安住の地を守るために
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
となれば、尚更、邪魔されるわけにはいかない。柚の女優人生も龍達の生活もまだまだこれからなのだ。
では、誰がそれを守るのか? 今回のように一般市民である青山一家や死獣神メンバーだけでは、やれることに限りがある。よしんばできたとしても、それは一時しのぎにしかならないだろう。
恒久的な平穏をもたらすためには、どうしても首脳クラスの人間が動くしかないのだ。
それを誰よりもわかっていたのだろう。国のトップよりずっと偉いあの人物が、既に対策を講じていた。
「どうやら、手を打っておいて正解だったようじゃな」
突然現れた白髪の老人に、雲雀達は驚きつつ、『誰だ?』と首を傾げる中、ペガサスとの付き合いが割と長い武文だけは、反応が違った。
「そのお姿……もしや、あなたは!?」
「どうやら、おぬしはペガサスから聞いておるようじゃな。如何にも。わしは第5代大神・ゼウス。おぬしらで言うところの神様じゃ」
「か、神様ぁーっ!?」
そう。この人物こそが、ペガサスに使命を与えた人物であり、全知全能の存在でもある世界の王、神様その人である。
とんでもない大物の登場に、一同は仰天し、平伏する。
「すみませんでしたっ! 頭が高かったです!」
「よいよい。かまわん。頭を上げよ」
「は、はぁ……でも……本物?」
美夜は信じ難いといった様子で恐る恐る尋ねたが、天国の長でもある神様が嘘をつくはずがないし、つく必要もない。美夜の気持ちはわかるとしつつ、肯定した。
「そ、それで、そのようなお方がどうしてこちらに?」
「あぁ、実は先刻、この国の議員と共に、各国の首脳や国連の者と会談してきての。この国を正式な国として認めると同時に、以後、エピウスに関するあらゆるものを侵害することを禁ずるよう命じてきたところじゃ」
「じゃあ!」
「うむ。もう日本政府のようなバカなことをする輩はおらんということじゃ。ついでに、いらんちょっかいを出した日本との国交も断絶してきた。そこにおる者達が帰るまでは問題ないが、以降は天使の許可を得て同行してもらわねば、出入国できんようにさせてもらった。まぁ、事実上鎖国みたいなものじゃが、この国にはこれぐらいの方がちょうどいいじゃろう」
神様が人間社会に干渉するなど異例中の異例だが、至れり尽くせりとはこのことだ。エピウスの平和と自分達の生活が守られたと知った龍達は、諸手を挙げて歓喜した。
「神様、ありがとうございます!」
「礼には及ばん。大神として当然のことをしたまでじゃ。寧ろ、対処が遅くなってすまなかったな。さて、わしはこの国の温泉にゆっくりと浸かってから、天国に帰るとするかのう。サラバじゃ。おぬしらが幸せに生きることを、わしは心から願っておるぞ」
そう言うと神様は、手を振りながら去っていった。その背中は決して偉ぶっておらず、とてもスマートに見えた。
これだけ良くしてくれた人物の期待を裏切るわけにはいかない。2度と道を踏み外すことなく幸せに生きようと、龍達は心に強く誓った――――――




