紗那の秘密
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
これなら、紗那に気取られることなく接近し、捕らえることができる。そう考えてやったのだが、
「雲雀さん、ごめんなさい。あなたがどう動くか、私には全部お見通しです」
紗那は動じることなくキーボードを操作すると、背後をとろうとする朱雀をピンポイントで狙って、浮遊機雷をぶつけてきた。
幸い、直撃は免れたが、アサシネイトステルスが通用しないことに、朱雀は面を食らう。
「あっぶなー! 死ぬかと思ったわ!」
「だね。それにしても今の感じ……紗那さん。君ってもしかして……」
「はい。私も柚さんや未来さんと同じでデミ・ミュータントです。ですが、予知能力者ではありません。私の能力は――超聴覚と読心です」
紗那はメインコンピュータに接続されたヘルメットを被りながら、ずっと隠していた自らの能力を明かした。
「ちょ、蝶々描く独身?」
要領を得ない朱雀のらしからぬボケに、ペガサスは不覚にもイメージ図を想像してしまい情けなく思ったが、溜め息をグッと堪えて朱雀にもわかるように説明した。
超聴覚とは、千里眼レベルの範囲で発生した音や声を正確かつ鮮明に聞き取る能力。
読心は文字通り心を読む能力。
彼女は前者でこちらの侵攻状況を把握して、的確に増援を送り、後者で朱雀の動きを読んで浮遊機雷を命中させたのだ。
いくらアサシネイトステルスが、痕跡すら残さない高性能のステルスといえども、心の声までは隠せない。完全に盲点を突かれた形となったのだ。
「やれやれ。ここまでくると、予知と大差ないよ」
「喋ってる暇があったら、仲間を助けに行った方がいいですよ」
紗那はそう言うと、再びキーボードを操作した。
攻撃が来ると思った3人は身構えたが、レーザーも浮遊機雷も一向に撃ってこない。
「あんた、何したん?」
「操作する前の言葉から察するに、パパや澪さん達を攻撃してるんだと思う」
「何!?」
黒猫の推理は正しかった。超聴覚と読心能力で白虎らの位置を特定した紗那が、彼らに向けてレーザーや浮遊機雷を乱発しているのである。
対面している朱雀らだけでなく、外にいるフローラ達の心まで読んでるとは、まったくもって侮りがたい。
「紗那、あんたぁっ!」
「安心してください。龍さんにとって大切な方々なので、傷付けはしません。ただ、少しの間、足を止めてもらうだけです」
「そういう問題ちゃうわ!」
朱雀の言う通りだ。陽動である彼らの足が止められてしまっては、清志郎を逃がす確率が高くなる。
そうなっては、新たな犠牲を生むことに直結してしまうのだ。
「どうする? ペガサス君」
「……できれば、メインコンピューターを破壊したいとこだけど、彼女のことだ。壊した途端に支部ごとドカン! ってことも十分考えられる。ここは、青龍君には悪いけど、彼女を力ずくで止めよう」
どうやらそれしか手はないようだ。了解した2人はペガサスと共に、紗那に挑んだ。




