常夏の島国・エピウス
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の新天地での物語。
太平洋のド真ん中に、衛星写真にも写らず、他国にもあまり存在が知られていなかった小さな島国がある。
その名はエピウス。死獣神が壊滅した後、龍達が移住した国であり、赤道に近いこともあって、5月でも気温が30℃を超すことが当たり前の常夏の島である。
この島の東側には玄関口である空港や港があり、隣接する商店街や市場は常に活気に溢れている。
その商店街の一角には――
「おーい朱音ちゃん。こっちにモダン焼きを1つ」
「あいよ! ちょっと待っといてな。あ、いらっしゃいませー。何名様ですか?」
雲雀が1人で切り盛りしているお好み焼き屋があり、こちらも連日繁盛している。
そこから島の中心にある展望台を挟んだ島の西側には、閑静な住宅街があり、旦那を仕事に送り出した主婦達が、家事に追われたり、ママ友やご近所さんと井戸端会議をしている。
「こんにちは」
「あぁ、織華さん。こんにちは。どう? 育児はもう慣れた?」
「おかげさまでなんとか。とはいえ、まだまだ手はかかりますが」
専業主婦となって、2人の娘を立派に育てている澪もその1人。
例の治癒能力のこともあって、最初は疎外されるのではないかと、不安に思っていた彼女だったが、元々天神やその子孫が暮らしている国。住民達からすれば不思議なものではないらしく、今では治癒能力を使ったら感謝されるぐらい、地域と環境に溶け込んでいる。
話は戻すが、住宅街には一般的なマンションや一軒家の他に、美容院やカフェといったオシャレな店舗が何軒かある。大半は主婦層や子供をターゲットにした店だ。
その中には――
「はい。今日はここまで。みんな、練習を怠らないようにね」
「はーい。園香先生」
奏が先生をやっているピアノ教室もある。こちらも先生が美人で人柄が良く、教え方も上手とあって、子供だけでなく親御さんからの評価も高い。
そんな彼女達がいる住宅街から見て右側にあたる島の南側は、ビーチや遊園地等と言った観光エリアとなっており、逆に北側には議事堂や役所、学校やビジネス街等がある。
そのビジネス街の高層ビルにあるとあるIT企業のオフィスでは――
「これで、どうでしょうか?」
「うん上出来だ。いやぁいつも助かるよ。明日奈君」
未来がデミ・ミュータント能力と過去のことを伏せて、システムエンジニアとして働いている。ちなみに、近々、課長への昇進を控えている。