聖民党
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
日本の首相と野党第一党の代表が犠牲になった爆弾テロのニュースは、日本とエピウスのみならず、世界中を駆け巡った。
大統領を始めとする各国の首脳達は、総理の死を受けて哀悼の意を示す声明を発表したが、その一方で他の党に属している政治家や人々の中には、『エピウスを侵略しようとした2人が悪い』『自業自得だ』と、爆弾犯を擁護するような意見が出ていた。民衆はともかく、政治家の中には同じ野望を抱えている輩がいるのに、だ。
そんな腹黒い企みが渦巻く政界の中で1人、彼らとは違う理想を胸に宿している政治家がいた。
男の名は利根川清志郎。少数政党ながら、32歳という異例の若さで聖民党という党の党首を務めている若手政治家である。
「……非常に残念です。日本の与野党のトップである先生方が、異国の地であのような形で亡くなられるとは……」
「最新の世論調査で『エピウスを買収することに賛成』という意見が4割ほどに達しましたが、聖民党としてはどうお考えですか?」
「我々聖民党は、予てより買収政策に反対しております。多くの政治家は『日本の未来のためにやむを得ない』と綺麗事を並べていますが、やってることは侵略行為です。戦前の日本に戻るべきではないと、我々は考えています」
大物政治家の死を悼みつつも、マスコミに対して毅然とした態度で批判する。信頼できる政治家像を体現している彼を、有権者達はきっと支持することだろう。
だが、忘れてはならない。利根川清志郎もまた、建前で本心を隠している日本の政治家だ。爽やかな表の顔の下には、同志しか知らない裏の顔がある。
エピウス時間午後10時。日本でマスコミからの質問に答えた清志郎は、その足で聖民党のエピウス支部に来ていた。
そこには、秘書だけでなく、中高生ぐらいの子供達やガラの悪そうな黒髪リーゼントの中年男、それに件の爆弾犯の姿もあった。
そう。何を隠そう清志郎こそが、この爆弾テロの首謀者だったのだ。
「計画は順調のようだな」
清志郎の言葉に、爆弾犯は静かに頷く。
「すまんな。君達にこんな汚れ仕事をさせてしまって。榊原さんもすみません」
「いいってことよ。これもお互いの利益のため。そうだろ?」
軽い口調でそう答えたリーゼント男は、後援会長の榊原真。
一見、無職の遊び人のように見えるが、こう見えて某有名な検索エンジンを凌ぐ情報量を誇る検索エンジン・World search(通称W・S)の開発者兼会長であり、聖民党へは資金提供や今回の爆弾の製造等といった方面で協力している。
「しかし……」
「◯のことも気にしないでください。我々青年部は、清志郎さんと聖民党のためならなんでもします」
「そうか……助かる。では、本格的にいこうか。全ては聖民のため。我ら聖民党に賛同する聖民には未来を! それ以外の愚民には死を!」
これが清志郎率いる聖民党の野望。彼の掲げる全人類聖民化計画が始動したのである。
それに呼応したかのように、この時、青山一家を翻弄するトラブルの種が、1人の男の手によって蒔かれようとしていた――――――




