う~~~~~ま~~~~~い~~~~~ケ~~~~~ロ~~~~~!!!!
「ドレスチェーンジ!」
キラキラキラ~ン!
アメリアは身に纏っていた水色のドレスを、形はそのままでゼブラ柄にした。
「きゃー可愛い♡ あがる~♡」
ドレスを見おろして飛び跳ねるアメリアを眺め、蛙は半目だ。
「……そうかぁ? 元の水色のほうがよくないか?」
「うち、ゼブラ柄好き♡」
「まったく会話にならんな」
ノリノリのアメリアは意気揚々と魔法のステッキを振るう。
「――出でよ、ラーメン!」
ポン、ポン!
どんぶりに入ったラーメンがふたつ現れた!
「お、おおー! 良い匂い! これは確かに美味そうだ!」
蛙、思わず正座。
「レンゲと割り箸も!」
それらは前世でアメリアの体に触れたものだから、出せるはず。
ポン、ポン、ポン、ポン!
「餃子も出て来い! タレも!」
ポン、ポン!
「む、娘~!」
蛙は正座のまま、胸の前で両手の指を組み合わせた。まだ食べていないのに、感動のあまりちょっと涙目になっている。
「あ、蛙さんにはどんぶりが大きいかな?」
アメリアが『失敗した~』と頭をかくと、蛙が立ち上がる。
「わしが大きくなるからいい」
ポフン!
蛙の体がちょっと大きくなった。といってもアメリアの腰くらいまでの背丈しかないが。
アメリアと蛙は並んで腰かけた。
「蛙さん、お箸は使えますか?」
「どうするんだ?」
「まず割ります」
アメリアは蛙に見せるようにして、割り箸を割ってみせた。
――パキッ!
「できますか?」
「できる」
蛙は器用に割ってみせた。
「すごいですね、蛙さん!」
「わしにできないことはない」
「まだまだ、本番はこれからです。お箸の使い方はかなり難しいですよ」
アメリアは箸を持って、二、三回動かしてみせた。すると……。
「ふむ……仕組み的に、よくできておるな」
蛙はすぐにマスターした。
「蛙さん、格好良いですね!」
アメリアは感動した――難しいお箸の持ち方をすぐにマスターしてしまうなんて!
「だろう?」
「では、ラーメンを食べてみましょう。テーブルがないので、どんぶりを持つようですが――火傷に気をつけてくださいね」
アメリアは手のひらの皮膚が赤ちゃんのように薄いので、ハンカチをあいだに挟んで熱さを防いだ。
ところが蛙は丈夫らしく、平気な顔で熱々どんぶりを左手で持ち上げる。
「持ったぞ」
「こうして麺を箸ですくい上げ――すすります」
ずず……アメリアはラーメンをすすった。
そして爆裂に感動した。
「ものすごく美味しいです~~~~~♡」
「そ、そんなに美味いのか?」
蛙はゴクリと唾を飲み、震える手でラーメンを数本箸ですくい上げた。ホワン、と湯気の量が増える。
柄にもなく緊張する蛙。
「あ、蛙さん、さっきうちがやった『麺をすする』スキルですが、かなり特殊です。初心者がいきなりやるのは無理かも」
「わし、できる!」
蛙は強情に言い張り、ずず……とラーメンをすすった。
「蛙さん、すすり方、完璧です!」
ラーメンをひと口食べた蛙はどんぶりを左手に持ったまま、スクッと立ち上がった。
そして叫んだ。
「う、う、う、う~~~~~ま~~~~~い~~~~~ケ~~~~~ロ~~~~~!!!! わし、今、死にたい! 幸福感MAXのまま死にたい!」
「DEATH! あかん!」
アメリアは仰天した。
「あきません、蛙さん! 餃子がまだです!」
「……え、餃子ぁ? このラーメンの感動を超えられるかなぁ?」
蛙が嫌な感じの流し目をアメリアに送ってから、かがんで餃子を箸で摘まみ、タレにつけてパクリ。
数秒の間、からの――。
「なんじゃこりゃ~~~~~!!!!! ラーメンと同じくらい美味い~~~~~!!!!!」
絶叫が響き渡る。
「よかったです」
頷くアメリア。
「娘~! おぬしに魔法のステッキをやって、よかった! おぬしは神だ!」
どんぶり片手に、サッと機敏にアメリアのほうを振り返る蛙。
「ありがとうございまーす♡」
アメリアはウィンクして、親指を立ててみせた。