黒鳥の湖
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
その中央突破組はというと、最高戦力を揃えただけあって、他の班ほど苦戦することなく突き進んでいた。
一応、こちらにもデミ・ミュータントが出てきてはいた(なんなら他のエリアの倍近くの物量があった)のだが、
「……ナイトメアブレード」
「捉えられるもんなら捉えてみぃ! 朱雀絶影っ!」
デビル化によってあらゆる耐性や物理攻撃を無効化する黒猫と、アサシネイトステルスによって姿を消すことができるようになった朱雀の猛攻の前では、物の数にも入らなかった。
ただ、それでも懸念がないというわけではないが。
「これ、うちとめっちゃ相性バッチリやわ」
「それは良かった。それはいいとして、多いね。デミ・ミュータント。傭兵だとは思うけど、こうもいるとは聞いてないよ」
「だね。それにさっきから誰かに見られてる気がするっていうか、タイミングよく現れすぎてる気がする」
青龍がそう思うのも無理はない。愛花と未来が頑張ってくれてはいるが、防衛システムはいまだに掌握できていない。
恐らくではあるが、防犯カメラ等から情報を得た何者かが、こうして増援を送り込んでいるのだ。
問題はその種類と数である。世間的に見れば、限りなく少数派であるデミ・ミュータントがこんなにもいるのは、明らかにおかしい。未来はもう研究をやめてる以上、悪意ある者が生み出してるに違いない。
その事実に、青龍は強い憤りを感じる。
ここで研究者を発見し、悪行を止めることができれば御の字なのだが、二兎追うものはなんとやらとも言う。まずは清志郎を討つことが先決である。
不穏な影を感じつつも、先を急ぐ中央突破組は施設内の十字路に辿り着いた。
「ペガサス、どっち進むねん?」
「真っ直ぐだけど、そう簡単には進ませてもらえそうにないようだね」
呆れたようにペガサスがそう言うと、4方向から傭兵部隊が押し寄せてきた。
「みたいね。どうするの?」
「各方向1人ずつ担当しつつ、青龍君を守る。青龍君は、僕らが討ち漏らした敵を相手して」
ペガサスの指示に4人は了解すると、一斉に散開して応戦した。
百戦錬磨の彼らの戦いぶりは凄まじく、全員が鬼神のような強さを発揮する。
中でも目覚ましい活躍をしていたのは、特性を無視する黒猫やペガサスでも、鬼に金棒ともいえる新装備を得た朱雀でもなく、黒鳥だった。
デミ・ミュータント相手では分が悪い彼女だが、無改造の人間相手なら話は別。舞うように戦場を駆け抜け、糸を操ると、自分が担当している方向の敵だけでなく、3人が討ち漏らした敵の首も縛り、
「……黒鳥の湖」
という決めゼリフと共に、まとめて絞殺した。その優雅さと強さ、そして美しさは圧巻の一言である。
自分の持ち場も片付いたペガサスは、観客のように拍手をし、素晴らしい舞を披露した彼女を称賛した
「これでいいかしら?」
「十分すぎるぐらいですよ。さてと、じゃあそろそろ、青龍君にも本格的に働いてもらうとしようか」
「わかった。で、僕はどうすればいいの?」
青龍がそう尋ねると、ペガサスは十字路が交わるところの天井にある通風口の蓋を外し、
「うん。詰まれ」
と、軽い口調で言って、ダクトの中に青龍を投げ入れた。
旦那の雑な扱いに、朱雀は思わず失笑する。
「っ! いったー……」
「そこをまーっすぐ進むと、目的地に到着するから。頼んだよー」
「だからって、投げ入れなくても! それに、うっ、狭い……」
「静かに。鉛玉をくらって蜂の巣になりたくなければね」
これ以上、不平不満を垂れても仕方ない。しょうがないと割り切った青龍は、ダクトの中を這い進んでいった。




