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072 アイテムボックス再び②

 場所を喫茶店に移し、サリーから詳しい事情を聞いてみた。

 どうやらパーティーの中であまり役に立っていないことを気に()んでいたらしい。【索敵】や【罠感知】のスキルが役に立たないなんてことはないと思うけどな。

「リーダーは言うまでもなくすごい人だし、ハルクさんもタンクとして優秀だし、同じ冒険者ランクのイーリスだって錬金術師として役に立っているんだよね。私って名ばかりの斥候で、戦闘力も低いし…。だから、せめてポーターとして役に立ちたいんだよ」

 まだ冒険者になって一年そこそこのEランクなんだから、気にすることは無いのに…。

 俺はそう思うんだけど、こればっかりは本人の気質もあるし、他人には分からないこともあるのかもしれない。

 いずれにせよ、俺がやることは一つだ。

 ステータス画面から【アイテムボックス】の【コーチング】を選択して、サリーを対象に指定したよ。


「終わったぞ。確認してみてくれ」

 俺の言葉に自分のステータスを表示してみたのだろう。サリーの表情がパーッと明るくなった。

 俺もサリーを【鑑定】してみた。


・名前:サーサリアム

・種族:獣人族

・状態:健康

・職業:冒険者(Eランク)

・スキル:

 ・鑑定        22/100

 ・耐鑑定       18/100

 ・アイテムボックス  35/100 ←ここに注目!

 ・索敵        44/100

 ・罠感知       41/100

 ・魔法抵抗      21/100

 ・剣術        39/100

 ・徒手格闘術      8/100


 お、スキルレベルの初期値としては最大値の35だよ。サリーって、運が良いのかな。

 35立米(りゅうべい)ってことは、一辺が約3.3メートルの立方体になる。時間経過無しになるのはスキルレベル50以降だから、生鮮食料品については長期間入れっぱなしにできないし、狩った魔獣の肉も鮮度を保てないけど、それは先々のお楽しみってことだな。

 3~4年ほどで、スキルレベルは50を超えるだろうしね。

 そういった【アイテムボックス】についての詳細をナナが説明してくれた。

 サリーは終始夢見心地(ゆめみごこち)な感じで、ぽやぽやしていたよ。いや、説明をちゃんと聞いてくれ。


 ただ、ナナと同じで【耐鑑定】のスキルレベルが低いから、不良冒険者に(から)まれるかもしれないな。まぁ、バッツさんやハルクさんが常に一緒なら大丈夫だろうけど…。

「俺が【コーチング】したことは秘密だからな。くれぐれも頼むぞ」

「うん、分かってるよ。あ、でもリーダーだけには打ち明けて良いかな?もしも質問されたらの話だけど…」

「まぁ、バッツさんなら良いかな。信用できる人だし…」

 バッツさんの【鑑定】はスキルレベルが高かったし、すぐにバレてしまいそうだな。


「えっと、それで【コーチング】の料金ってどのくらいなんだろ?分割払いでも良いかな?」

 恐る恐る聞いてきたサリーに、軽い調子で俺はこう答えた。

「ん?()らないぞ。あ、先に言っておくけど、純潔を(ささ)げようなんて考えないようにな」

「えええぇぇぇ、どうやってこの恩を返せば良いのさ。嬉しいけど…。うん、嬉しいんだけど困る…」

「サリーさん、分かるよ。私も同じだったもん。お兄ちゃんは欲が無さすぎるんだよ。それが誇らしくもあるんだけど…」

 へ?いやいや、単なるヘタレってだけですよ。

 それに、必死の努力でスキルレベルを上げて、その結果【コーチング】ができるようになったわけじゃないしな。

 転移した時点ですでにスキルレベルが100だったわけだから、【コーチング】で報酬を貰うなんて考えにはならないよ。


 ・・・


 なお、この件の後日談だけど、バッツさんと久しぶりに会ったときに以下のような会話を(おこな)った。

「サリーの頼みを聞いてくれてありがとな」

「いえ、大したことはしてませんよ」

「あいつは、俺の師匠の娘でな。俺の娘同然の存在なんだ。だが、だからこそあいつは特別扱いされていると感じていたのかもしれねぇ。全然そんなことは無いのにな」

「パーティーではそれぞれが自分の役割を果たせば良いってことですよね」

「ああ、あいつは斥候として十分な働きをしていたぜ。まだ二年目のひよっこなのにな。まぁ、これでポーターとしても役に立てるようになったから、少しは自信もついただろうさ。お前さんには本当に感謝してるぜ」

 うん、パーティーの中に一人でも【アイテムボックス】のスキル持ちがいるのは便利だと思う。

 これでサリーが皆から頼りにされるような存在になったら、俺も嬉しいよ。


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