最悪なスペシャルゲスト
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
そこに水を差すように、未来達に続く形で現れたスペシャルゲストの内の1人が口を開いた。
「ふん、物は言いようだな。特撮じゃあるまいし、殺人を正当化するとは。女優としてはともかく、母親としては失格のようだな。小娘」
聞き覚えのある嫌味たっぷりの口調と声。事情を知らない青龍達がまさかと思い振り向くと、そこにいたのは源士郎と忍がいた。
「久しぶりだな。小童共」
2人の登場に朱雀や白虎らが警戒心を剥き出しにする中、黒猫はそれまでの穏やかな表情から一変、デビルアイを発動させて、犬飼親子とペガサスを睨み付けた。
「ペガサス君?」
「気持ちはわかるよ。けど、仕方なかったんだ。今回は、死獣神の存在を世間に知られるわけにはいかない。そこで、苦肉の策ではあるけど、同じく聖民党を捜査していた特捜5課に、死獣神に関する全ての情報を公表しないことを条件に協力してもらい、手柄を譲ることにしたんだ」
「けど!」
ペガサスの言うことはもっともだが、いまいち信用ならない。悪人や犯罪者相手なら平気で約束を破る。犬飼源士郎とはそういう男なのだ。
「気に食わんか。それは私も同意見だ。聖民党という悪に天誅を下すためとはいえ、貴様らと手を組まねばならんのだからな。特に、いつ刃を向けるかわからんお前とは、な」
「因果応報や自業自得って言葉を知らないの? 向けられる理由を作ってる方が悪いんでしょ? この人でなし」
「貴様、お父様になんて口を――!」
「あんたは黙っとけ。年増の猛犬。小物の分際でキャンキャン喚きな」
互いに因縁が深いためか、黒猫と源士郎が、忍と朱雀が激しく睨み合う。
こんな険悪な空気では作戦に支障をきたす。それだけは避けたい青龍とペガサスと武文は慌てて仲裁に入った。おかげで女達は、どうにか落ち着きを取り戻したが、喧嘩をふっかけてきたこの男の憎まれ口だけは止まらない。
「ふっ、ずいぶんと聞き分けが良くなったな小娘。旦那に手綱でも握られているのか?」
「いいえ、違うわ。彼女は龍君やみんなと一緒に日々学んでいってるの。あなたや私のような愚かな大人と違って、ね」
冷たい口調で否定されたことで、ようやく黒鳥がいることを認識した源士郎は、意外な人物との再会に少々驚く。
「ほう、誰かと思えば貴様か。久しいな。約20年振りだな。どこに雲隠れしていた?」
「あなたが思いもしない遠いどこかよ」
「それはすなわち、あの世ということか。そのまま大人しく地獄で隠居していればいいものを」
どこからどう見ても、仲良しこよしのお友達といった雰囲気ではない。それもそのはず、2人は1度刃を交えていたのである。
今から21年前。司令だった黒鳥は、弟である黒龍と共に、ある極秘任務を遂行するため、防衛省に侵入していた。
任務は無事成功。あとは帰路につくだけだったのだが、そこで出くわしたのが、当時警視だったこの男だった。
彼の部下によって退路を塞がれ、戦闘を余儀なくされた黒鳥は、黒龍と協力して応戦。なんとか逃げ切ることはできたが、源士郎の刃から黒龍を庇った際に受けた傷が原因で、目が見えなくなってしまった。
加えて、病弱だった体調も急激に悪化。司令の座を黒龍に譲り渡すこととなった。組織の未来を案じ、穏健派になりかけていたブラック・ナイトが過激派に逆戻りしたのは、それから間もなくのことだ。
つまり、源士郎は黒鳥の視力を奪っただけでなく、ブラック・ナイト崩壊の原因も作ったのである。無論、それを咎めたところで、本人に悪びれる様子など一切ない。何故なら、自分の正義は常に正しいと信じて疑わないからだ。
そんなことなど、とっくの昔にわかっていたはず。それでも、黒鳥から話を聞いた青龍や黒猫達は、嫌悪感を抱かずにはいられなかった。




