想定外
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
なんにしても、これで乗り込むメンバーは決まった。あとは、戦いの時を待つだけなのだが、雲雀には1つだけ、どうしても気になることがあった。
「それはえぇとして、ペガサス。あんた、なんで光一郎って名乗っとったん? 聖民党の調査だけやったら、うちらに正体を隠す必要なんかなかったやろ?」
「言われてみれば。朋美さんと極力接触させなかったのも引っかかりますし」
「あぁ、それは……」
よほど答えづらい内容なのか、ペガサスの目が泳いでいる。これは何かあると思った雲雀達は、とことん追及しようとした。
その様子がよほど目についたのだろう。ペガサスにとっても、青山一家にとっても想定外の人物達が、彼らを発見して店に入ってきた。
「あっ! ペガサス君! それに朋美さん! 2人共、なんでここに!?」
「あ、これは、その――」
「え? 玄田……君?」
「え? 龍……君?」
そう。その人物とは、偶然この国に来ていた武文と紫乃と愛花だった。
死獣神崩壊のカラクリを唯一知らない3人の登場に、青山一家は驚愕し、ペガサス達は頭を抱えた。
「これは、その……ごめん」
龍はすぐさま謝ったが、無論、許してもらえるとは思っていない。友達の気持ちを踏みにじったのだから、殴られることや絶交されることは覚悟している。
が、彼らの予想に反して、武文も紫乃も手を上げなかった。代わりに2人は安堵の表情を浮かべ、一筋の涙を流した。
「龍君……良かった生きてて。ペガサス君の反応からして、だいたいのことはわかるよ。でも、本当に良かった……」
「玄田君、先生、ごめん」
「いいのよ。あなた達が生きてたのなら、それで」
もちろん、ペガサスには言いたいことが山ほどあるだろうが、2人からすれば龍達が生きてただけで十分。これほど嬉しいことはないのだ。
ただ1人、空気の読めない少女を除いては。
『あたしはムリー。許せなーい。だってそこの女、愛花ちゃんご自慢の死獣神サイトをハッキングして、完全消去したんだよ? 許せって方が無理だわさー!』
感動的な再会をぶち壊しにする文章。怒る気持ちはわからなくもないが、悪い意味で変わっていないことに、愛花のことをよく知る面々は逆に感心する。
それでもなお怒っている愛花に、未来は目線を合わせて話しかけた。
「愛花ちゃん。そのことについては本当にごめんなさい。けど、わかって。龍君やみんなを辞めさせるには、あぁするしかなかったの。愛花ちゃんだって、武文君が殺人犯として逮捕されて、刑務所に入ったり、死刑になったりするのは嫌でしょ?」
『うん』
「気持ちはそれと同じ、だよ」
そう宥められた愛花は、一瞬文字を打ちかけたが、『うー』と唸ってからノートパソコンを閉じると、
「ワクチンプログラム」
「え?」
「愛花ちゃんのために無敵のワクチンプログラムを作ってくれたら、許してあげてもいいよ」
と、自らの口で条件を提示した。
初めて聞いた少女の肉声に龍達は驚きを隠せないが、これは紛れもなく進歩である。説得が通じたことで、彼女なりに歩み寄ろうとした結果だと考えた未来は、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「任せて。永遠じゃないし、絶対とは言い切れないけど、30年は大丈夫なワクチンなら作れるよ」
自分にできる最大限の償いとして未来はそう答えたが、やはり相手は自己チューなお子様。それではご不満らしく、プクーっと頬を膨らませると、再びノートパソコンを開き、
『じゃあ、あの時消した動画返して。それもできないなら、そこの変態エロバカコンビがヤってるとこを撮って、あたしに送って。後で世界中に拡散するから』
という、無理難題をふっかけてきた。
存在証明&恥動画を世界中に拡散なんかできるわけがない。未来と龍が中心となって、撤回してもらうよう頼むが、事の重大さがわかっていない愛花は取り下げようとしない。
そのあまりの態度に、ついに柚の怒りが爆発。今にも愛花を殺そうと抜刀するのを帝虎と大牙が必死で止めた。




