表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

日課

「おはよう」


 台所に立つ妻の背中に声をかける。


 忙しそうな背中は、チラッとこちらを振り返って「おはよう」と声だけが響く。


 炊きたてのご飯と味噌汁の匂いが漂う食卓。


 俺はいつものように玄関へと向かい、新聞受けの新聞紙を取り出す。


 玄関の下駄箱の上に新聞紙を置くと、再び外に出る。


 妻が大事にしているガーデニングの花々にジョウロで水を撒いていく。


「この花はね、お水をやりすぎるとすぐ枯れちゃうの。で、あっちはね、水はたっぷりあげなきゃ駄目なのよ」


 実に楽しそうに話す妻の顔は活き活きとしており、言っていることの大半は右から左へと流れてしまったが、眩しい笑顔だけは今も心に残り続けている。


 あれから数年後、俺の朝の日課に水やりとゴミ捨てが加わった。


「最近、重い物を持つのが辛いのよ」


「お安い御用さ」


「ありがとう!」


 加齢と病気のために、俺より早く体力が衰え始めている妻。


 そのうち、俺の朝の日課に、朝食作りも加わるかもしれない。


 ふと、若き日の妻を思い出し、寂しさを覚えるが、今の、出来ないことが増えてきている妻も変わらず愛おしいと思える。


 世話を焼かれながら、妻が出来なくなったことをこなしていく日常は、平凡で平和で、かけがえのないものなのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ