表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

7.メガネっ娘大噴火

 アルフォンスは、キラキラと尊敬の眼差しを向けるマリーと、照れ照れのノアルスイユの様子をんじーと眺めた。


 ノアルスイユは書痴ではあるが、別に女性嫌いというわけではない。


 初見だと銀縁眼鏡の印象が強くて、いかにも気難しげに見えるようだが、打ち解ければびっくりするくらい親切だし、良い男だと思う。

 侯爵家の出だから家柄は良いし、容姿だって悪くない。

 なのに、いかんともしがたく縁遠いのは、自分のせいもあるのではないかとアルフォンスは以前から気にかかっていた。


 貴族学院時代、アルフォンスにアプローチしようと、王太子の親しい友人であるノアルスイユに近づこうとするあざとい令嬢は結構いた。

 ノアルスイユは、下心満載の令嬢達を超塩対応で突っぱねまくっていたが、そのせいで他人を寄せ付けない人物だと思われるようになってしまった。

 それでも昔は密かに思いを寄せる令嬢もいたのだが、彼女はノアルスイユの気持ちに気づかぬまま別の男性と結婚してしまい、大学を卒業して王太子秘書官として出仕しだしてからは激務の日々。

 回復のため、休日は引きこもって本を読みまくっているので、なかなか出会いもない。


 シャルリュー男爵家は、可もなく不可もなくという田舎貴族。

 領地は国一番の穀倉地帯の一角で、経済状況も悪くないはずだ。

 ノアルスイユの相手なら、もう少し家格の高い令嬢が好ましくはあるが、気の合う令嬢と縁が結ばれるのならそれに越したことはない。

 マリーも、おっちょこちょいなところはあるが、素直で気立てが良さそうだ。


 それに、この間の舞踏会で、ノアルスイユが珍しくカタリナと踊っていたと小耳に挟んだ気もする。

 普通に、ノアルスイユが「眼鏡の君」なのではないか──


「事情はわかった。

 念のため、後で侍女にボディチェックしてもらうが、大事にはならないだろう。

 私の部屋だったから良かったが、これが陛下の執務室だったら大変なことになったのはわかるね?」


「は、はい」


 マリーはごくりと咽喉を鳴らして幾度も頷いた。

 機密情報満載の国王の執務室だったら、スパイと疑われて厳しい詮議を受けただろうということだ。


「王宮には、立場に応じて、立ち入っても良いところ、悪いところ、しても良いこと、悪いことがある。

 今後は注意して、勤めてほしい」


「ご寛恕、まことにありがとうございます。

 重々、肝に銘じます」


 マリーは立ち上がると、深々と頭を下げた。


「それにしても、結局『眼鏡の君』は誰なんだろう。

 誰か、心当たりがある者はいないのか?

 ノアルスイユ、君はこのあいだカタリナと踊ったそうだな?」


「はいはいはーい! 僕、レディ・カタリナと踊りました!!

 その後、初めましての令嬢たちと四五人踊ってますー!」


 ノアルスイユがなにか言う前に、クレアウィルが無駄に元気よく手を挙げた。


「俺もだ!」


「私もです!」


 ジェルナンド、ブレザックもバシッと手を挙げる。


 空気読めよお前ら!とアルフォンスは内心キレた。

 というか、カタリナが踊りすぎだ。

 一体何人と踊ったらこういうことになるのだ。


「全員踊ったのか!

 なら、マリーを覚えている者は?」


 今度は誰も手を挙げず、お互い顔を見合わせている。


「いえ、あの時はすっごい塗り塗りして、髪型もドレスもほんとテンプレだったので……」


 わからなくても仕方ないと、申し訳なさそうにマリーが肩をすぼめた。


「むむむ……

 マリー、眼鏡は今持っているのか?

 眼鏡をかけて顔を見たら、思い出せるかもしれない」


 ほんとのほんとにノアルスイユが「眼鏡の君」である確率は4分の1。

 だが、落ち着いた雰囲気だったとマリーは言っていたし、童顔のクレアウィルとチャラいジェルナンドは脱落当確。

 無口なブレザックを「落ち着いている」と感じたのかもしれないが、ブレザックなら筋肉が印象に残りそうなものだし、ノアルスイユの可能性は十分ある。


「は、はい」


 マリーはドレスのポケットからケースを取り出し、眼鏡をかけた。

 レンズの下だけフレームのあるアンダーリム型の赤い眼鏡だ。


「かーわーいーい!」


「これは素晴らしいメガネっ娘!」


「可憐だ……」


 素朴な愛らしさを増幅させるような眼鏡に、秘書官三人がきゃいきゃい騒ぐ。

 その中でノアルスイユだけ軽く固まっているのを見て、アルフォンスは小さくため息をついた。


 眼鏡をかけたマリーは、改めて一同を見渡し──


「みぎゃああああああ!?

 王太子殿下のお顔がよろしいすぎいいいいい!?」


 素っ頓狂な叫び声を上げた。


「ふぎゃッ ジェルナンド様!

 チャラそうだけどイケメン! めっちゃイケメン!

 女子にめちゃめちゃモテるタイプー!」


「あーあーあー! ブレザック様!

 ここでまさかの眼鏡とガチムチの異種格闘技!

 筋肉が好き、でも眼鏡も大好きってわがままドリームを叶える奇跡のコラボレーション!!」


「ノアルスイユ様!?

 絵に描いたような王道氷の貴公子系眼鏡で名探偵とかどういうチートなの!?

 あーあーあー、めっちゃ冷たくされたい、このハサミムシめって眼で睨まれたい!

 でもうっかりデレられたら、心臓吹き飛んで死亡待ったなしじゃんコレやばいやつううう!!」


「ここでクレアウィル様はショタっ子系眼鏡ですと!?

 いや、もう出仕されてるオトナな方に、カワイイとか言ったら絶対嫌な顔されるけどカワイイのはしゃーないじゃん!?

 カワイイって言わせろ言わせてくださいオナシャス!!」


 理性リミッター的ななにかが吹っ飛んでしまった様子で、マリーは叫び散らかした。

 一同、唖然とするしかない。


金髪縦ロールの派手派手公爵令嬢カタリナ

「令嬢たるもの、顔のよい殿方全員と踊らないうちは舞踏会から帰ってはならないのですわ!(ドヤァ)

ちなみにこの話、わたくしがノアルスイユをこき使いながら毒殺事件の謎を解く『公爵令嬢カタリナの計略』(https://ncode.syosetu.com/n6288ic/)のスピンアウトですのよ。

ページ下部にシリーズページのリンクを貼っておりますので、ご覧いただけると幸いですの」(華麗にカーテシー)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ