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狼さんたちも食べますかー?


 騒ぎを聞きつけたらしく、七匹の狼たちが戻って来た。


 茂みの向こうからこちらを羨ましそうに眺めているので、アメリアは声をかけてみた。


「狼さんたちも食べますかー?」


 ――ドシュン!


 風を巻き起こしながら、0コンマ何秒かで距離を詰めて来た。瞬きのあとには、七匹の狼たちが目の前でお座りしていて、尻尾をブンブン振っていた。


 ……可愛い♡


 ニコニコになったアメリアはステッキを振ろうとして、ハッとして動きを止めた。


「あ、でも、狼はネギが駄目ですかね? ラーメンってネギが入っているのです」


「大丈夫だ」と蛙。「わしも狼たちも、動物じゃない。上位精霊だから」


「そうなのですね。じゃあ」


 ――ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン!


 狼たちは行儀良く正座をして、どんぶりを左手で持った。一匹そそっかしい狼がいて、モコモコお手々をスープの中に突っ込んでしまい、『アチッ!』みたいにキュッと目を瞑っている。


「――出でよ、氷!」


 アメリアがバケツいっぱいの氷を出してやると、その狼はお手々をそこに突っ込み、今度は『チベタッ!』みたいに肩を竦めた。


「狼さんの手の形だと、お箸を使うのは難しいですかね。じゃあフォークを出しますね」


 フォークを出して配ると、一匹、しっかり者の狼が、『俺には箸を寄越しな』とジェスチャーで訴えてきた。


「チャレンジャーですねぇ」


 アメリアは感心して、その狼には箸を渡してやった。


 皆なぜか正座、横並びでラーメンを食べ始める。


 あの火傷をしたそそっかしい狼が、フォークですくった麺をツルッと滑らせて、ボチャンと勢い良くスープの中に落としてしまった。反動でスープが飛び散り、雫が目に入りそうになり『うひぃ!』とのけ反っている。


 隣に座っていた狼がそれを見て、大きく口を開けてケタケタ笑った。


 そんなこんなのあと、ラーメンをすすった狼たちは、皆一様に頬をピンクに染めた。


 アメリアはそれを見てくすくす笑ってしまう。


 可愛いなぁ……。


「あ、そうだ、胡椒を忘れていました。蛙さん、いかがです? 味が締まりますよ」


「おう、頼む」


 蛙のどんぶりにフリフリと振ってやると、狼たちがどんぶりを前に出し、『俺たちにも』と催促してくる。アメリアは眉尻を下げた。


「でもですね……狼さんは鼻がいいから、胡椒はキツイんじゃないかなぁ」


 ――ズズイ! 七つのどんぶりが迫って来る。


 あらそう? そんなに欲しいなら……。


 アメリアが各どんぶりに胡椒を振ってやると、狼たちが一斉にくしゃみを始めた。


 へくちっ!


 くしゅん!


 けほけほ!


 ふえーくしゅ!


 けんけん!


「ほら、言わんこっちゃなーい」


 それでも鼻水を垂らしながらラーメンをすすり、狼たちは終始頬っぺたをピンクに染めて喜んでいた。


 餃子も出してあげた。


 皆、餃子をフォークで突き刺し、隣の狼と乾杯をするように餃子同士をぶつけ合ってから食べるという、謎のパーティースタイルが定着――黄色の蝶々が舞う中、食事会は和やかに進んだ。





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[良い点] 狼さんたち可愛いパリピですな、しゅき!
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