夕暮れ
それから、ぽつぽつと会話したり、黙って辺りを眺めたり、そうしているうちに日は弱くなっていった。
「そろそろ、戻らないと」
私はスカートをタンタンと叩き、乾いた苔のクズを払った。
彼は、少し離れたところで無造作に座り、指編みで何かを作っていた。
「ほら、腕輪だよ」
…すごい
その辺に生えていた長い葉で、幅のある腕輪を編んでくれた。
差し色に、茎の赤い植物を編み込んでいる。
「あ…ありがとう」
私は、かぁっと赤くなったが、彼は動じずに私を見つめている。
指輪じゃないところに、私への尊重があるようで、とても嬉しかった。
腕輪をはめた私は、彼と森の出口まで歩いた。
もう夕日が差し込んできて、風も止みはじめている。
ちょうどこの時間は、大きな風を起こすのを控えているらしい。
私たちは、森の出口で別れた。
「大丈夫だよ!おじいちゃんが荷車でこの辺まで来てるはずだから」
薄いベージュの綿毛をもった少年は、さわさわと髪をそよがせながら、左手で手を振っている。
ふいに真横に小さな竜巻を起こし、少し浮き上がってから右手に繋いだ私の手を離した。
「じゃあ、またね」
みるみる彼は竜巻に巻き上げられ、斜めがけした袋からは、2〜3粒イチゴが飛び出して、彼の肩のあたりをぐるぐると回った。
彼が遠くに行くのを見守ってから、私は家路を急いだ。
半分の量に分けたイチゴは、それでもジャムにしないと食べきれないほどたくさんあった。
「おお〜い」
「あ!おじいちゃん!」
「つむじ風が立ったんでな。お前が風坊といると思って、来てみたんだ」
私は、こんなにイチゴが採れたとおじいちゃんに報告しながら、笑顔がおさまらず、ルンルンと軽い足取りで、おじいちゃんの荷車に乗った。
夕暮れ時に会った人には、警戒しなければならなかったのに。