舞い込んだスキャンダル
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
爆発事件から4日後の平成21年5月25日午前8時半頃。この日はオフということもあり、1番最後に起床した柚はリビングに入るなり、
「ふみゃ~。みんなぁおはよう」
と、眠そうに挨拶した。
だが、家族からの挨拶はない。扉の方からは確認できないが、みんなテーブルを囲んで何かを注視しているようだ。
「あ、柚さん! 大変なことになってるよ!」
「え?」
未来の一言に要領を得ず首を傾げると、柚の携帯電話が鳴った。事務所にいるシェイラからだ。仕事がない日の朝に電話をかけてくるなんて珍しい。
「もしもしー?」
「もしもし? 蜜柑!?」
電話越しのシェイラの声に余裕など一切なかった。
「どうしたんですか? シェイラさーん。今日はオフのはずですよぉ?」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ! あんた、今朝の週刊誌見た!?」
「いえ、今起きてきたとこですけどぉ」
「だったら早く見て! とんでもないことになってるから!」
そう促され、奏からテーブルの上にあった週刊誌を受け取った柚は、
「何……これ……?」
目に飛び込んできた誌面の内容に愕然とし、週刊誌を落とした。
そこには、『大スクープ!! 黒木蜜柑の闇』と題された特集記事が4ページに渡って書かれており、展望台で飛鳥と会っていた時のことや帝虎との会話、更には爆発後に龍にしようとしていた行為等が悪意ある表現でねじ曲げられ、『人気女優の正体は反社会的勢力関係者もしくは前科者』というレッテル付きで掲載されていた。
これには、柚も眠気と一緒にキャラまでふっ飛んでしまう。
「寝起きでビックリしただろうけど、これは流石にマズイよ」
「です、よね……」
「で、このことで社長があんたに話があるらしくってね。悪いけど、事務所まで来てくんない? くれぐれもマスコミに見つからないように。いいね?」
こうなった時点で覚悟はしていたようだ。柚は素直に了解した。
「じゃ、なるべく早くね。言っとくけど、ドジ踏んでるヒマとかないから」
「わかってます。そんな嘘、ついてる場合じゃないことぐらい」
「え? それって、どういう――?」
柚の口から出た『嘘』という単語について、シェイラは詳しく聞こうとしたが、今の彼女にそんな心のゆとりなどない。問いに応じることなく電話を切った。




