党首の葛藤
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
その頃、死獣神が向かっている大広間には、名のある政治家の銅像を前にして悩む清志郎の姿があった。
「……レーニンよ、あなたならどうする? 毛沢東よ、あなたならどうする? そして我が祖父にして聖民党の創設者・利根川清治郎。あなたならどうしますか? 私は、自分が正しい行いをしているとは思えないのです。こんな私に、聖民達を導く資格があるのでしょうか?」
清志郎は苦悩していた。
前党首でもある亡き祖父から引き継いだ聖民党を導くために現党首に就任し、協力者と共に考案した全世界聖民化計画を今日までやってきたが、良心の呵責に耐えきれなくなってきたのだ。
ならばやめればいい話だが、それもできない。今やめては、少しでも世の中を良くするために払った犠牲に申し訳が立たない。清志郎はもう戻れないところまで来てしまっているのである。
そんな主の心境を察したのか、青年部のメンバーを連れた紗那が心配そうに話しかけてきた。
「清志郎さん」
「紗那……すまんな。本来なら学校に行ってるはずのお前達に、あんな蛮行をさせてしまって」
「いえ、かまいません。私達は清志郎さんのためなら、テロリストという汚名も敢えて被ります。どんな蛮行もします。全ては清志郎さんが示す未来のためです。なので私達のことは気にせず、清志郎さんは信じた道を進んでください」
紗那からの献身的な言葉で、清志郎は自らの中にある迷いを吹っ切った。
「それに、真さん達が裏切らないかと危惧しているのでしたら、ご心配なく。彼らがいなくても私達がいます」
「……そうだね。それで彼らは?」
「真さんは建物内にいますが、もうお1方は、傭兵だけ預けて帰られました」
いつ、妨害や襲撃があるかもわからないのに、挨拶もなく勝手にいなくなる。そんな協力者に清志郎は呆れ返った。
そういう時に限って、最悪の事態は起こるものだ。
「あ……」
「どうした?」
主からの問いに、紗那は察知した状況に動揺しつつ、言いづらそうに答えた。
「龍さん達が、来ました。傭兵の人達を殺しながらこっちに向かってきています」
「狙いは……私か。どうやら彼らも愚民だったようだな」
侵入者と面識がない清志郎は冷静に言うが、紗那のショックは計り知れない。青龍達なら、聖民党の目指す未来を理解してくれると思っていたからだ。
信じられない気持ちと裏切られた気持ちで心がグチャグチャになった紗那は、死獣神の侵攻を阻止し、真意を確かめるべく、部下達に清志郎の護衛を任せて退室した――――




