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076 魔装具店再訪①

「…っというわけで、後任への引継ぎが終了次第、アンナさんがうちのパーティーに加わることになった。反対意見はあるかい?」

 冒険者ギルド・リブラ支部の飲食スペースの一角には、一つのテーブル席にサリーとナナ、そして俺が座っている。

 ちなみに、俺とナナはまだ伯爵家のお屋敷に滞在させてもらっているのだが、サリーは(かたく)なにお屋敷に泊まるのを(こば)んでいた。でも、バッツさんたち三人がデルトの街へ旅立ったので、伯爵様とお嬢様の了解のもと、半ば強引にお屋敷に連れてきたよ。

 なぜって、この子を預かった責任があるからね。一人で宿屋に宿泊させるのは心配なのだ。…って俺は保護者か。


「お兄ちゃん、私は賛成だよ。アンナさん、良い人だもん」

「私はサトルの意見に反対なんてしないよ。でも、リーダーは冒険者ランクが一番高いアンナさんってことになるのかな?」

「いや、俺がリーダーを務めることで了解を貰っているから、その心配はない。まぁ、名ばかりのリーダーだけどな」

 そう、そもそもリーダーの役割って何なんだ?実はそこから分かってないという…。


 ナナが続けて発言した。

「でもパーティーランクはアンナさんに合わせてDランクってことになるよね。これでCランクの依頼を受けられるようになるのは大きいよ」

 そうなのだ。リーダーの冒険者ランクにかかわらず、パーティーの中で最上位の人のランクが、そのパーティーのランクになるらしい。なので、うちはDランクパーティーってことだな。

「いや、そもそもアークデーモンなんてAランク魔獣に勝てるサトルが、Fランクなのがおかしいよね。まさに『ランク詐欺』だよ」

「昇格審査は一年ごとなんだから仕方ないだろ。俺もナナもしばらくはFランクのままだな」

 デルトの街で冒険者登録をしてから、まだ三か月くらいしか()っていないからね。ナナも俺より一か月ほど早いだけだし…。


「とにかく、我が『暁の銀翼』の行動方針については、アンナさんを含めた上でまた話し合いをしたいと思う。俺自身はこの国の王都へ行きたいと思っているけどな。そう言えば、サリーはつい最近、護衛依頼で王都へ行ったんだよな」

「うん、行ってきた。私は初めての王都だったんだけど、とにかくでっかくて圧倒されたよ」

「お兄ちゃんは当然行ったこと無いとして、私も王都は初めてなんだよね。楽しみだなぁ」

 ニコニコと楽しげな様子のナナだった。


 ちなみに今の時間はお昼時で、三人一緒に昼食を()ったばかりだ。現時点では冒険者ギルドにいるんだけど、今日は依頼を受けるつもりはない。

 今から三人で向かうのは『タロン魔装具店』なのだ。

 そう、領都リブラを()つ前に、各人のスキルレベルの底上げをしておこうかなと…。なにしろ、伯爵様からいただいた報奨金で、(今のところは)かなりのお金持ちになっているからね。

 冒険者ギルド・リブラ支部からほど近いタロン氏のお店には徒歩ですぐに着いた。

「いらっしゃいませ。タロン魔装具店へようこそ」

 以前に来たときと同じく、底辺冒険者に対しても愛想の良いタロン氏だった。


「こんにちは、お久しぶりです。お金がある程度貯まったので、魔装具(マジックアクセサリ)を見に来ました。あ、妹のナナは良いとして、この子は同じパーティーに所属しているサリーです。今日はこの子に着けるものについてもご相談したいと思って…」

「これははじめまして。タロンと申します。この店の店長でございます。以後よろしくお願い致します」

「サリー、いえサーサリアムと言います。よろしくです」

 一応、先に予算だけは伝えておこうかな?

「タロンさん、今日の予算は4千万ベルから5千万ベルを考えています。その範囲内でこの二人のスキルの底上げをコーディネイトしていただきたいのですが…」

「かしこまりました。お任せください」

 タロン氏、すごいな。片方の眉がぴくっと動いただけで、予算額について聞き返さなかったよ。普通、俺たちのような若輩者がこんな大金を持ってるなんて思わないはずだけどな。

 ちなみに、伯爵様からいただいた1億ベルは全額パーティー資金としてプールしていて、今日の支払いはそこから出すつもりだ(サリーの分も含めてね)。


 なお、ナナとサリーの現在のスキルレベルは以下の通りだ。


・名前:ナナ・ツキオカ

・種族:人族

・状態:健康

・職業:冒険者(Fランク)

・スキル:

 ・鑑定        16/100

 ・耐鑑定       12/100

 ・アイテムボックス  69/100

 ・状態異常耐性    64/100

 ・魔法抵抗      11/100

 ・剣術        33/100

 ・徒手格闘術      5/100

 ----------

 ・水魔法       34/100


・名前:サーサリアム

・種族:獣人族

・状態:健康

・職業:冒険者(Eランク)

・スキル:

 ・鑑定        22/100

 ・耐鑑定       18/100

 ・アイテムボックス  35/100

 ・索敵        44/100

 ・罠感知       41/100

 ・魔法抵抗      21/100

 ・剣術        39/100

 ・徒手格闘術      8/100


「ふむ、お嬢様方のスキルの内、30未満のものは別途【コーチング】でスキルレベルを上げたほうがよろしいのではないかと思われます。魔装具(マジックアクセサリ)よりも【コーチング】費用のほうがずっとお安いですよ」

 ナナとサリーを【鑑定】したのだろう、タロン氏が提案してきた。商売っ気が無いというか、顧客第一主義というか、本当に良い人だ。

 確かに二人とも【鑑定】【耐鑑定】【魔法抵抗】【徒手格闘術】の四つについては、【コーチング】でスキルレベルを上げてから魔装具(マジックアクセサリ)でさらに底上げすることを考えたほうが良いかもしれないな。

「私の知り合いに【コーチング】の斡旋(あっせん)業を営む者がおります。ご紹介致しましょうか?」

 お、それはありがたいな。冒険者ギルド・リブラ支部にもギルド所属の【コーチング】要員がいるかもしれないけど、斡旋業者なら色々なスキルを網羅しているだろうし、手間が(はぶ)けるかもしれない。

 そして、その業者って何と隣の店だったよ。

 タロン氏に連れられて隣の店を訪れた俺たちは、店主に紹介されたあと、応接室みたいなところに案内された(タロン氏は自分の店に戻っていった)。


「はじめまして。店主のナムリスと申します。タロンさんのご紹介ですからせいぜい勉強させていただきますよ」

 ちょっと目つきが鋭いけど、中肉中背で初老のナイスミドルって感じの人だった。

「冒険者のサトルと申します。この二人はサリーとナナ。今日はこの二人に【コーチング】をお願いしたいと思い、やってきました」

「どのようなスキルをお望みですか?」

「ええ、すでにスキルは所持しているんですが、スキルレベルが低いため、それらを30以上に上げたいのです。それが次の四つです」

 俺は先ほどの四つのスキルをナムリス氏に伝えた。


「ふむ。【鑑定】が10万ベル、【耐鑑定】が30万ベル、【魔法抵抗】が100万ベル、【徒手格闘術】が30万ベルになります。お二人ともでしたら総額で340万ベルになりますが、いかが致しましょう?」

「ではお願いします」

「いやはや、全く値切ろうとしないお客様は珍しい…。その心意気に免じて、総額で300万ベルに致しましょう」

 おっと、いきなり定価よりも安くなったよ。まぁ、ありがたいんだけどね。てか、値切られることが前提の定価設定なのかもしれないが…。


 ナムリス氏が続けて言った。

「ただし、【コーチング】要員である達人(マスター)クラスの人材が、常時この店に待機しているわけではございません。それらのスキルの登録者に連絡しなければなりませんので、明日の午前中にまたお越しください。あと、【魔法抵抗】を【コーチング】できる人材が現状一人しかおりませんので、お嬢様方お二人に【コーチング】するには少々時間が必要です。たしかインターバルは六日間程度だったと記憶しておりますが…」

 なるほど。だから【魔法抵抗】の料金が高いのかもな。【コーチング】は連続で発動できないからね。

 とにかく、それでお願いしよう。


 俺は了解したことを伝えた上で、手付金の150万ベル(総額の半分が手付金だった)を支払った。

 そのあと、もう一度タロン魔装具店に顔を出して、タロン氏にお礼を伝えたのは言うまでもない。


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