また1人で背負い込む
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
「じゃあ、行ってくる。迷惑かけてごめんね」
「ちょお待て。あんた、また1人で背負い込もうとしとるやろ?」
柚とはもう長い付き合いだ。故に、言い方1つで何を考えているか手に取るようにわかる。
「そんなのダメですよ。せめて、私達を頼ってください。少なくとも、柚さんをマスコミから守るバリケード役にはなれます」
「……それこそダメだよ」
柚はそう言うと、窓を指差した。彼女に促されて見たそこからの景色に、龍達はたじろいだ。
彼らが住んでいるマンションのエントランスと裏口周辺に、既に記者が詰めかけてきている。週刊誌の情報がマスコミにリークされたのだ。
この状況で出てきたら、柚のみならず、龍達も家族ということで質問攻めに遭う。そのような負担を柚は負わせたくないのだ。
「けど!」
「大丈夫。私も捕まる気なんてないから。あの人の思い通りになんか、絶対にさせない」
柚には犯人の目星がついているようだ。その上で、真っ向から立ち向かおうとしている。女優として、そして何より家族としてこれほどまでに強い気概を見せつけられては、夫として無粋なことは言えない。
「……わかった」
「いいの龍!?」
「うん。柚なら、この騒動を乗り越えられるって信じてるから。その代わり、約束して。あの時掴んだこの幸せは、何があっても絶対に捨てないって」
「わかってる。約束するよ。今度こそ嘘抜きでね」
それだけを誓うと、柚は自室に戻り、身支度を始めた。
その背中はまるで戦地に赴くかのように勇ましく、凛としたものだったが、それでも家族としては心配で心配で仕方がない。
「大丈夫やろか? 柚の奴」
「信じようよ。柚ならきっとやれるって。だから、僕達は僕達にしかできないことをやろう」
「私達にしかできないこと?」
「うん。歪められた真実を正すことと――柚の行く手を邪魔するあの人達を追い払うことだよ」
不安感を募らせる嫁達に対して、龍は一家の大黒柱らしくそう言うと、ある人物に電話をかけた――――




