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死獣神~生の書~  作者: 天馬光
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盲従の愚かさ

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。

 そんな彼女に黒猫は穏やかに、けれど諭すように語りかける。


「やっぱり優しいね」


「え?」


「だって、それだけの力を持ってたら、姿を見せることなく、私達や犬飼源士郎を容易に瞬殺できたはず。そうしなかったってことは、ほんとは人殺しなんてしたくないんでしょ?」

 事実、彼女ほどの探知能力があれば、青龍が頭上のダクトを通過することも察知し、レーザーで両断することもできたはず。

 そうならず、何事もなく先に進めたということは、好きな人をこの手で殺したくないから、敢えて見逃したということである。

 その想い人の手によって、自らの希望である清志郎が死ぬかもしれないのに。


「――その優しさは認める。けど、龍君や未来さんのような真の優しさじゃない。本当に優しい人っていうのは、相手のためなら厳しくなれる人ことを言うの。恩人の過ちを正さず、従ってるのは、優しさでも何でもない。ただ甘いだけ、盲従なだけ。中途半端な優しさは誰のためにもならないよ」

 黒猫の言ったことは正しい。まさしく正論だ。

 故に、それを突きつけられた紗那は逆上した。自分と清志郎を全否定された気分になったからである。


「……訂正してください。柚さん。それの何がいけないんですか!? 主を従い、支える。それは部下として当然の心理です! それに、清志郎さんは間違ってなんかいません! なので、正す必要なんかありません!」

 紗那は怒りに任せてレーザーを撃ったが、まだわかっていない。その忠誠心が1番の問題だと。


 清志郎が道を誤ったのは、彼だけのせいではない。紗那を始めとする青年部のメンバーが、妄信的に清志郎を肯定し、希望を見出だしたからだ。

 彼女達がもう少し冷静だったら、清志郎は葛藤の末に自首を選んだかもしれないし、そもそもこんな愚行をすることもなかった。

 純粋な忠義心が、主から正しい選択肢を奪い、美しい主従関係が、自分達の掲げた理想を歪めたのである。


 そのことに気付いていない紗那は、レーザーを乱射するが、黒猫には掠りもしない。さっきまであんなにてこずっていたのに。


「な!? どうして!?」


「私がただ囮に徹するだけだと思った? ちゃんとコピーしたよ。あなたの能力」

 いつの間にと思うかもしれないが、黒猫は相手の目や動作を見るだけで、能力をコピーすることができる。囮をしている最中に会得するなど、造作もないのだ。


「だから、さっきから聞こえてるよ。あなたの心の叫びが」


「そんなこと!」

 紗那は拒絶するように攻撃するが、冷静さを欠いた攻撃が黒猫に当たるはずがない。心の声も読まれているため尚更である。

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