表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死獣神~生の書~  作者: 天馬光
25/76

ハイエナのジャーナリズム

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。

 なんにしても、これで柚を無事事務所に向かわせることができた。マンションの外から幼馴染みを見送った宙と美夜は、役目を果たしたと思いホッとする。


 けれど、安心するのはまだ早い。週刊誌に彼女のスキャンダルを垂れ込み、騒動を引き起こした『ジャーナリスト界のハイエナ』がここにいるからだ。


「はぁ……やってくれたな青二才が。嬢ちゃんをマスコミから守るために、この俺を差し置いて独占取材権まで勝ち取るたぁ、それでもジャーナリストか? ふざけやがって。『俺の邪魔だけはすんな』って、忠告したのをもう忘れたのか?」


「それなら僕も言ったはずですよ。『あなたが道に反することをしなければ』と、ね」


「反しちゃいねぇよ。こっちは正々堂々、俺のジャーナリズムに則って仕事をしてるんだ。なのに、あの嬢ちゃんがそこの女との関係に関する取材を拒否したから、推測込みで発信したんだ。事実と憶測を都合よく混ぜて伝える。それが報道であり、ゴシップってもんだろうが」

 物は言いようだが、本人はそれが正義と信じきってるようだ。反省はおろか悪びれる様子も全くない。


「だからって、『サインに乗じて香港マフィアと裏で取引』なんて、明らかなデマを流していい理由にはなりません」


「そうか? デマも報道の一部だぞ」


「あんた、サイッテー!」


「はっ! てめぇらこそ、ご清潔に生きすぎなんだよ。そんはくだらねぇ連中にとやかく言われたかねぇな。さ、退いた退いた。俺は今からあの嬢ちゃんの一家に取材しなくちゃなんねぇからな」

 そう言うと、文太は鬱陶しそうにシッシッと手を振りながら、玄関に集まる光一郎達に道を開けるよう求めた。

 無論、彼らも応じるつもりはない。この男に取材をさせるということは、青山一家が得た幸せを潰すのとほぼ同義だからだ。


 故に、宙達は梃子でも動くつもりはなかった。が、両者の睨み合いは、思いもよらない形で早く終結することとなる。


「宙君。ちょっと通してくれる?」


「え? 未来!? なんで!?」

 守るべき対象であるはずの未来が、あっさりと出てきたからである。

 この展開では、口を滑らせてしまうのも仕方ないかもしれないが、秘密をバラしてしまったことは事実。文太に未来の正体を気付かせてしまうという最悪の凡ミスを犯した宙は、美夜から激しく叱責される。


「別にいいよ。美夜さん」


「え? でも……」


「毒島さん。あなたの言いたいことはわかりました。私で良ければ取材に応じます」

 未来からの予想外の言葉に、血迷ったと思った大牙達は思い留まらせようとするが、彼女の意思は固い。


「その代わり、約束してください。相手をするのは私だけ。他の家族には関わらないでください。それさえ呑んでいただけたら、私のことはいくらでも聞いてくれてかまいません。お願いします」

 聖女のような献身。未来を象徴する行動原理ではあるが、社会人として社会の荒波に揉まれるようになって3年経っても尚、まだ保っているとは脱帽ものである。

 これには、さしもの文太も折れるしかなかった。


「はぁ……そんな風に言われちゃ、血も涙もないこのオジサンも従う他ねぇな。わかった。嬢ちゃんの言う通りにするよ」


「ありがとうございます」

 要求を呑んでくれたことに未来は礼を述べると、家族がとばっちりを食らわないよう、文太を連れて近所のカフェへと向かった。


 全ては未来が最善だと思って決めたこと。かといって、独断ではない。龍達には事前に説明しており、先に出た柚以外の全員から許可を得ている。

 そこには、こういう時の未来の頑固さを知ってるからというのもあるだろうが、何より『未来なら何とかしてくれる』という絶大な信頼があるからに違いない――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ