幼なじみとの再会
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
翌日。昼過ぎにもかかわらず、【刃物屋 龍】には今日も客が1人も来ていない。しかも、雲雀からの手入れの仕事もないため、暇を嘆いて溜め息をつくことぐらいしかやることがなかった。
そんな店主の姿が哀れに見えたのだろう。宙達が顔を見せに来た。
「ちわーっす! 先輩」
「あ、大牙君達。いらっしゃい」
「昨夜はごちそうさま。澪がまさかあんな美味しい料理を作れるなんて思わなかったよ」
「こっちに来てからだいぶ特訓してたからね。本人が聞いたら喜ぶと思うよ」
鍋ごときで大袈裟だと言うかもしれないが、姫として扱われていた境遇と弱視というハンデがあったことを考えれば、飛躍的な進歩である。日本にいた時は、龍に家事全般を任せっきりだった彼女がそこまでできるようになったのは、他でもない家族の支えがあってこそだ。
「にしても、あんな出来た嫁が5人もいるなんてな。応援してた立場の俺が言うことじゃねぇだろうけど、お前、羨ましすぎるぞ。こんちくしょう」
羨望と嫉妬の眼差しを向ける宙に、美夜はお仕置きとばかりに頬をつねる。
学生時代によく見た懐かしい光景に苦笑していると、龍の家族が全員揃って現れた。いつもは多忙な彼女達だが、この日は珍しく休みが被ったのだ。
「みんなー久しぶりー――ふにゃっ!」
美夜と宙を目にして、真っ先に駆け寄ってきた柚が盛大にコケた。
「おいおい、ネコ。お前のそれ、相変わらずかよ」
「えへへ、まぁねー。だってその方が……素の私を知られずに済むでしょ?」
「急に戻んないでよ! ギャップにビックリするっつーの」
「それもそうだね。ごめん」
人気女優と一般人。年月や立場に隔たりはあっても、3人は変わらず幼なじみのままでいる。当たり前のことではあるが、それがいまだに薄れることなく保たれていることに、龍や未来達は安心感を覚える。
「あの、猫宮先輩……」
「ん? どうしたの? 大牙君」
「写真とサインお願いします!」
直後に色紙とペンを出して、一般人丸出しの頼みをする大牙のせいで、尊い空気がぶち壊しになってしまったが。
「あ、じゃあ俺も」
「芸能人と見るとすぐこれだ。大牙ってば、ほんとミーハーなんだから」
「それ、宙もですよ」
ダメな彼氏を持つ恋人2人はやれやれといった感じだが、柚に拒む理由はない。快く了解すると、慣れた手つきでサインを書いた。




