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094 危機

 ハウゼン領での移動は順調で、各街を経由しつつ領都であるラドハウゼンという名の都市に到着した。ハウゼン領に入ってから翌々日のことだった。

 ちなみに、ハウゼン領に入って最初の街で、馬車ジャックをやらかしたガラシア盗賊団の奴らとCランク冒険者である男女の動向を調査したかったんだけど、警吏本部に行って聞き込みをするのは難しかったため、仕方なく断念した。

 ハウゼン侯が捕まってから、アインホールド伯爵様にお願いして調べてもらおう。


 なお、領都に着いたとは言っても、街壁の中に入ったわけではない。てか、入ることができなかった。

 なぜなら、門の前には『ハウゼン侯爵家騎士団員』の肩書きを持つ騎士たちが、約30騎ほど勢揃いしていたからだ。

 先頭にいた一人の騎士が進み出て、話しかけてきた。

「アインホールド伯爵家騎士団員の方々とお見受け致す。王都へ向かわれるおつもりか?」

 こちらのほうも騎士団の隊長格の人が進み出て対応していた。

「我らの目的はハウゼン侯爵とその一族の捕縛である。彼らの重大な犯罪行為が発覚したため、アインホールド伯爵閣下の名のもとに出動したのだ」

「その犯罪行為とは何か?」

「ガラシア盗賊団と結託し、街道上を進む旅人を襲って金品を巻き上げていたこと。頭目であるガラシア自身の供述と侯爵家発行の書状が証拠として存在するため、言い逃れはできぬぞ。また、貴君らも抵抗するのならば我らが殲滅する。余談だが、アインホールド領へ派遣された騎士32名については18名が死亡、14名が捕縛されたぞ」

 向こうの騎士たちの間に動揺が走った。死者の中には友人なんかもいただろうしね。


「そのようなこと信じられぬわ。我が(あるじ)に害をなすと宣言している者たちを通すわけにはいかぬ。速やかにアインホールド領へお帰り願おう」

 ここでアインホールド伯爵様が進み出た。

「僕がグレゴリー・アインホールドだ。君たちの中にも犯罪行為に加担していた者がいるだろう。ただ、何も知らなかった者もいるかもしれない。【闇魔法】での尋問は行うが、犯罪について知らなかった者で、かつ素直に投降してくれた者は罪に問わないことを約束しよう」

 そわそわして隣同士で顔色を(うかが)っている者たちがいるね。だいたい若い人だ。(した)()だから、何も知らなかったんだろうな。

 伯爵様自身が彼らに呼びかけたことで、この話(犯罪者の捕縛)に信憑性が出てきたのだろう。


「ええい、そやつはアインホールド伯の名を(かた)る偽物ぞ。総員、攻撃を開始せよ。目標は前方の盗賊団だ!」

 俺たちを盗賊団呼ばわりかよ。最初に『アインホールド伯爵家騎士団員の方々』って言ってたくせに…。

 てか、この指揮をとっている奴は、ガラシア盗賊団との関わりがありそうだね。


 ついに彼我(ひが)入り乱れての戦いが始まった。どちらも接近戦が主体の騎士同士なので、ガチャガチャと剣戟(けんげき)の音が響き渡っている。一言で表すならば『乱戦』だ。

 俺たちの幌馬車は少し後退して、戦場から距離を取った。参戦しなくて良いって話だったからね。

 伯爵様は剣の腕に自信があるのか、先頭に立って味方を鼓舞していたよ。すごいな。

 若手を中心に及び腰になっている敵と、伯爵様自らが率いる戦意旺盛な味方との差が出たのか、どうやらこちら側のほうが優勢のようだ。

 このまま、押し切れるかな?…と思って眺めていたら、これまで後方で微動だにしなかった敵の一人が動き始めたことで、あっという間に戦況が(くつがえ)されてしまった。まじかよ…。


 馬から降りて自分の身長(160cmくらいかな?)と同じくらいの長い棒を振り回しては味方の騎士たちを叩き伏せていくその敵は、明らかに隔絶した戦闘力を持っているようだ。

 俺はその人物を【鑑定】してみた。


・名前:アーキンアトキンセル

・種族:獣人族

・状態:健康

・職業:ハウゼン侯爵家騎士団員

・スキル:

 ・耐鑑定       41/100

 ・魔法抵抗      72/100

 ・剣術        31/100

 ・棍術       107/120

 ・徒手格闘術     43/100

 ・乗馬術       34/100


 思わず二度見してしまったよ。

 相手はフルフェイスの兜をかぶっているため、顔は見えない。なので年齢は分からないんだけど、このスキルレベルの高さから考えて30代から40代くらいだろうか?

 なお、騎士らしく金属鎧を着ているせいで体格もよく分からない。でも小柄な感じはするので、もしかしたら少年という可能性も無くはない。

 性別も不明だが、騎士ってことは男性だろう。獣人族の人の名前って男女が判別しにくいんだよな。

 それにしても、単なる『騎士団員』にしては、【棍術】と【魔法抵抗】のスキルレベルが突出しているよ。

 てか、このまま放っておくと、この人物一人に味方が全滅させられるかもしれない。


「サトルさん」「お兄ちゃん」

 アンナさんやナナが俺の顔を心配そうに(のぞ)き込んできた。

 これは俺たちも参戦するしかなさそうだ。


 この騎士の性別については、おそらく皆様の予想通りです。くっころ…(笑)


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