あの日から ボイティのお兄さん目線 ④
ーーカチャッ
(戻ってきた……?)
眠い目を擦り明かりが灯った隣の部屋に大きな手荷物鞄を乗せたワゴンを引いたスクレテールと母とあの老父が部屋に入って来たのはもう夜も更けた時刻だった。
(っ!あれは…最初からお母様は妹を治す気は無かったの…?)
箱の中身に全身が冷えて行く気がしたのは父とヴァルターに自分の部屋へ1人で戻ると伝えて別れた途中の廊下で聞こえてきた話しによるものだった。
『奥様はどうして……』
『猛毒で患者を…』
『追放されかけているって…』
侍女達があの老父について話している内容に、母が何を考えているのか分からなくなり母の執務室にある隣の部屋に入って待っていたが、もしかして入っているのはと信じられない気持ちで見つめてしまう。
「プローハ医師様本当にありがとうございます。」
「いえ…本当にあの傷では…奇跡の様でした。お嬢様が頑張られたのだとおもいます。それよりもどうし……」
「こちらは今回の謝礼としてご用意致しました。それと出来ましたら娘が目覚めた後も少し付き添っていただきたいのです。勿論これとは別にお礼をご用意致します、如何でしょうか?」
(あれ全部に詰まっている……!?)
母の話しに安心したがスクレテールがデーブルに乗せて開けた大きな手荷物鞄には見たことも無い大量のザーラが入っていたのを見つめ驚いたが、他に同じ鞄を3個隣に乗せたのを見て言葉を無くした。
「私はそんなつもりで……」
「それとどなたから伺ったかは存じませんが医師様達が今隠れているあの一帯は私の持ち物なのです。」
「っ!…では…」
「もし聞いて頂けましたら少し研究をしやすいようにあの場所を整える事も、好きに研究植物をお植えするのも、今糾弾されている連れて来られなかった助手の方々もこちらであの場所にお連れするとお約束致しますわ。」
「!!??」
何の話しか分からなかったが緊張した様子で苦渋の表情を見せていた老父は突然ずっと表情を崩さずに唇を上げ優しげな表情を見せている母を見つめると目を見開き信じられない物でも見る様な表情に変化した。
「研究が進んだ暁には我が領での住まいもご用意致します。如何でしょうか?」
「……エクソルツィスムス子将家の領が何故栄えていくのかが分かりました…。金額はその半分で構いません。」
薄く瞳が滲み始めていたのか老父が指で目を押さえ拭うと、真剣な表情を母に向けて話しを承諾していた。
「なら、半分は投資としてお渡し致します。色々皆様の誤解が解けましたら税として納めて頂ければ問題ありませんから。」
「っふ!?……ハハハハハハハ!…分かりました。皆様の様に倍以上にして必ずお渡し致します。」
母の言葉に目を丸くすると突然大きな声で老父は笑い始め片方の手を母に向けて差出していた。




