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死獣神~生の書~  作者: 天馬光
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エピウスを取り巻く問題

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。

 と、そこへ、この微笑ましい場面をぶち壊しにするかのように、2台の選挙カーが店先から数メートルのところで停車した。

 何も知らない透美達は、エピウスの国家議員の選挙期間だからなのでは? と、思ったがそうではない。車から降りてきたのは、エピウス議会の候補者ではなく、日本の大物政治家だったのだ。


「えぇ、エピウスの皆様。初めまして。わたくしは、日本国首相・麻生(あそう)一郎(いちろう)であります」


「えぇ、私は民主党代表・小沢(おざわ)太郎(たろう)と申します」

 2人がマイクを使って名乗った途端、龍やエピウス国民達はゲンナリした。


「総理と民主党の代表が揃って街頭演説かい」


「ちょっと待ってよ! あいつらがなんでこの国にいんの!? ここって地図にも載ってない国なんでしょ!?」

 信じられないといった様子の美夜がそう言うと、文太はあからさまに大きな溜め息を漏らし、


「おいおい、嬢ちゃん。それでも日本人かよ。ったく、これだから近頃の若ぇ奴はニュースを見ねぇから困る」

 と、文句を垂れた。

 そんな彼に美夜はイラッとした様子だったが、そう言われても仕方ないほどの大問題が、現在のエピウスで起こっている。


 龍達一家がエピウスに移住してからの3年間、世界は第3次世界大戦や異種族との戦争があったりしたのだが、皮肉にもその影響で文明が急速に発展。あらゆるものを見通す撮影装置が生まれてしまった。その装置によって、これまで光の気の作用で衛星写真に写らなかったエピウスが、バッチリと見えるようになってしまい、国際社会が一時騒然となった。


 と、ここまでなら、新しい旅行先が増えた程度なので、まだマシだったかもしれないが、問題はその後である。

 予てより、食料自給率が低下の一途を辿っていた日本政府は、それと税収を補うために、あろうことかこの国を買収しようとしているのである。この国には日本人やその子孫も多いため、交渉の余地があると判断したようだ。

 とはいえ、やってることは侵略行為。日本のやり方に対して、野党だけでなく世界各国の首脳は批判しているが、腹の中では『エピウスを自国の領土にしたい』とか『自分の党の者を知事にしたい』と画策しており、他国を出し抜く方法を常に思案している。外相であるフローラの父親もその1人である。

 いずれにしても、併合なり征服なりされて領土に組み込まれたら最後、通貨、言語、政治、法律、ありとあらゆるものが、その国のものになってしまう。そうなったら、エピウス国民の生活は滅茶苦茶にされかねないし、龍の一家も殺し屋だったことがバレてしまうかもしれない。日本の領土になったら尚更だ。


「この国に住んでる人のことも考えずに……身勝手すぎる」


「人ってそんなもんですよ。欲深くて傲慢で、利権が絡むとロクなことをしない。政治家は特に、ね」

 龍は憤り、光一郎は諦観の言葉を口にするが、侵略者の耳には届かない。よしんば聞こえる位置にいたとしても、舌戦で白熱した彼らから発せられる耳を塞ぎたくなるような大声とハウリングの前では、全て掻き消されてしまうだろう。

 その様はまさに、日本猿とブルドッグの吠え合い。動物のような可愛げもないし、内容も内容なだけに誰も望んでいない。まったくもって迷惑千万である。


 こうなると、黙っていない短気な人物がここにいる。


「あぁもう! うっさいわ! そこの中年コンビッ! キャンキャン喚いとらんで、早よ日本に帰りさらせっ! 聞こえてへんのか! ()ねっちゅーとんや! 去ねーっ!」

 堪忍袋の緒が切れた彼女の怒号に、龍達も同感し、うんうんと頷きかける。

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