ルドルフとシュバルツ
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
彼の言ったことは事実である。ルドルフとシュバルツは若かりし頃、フェンシングのドイツ代表の座を賭けて何度も戦ったライバルだったのだ。
最終的には、紙一重でシュバルツが勝利。代表となった彼は、オリンピックという大舞台でも力を発揮し、銀メダルを獲得した。
次は自分があそこに立つ番だ。そう思い、闘志を燃やしていたルドルフだったが、大会終了と同時に、シュバルツはブラック・ナイトの活動に専念するため現役を引退。終生のライバルを失ったことで情熱も冷めたルドルフも、後を追うように引退した。ボディーガードも兼ねてガーシュタイン家に雇われたのも、ちょうどその頃だ。
あのシュバルツに匹敵する腕前のライバルがいて、しかも2人の間にそんな過去があったとは。彼のプライベートを知らなかったとはいえ、初耳である。
「それで、彼は?」
「……亡くなりました。私が幸せになるために、3年前に主である黒龍さんに逆らって……」
「そうでしたか。彼とはもう1度剣を交えたかったのですが……残念です」
かつてのライバルの死。それを3年も経ってから知った精神的ショックは計り知れないはず。龍達はルドルフを案じたが、ある程度予想していたらしく、ルドルフの立ち直りは早かった。
「彼がそうまでして守りたかったということは、あなたが黒猫さんですね?」
「私のことを知っていたんですか? もしかして、黒蛇さんから?」
「えぇ。『私にも、君と同じように身命を賭してでも守りたい方ができた』と、嬉しそうに仰っていました。彼にとっては、私との再戦より、あなたの方がずっと大事だったのでしょう。その気持ちは私にもよくわかります。ですので、柚さん。亡きシュバルツさんの分まで、どうか幸せに」
主君を持つ者として同じ立場にあるルドルフから伝えられたシュバルツの心。過保護な彼のことだからわかりきってはいたが、それでも改めて聞かされると嬉しく思える。
2度と死んでいった彼らに顔向けできない生き方はしない。柚が己を見つめ直し、気を引き締めるには十分だった。
「コホン。ルドルフ、格好をつけすぎですわ。主より目立つとは何事ですの?」
「申し訳ありません。フローラ様」
主の不興を買ったと思ったルドルフは、自らの無礼を詫びた。




