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083 アジトの制圧

 盗賊団のもう一つのアジト(洞窟拠点)は少し発見しにくかったけれど、なんとか見つけることができた。

「サトル、止まって!そこに鳴子(なるこ)があるよ」

 鳴子ってのは、紐に木片や鈴を付けておいて、その紐に引っ掛かった際に音が鳴る仕組みだね。てか、サリーの【罠感知】スキルが優秀過ぎて、まじでありがたい。

 洞窟の出入口は木々で巧妙に隠されていたけど、【索敵】には見張りの盗賊の反応があったみたいで、これまたサリーに感謝だな。

 やはりパーティーには斥候役が必要だと思ったよ。


 さて、どうやって攻め込もうか?

 留守番役の盗賊は五人で人質はいないって話だから、洞窟の出入口付近で火を焚いて【風魔法】でその煙を内部へ送り込もうかな?

 煙たくて出てきた敵を順番に倒していけば良いよね。てか、できれば洞窟の中には入りたくないのだ(無人だと分かっているなら良いんだけど…)。


 小声でサリーと相談しながら攻略の準備を進めていく。

 乾燥していない生木を拾って洞窟の出入口付近に積み重ね、それを【火魔法】の【スモールファイア】で着火した。何事かと出てきた二人の見張りのうち一人を【風魔法】の【ウインドブラスト】で昏倒させ、もう一人はサリーが剣で斬り伏せた。

 盛大に煙を吐き出し始めた焚火に向かって【ウインドブラスト】を放った俺…。もちろん、洞窟の出入口と焚火が一直線になるような位置取りをしている。あ、出入口にかかっているカムフラージュ用の木々は事前に【風魔法】の【ウインドカッター】で伐採しておいたよ。

 洞窟の奥に空気穴があって吹き抜けていれば良いんだけど、無かったら気圧が高くなって耳の奥が痛くなるかもしれない。別に盗賊たちの鼓膜が破れても構わないんだけどね。


 ほどなくして、三人の男たちが()き込みながら洞窟から出てきた。

 問答無用で先頭にいた男を【ウインドブラスト】で倒し、次いで現れた男はサリーが剣で制圧していた。なお、致命傷になるような斬り方はしていない(できれば殺したくはないからね)。

 最後に出てきた男は煙を避けるように体勢を低くしていて、魔術師が着るようなローブを着ていた。

 気になって【鑑定】してみると、驚いたことに【土魔法】のスキルを持つ魔術師だったよ。スキルレベルが42だったから初級魔法しか使えないけどね。

 問題は【魔法抵抗】のスキルレベルが43だったことだな。俺の初級魔法を抵抗(レジスト)できる確率が83%ということになる。


 俺の一瞬の躊躇(ちゅうちょ)の間に、剣で制圧しようとサリーが男に近付いた。あ、まずい…。

 男から石礫(いしつぶて)がサリーに向けて放たれた。【土魔法】の初級【ストーンバレット】だな。

 初級魔法とはいえ、当たり所によっては致命傷になることもある。

 俺は【空間魔法】の【ジャンプ】を使って、射線上に割り込んでサリーを守ろうとした。俺の【魔法抵抗】のスキルレベルなら、確実に抵抗(レジスト)できるからね。

 …が、魔法の発動に失敗してしまった。成功率52%だから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど…。


 そして【ストーンバレット】は確かにサリーに命中したように見えた。

 …が、その石礫(いしつぶて)は一瞬で霧散した。何のダメージも喰らってない様子のサリーを見て、男が驚愕の表情を浮かべていたよ。

 サリーの【魔法抵抗】のスキルレベルを魔装具(マジックアクセサリ)で底上げしておいて良かった~。スキルレベルが49(リアル値:31+魔装具:18)なので、初級魔法を抵抗(レジスト)できる確率は89%にもなるからね。


 当然、次弾を放つ前に魔術師の男はサリーによって斬り伏せられたよ。

 よし、これで制圧完了かな?

「サトル、どう?どう?私ってかなり活躍したんじゃないかな?」

「ああ、大したもんだ。俺が二人倒して、君が三人、しかも最後の奴は魔術師だったからね」

「石が飛んできたときはビビったけど、抵抗(レジスト)できて良かったよ」

 いや、まじで良かったよ。

 今回の戦闘でよく分かった。仲間が攻撃されるのを見るのは、自分が攻撃されるよりも心臓に悪いってことが…。

 だからと言って、過保護になるつもりは無いけどね。


 で、このあと、サリーが斬った盗賊たちを初級の治癒ポーションで治療して、全員をロープで縛り上げ、魔術師の男には目隠しもした。目が見えなければ攻撃魔法の照準(レティクル)を合わせることはできないからね。

 洞窟の出入口付近にあった焚火は片付けて、洞窟内に【ウインドブラスト】を再度放った。洞窟内に残っている煙を吹き飛ばすためだ。

 すると、しばらくして山の奥のほうから煙が立ち昇るのが見えた。どうやら洞窟の奥には空気穴が()いているようだな。

 さらに少し待ってから、サリーと俺は洞窟内に入っていった。光源としては【光魔法】の【ライト】を発動したので、問題はない。

 なお、【ライト】は自分を基点とした相対位置に固定されるので、俺たちの移動に伴って光源も移動するのだ(なんて便利な!)。


 洞窟内はかなり広く、通路や小部屋などがきれいに整備されていた。さすがは【土魔法】の魔術師が仲間にいただけのことはある。

 【土魔法】の初級である【ディグホール】は、縦穴だけでなく横方向に穴を掘る際にも有効だからね。

 最奥に作られていた大部屋には、一辺50cmくらいの木箱がいくつも置かれていた。なお、この大部屋には篝火(かがりび)が壁にいくつも設置されていて、十分に明るかったよ。

 サリーと手分けして木箱の(ふた)を開けては中身を確認していったのだが、食料品や衣服、調理器具や食器など生活感あふれるものだった。

 もちろん、剣や斧などの武器、それに革鎧や盾などの防具が入った大きな木箱もあったし、金貨が詰まった小箱も見つけたよ。


「俺も収納していくからサリーも頼むよ」

「分かった。ばんばん収納していくよ」

 これは【アイテムボックス】の話だ。手当たり次第に全ての木箱を回収していく俺たち…。

 何となく、盗賊団が強奪したものを俺たちがさらに強奪しているような気になったけど、いや、ちゃんと警吏に提出するつもりだよ。

 もっともハウゼン侯爵領の警吏本部には提出したくないな。貴族の(ふところ)(うるお)すだけになりそうだし…。


 サリーさんが活躍する回でした。

 魔装具で底上げしているとはいえ、【剣術】のスキルレベル55というのはそこそこの強さなのです(少なくとも盗賊連中に負けることはないですね)。

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