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死獣神~生の書~  作者: 天馬光
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咎めはしない

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。

 直後、感じたのは掌打による強い衝撃ではなく、指で額をつつく感触だけだった。これには全員が呆気にとられる。


「え?」


「殴られると思った?」


「しょ、正直」

 おっかなびっくり答える龍に、柚は皮肉と優しさが混じった微笑みを向ける。


「するわけないでしょ。確かに夫として非常識きわまりないことをしたけど、そんなことぐらいで怒ったりしないよ。ま、かといって、気分がいいものでもないけど」

 ところどころ不満こそ漏れてはいるが、彼女の言う通り、立腹はしていないようだ。


「私達も怒ってませんよ。龍さん」


「どうして?」


「だって、龍は私達と同じぐらい彼女のことを好きになったんでしょう? その気持ちを嫉妬や怒りで拒んで、2人の仲を引き裂く権利なんて私達にはないよ。そんなことをしたら、私達の関係を私達自身で否定することになるから」


「せやな。要するにや、そんなんでいちいち怒っとったら、一夫多妻制を受け入れてまで、あんたと結婚なんかせーへんっちゅーこっちゃ」


「そゆこと。てかさ、もうちょっと私らのことを理解したら? そっちの方がムカつくよ」

 未来と雲雀と奏が述べたことこそが、彼女達が浮気を咎めない理由である。


 全員を捨てて、紗那1人に鞍替えするつもりなら、雲雀達も断固反対していただろう。

 だが、あの龍が、どちらか一方を選択して切り捨てるなんて非情な判断を下せるはずがない。愛してくれる存在をまとめて愛する。それが青山龍という男なのだ。

 故に彼女達は、そういう夫だと理解しているからこそ、彼の意思を尊重しているのだ。


 そういった嫁達の信頼を改めて思い知った龍は、少しでも彼女達の寛大さを疑ってしまったことを深く反省した。


「そうだね。ごめん」


「わかればよろしい。ふふふ」

 奏の明るい笑いに続いて、青山一家は幸せそうな笑みを浮かべる。

 これも1つの愛であり、家族の形なのかもしれない。それを友人達も理解したようだ。飛鳥は納得し、帝虎は前言撤回した。


 ただし、仕事をサボったことと浮気は別問題。帰宅後、そのことで龍は雲雀からこってりと絞られた――――――

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