安堵する気持ちも湧き上がる。
(婚姻式が済めば、君が安心できるようこれからは家族全員で気をつけていく。だからどうかファーレを捨てないでやってくれ……。)
それは今にも壊れてしまいそうな息子の幸せを願う身勝手なただの父親としての祈りの様な気持ちであった。