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068 魔装具店

 お屋敷へ戻るというアンナさんとは別行動をとることにして、俺とナナは魔装具店へ行ってみることにした。まだ、午後の早い時間帯だしね。

 伯爵家から借りた荷馬車の返却をアンナさんだけに押し付けてしまい、申し訳ないんだけど…。

 なお、魔装具(マジックアクセサリ)とは、身に着けておくことで特定スキルのスキルレベルを底上げすることができる魔道具の一種だ。

 俺が首にかけているネックレス【耐鑑定+22】がそれだな。てか、これって元々はデルト役場職員であるゴラン氏が持っていた物で、それをマックス隊長が押収し、エイミーお嬢様に献上されたものが俺に下賜(かし)されたものだけどね。

 マックス隊長の言葉を信じるのなら『数百万ベルの価値のある物』らしいけど…。


 魔装具店へ行く目的は、どんな魔装具(マジックアクセサリ)があって、どのくらいの値段なのか(つまりは相場)を知っておきたいから…。そう、別に買うつもりは無いのだ。いや、買いたくても買えないが正しいんだけどね(まだそこまでのお金は貯まってない)。

 ちなみに、店の場所はアンナさんに聞いておいたので、すぐに分かったよ。冒険者ギルドの建物が面している大通りの向かい側で、徒歩5分くらいのところだった。

 店の建物は地球のブランド店のようにおしゃれかつ高級な感じで、庶民は入りにくい雰囲気だ。金持ち御用達(ごようたし)って感じだな。

「お、おい、ナナ。ちょっと…」

 すたすたと何の気負いもなく店のドアを開けて中へと入っていくナナは、態度だけ見れば大金持ちか貴族っぽい。服装は完全に一般人なんだけど…。

 俺は戦々恐々としながらも、ナナの後について店の中へ入っていった。


「いらっしゃいませ。ようこそ、タロン魔装具店へ」

 40代くらいで小太りの、人の良さそうな店員さんが出迎えてくれた。

「私、当店の店長であるタロンと申します。どうぞお見知りおきを」

 荒くれ者と思われている冒険者風情(ふぜい)に向かって、にこやかに挨拶をしてくれるタロン氏は一角(ひとかど)の商売人だと思う。うん、接客態度は二重丸です。

 なにしろ俺たちの装備って、【ザ・貧乏】って感じだからね。革鎧すら付けていないのだ。

 あ、もしかしたら(冒険者ではなく)一般人だと思われたのかもしれない。俺はそもそも武器を持っていないし、ナナの愛剣のショートソードも【アイテムボックス】に入っているから、二人とも手ぶらだしな。


「こんにちは。俺はサトルで、こっちは妹のナナと申します。駆け出しの冒険者でお金もあまり無いんですが、魔装具(マジックアクセサリ)に興味がありまして…。それで、少し店内を見させていただきたいのですが…」

「どうぞどうぞ。興味を持っていただけることが何よりも嬉しいです。ご購入なさるかどうかなど関係ございません。どうか心ゆくまでご覧になってください」

 え?信じられない対応だ。普通は『貧乏人の冒険者など、うちの店に相応(ふさわ)しくない』的な態度を取られるものだとばかり思っていたよ。

 ナナがこっそりと耳打ちしてきた。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん。テンプレだとこういう店の人って酷い接客態度で、裏路地にあるような汚い店がすごい穴場だったりするんだけどね」

 いや、立派な店だからこそ店の人も立派なんだと思うぞ。いや、違う(逆だ)な。立派な人物がいるからこそ、店も栄えるんだろう。


「ありがとうございます。一番に確認したいのは【耐鑑定】の魔装具(マジックアクセサリ)でして、この子に着けさせたいと思っているのです」

 タロン氏がナナのことを見つめて、深く(うなず)いた。あ、【鑑定】したな。

「確かに、お嬢様の【耐鑑定】の値では(よこしま)(やから)から(から)まれることも多いでしょうね。お客様のご要望に合致する最も効果の高い商品は、現時点では【耐鑑定+28】になりますな」

 おお、ナナの【耐鑑定】が12だから、それを着ければ40になるね。良いんじゃないかな。


「あのぉ、それっておいくらになりますか?」

 ナナの質問に対するタロン氏の答えを聞いて、二人とも目が点になったよ。

「はい、二千万ベルでございます」

 うわぁ、(たけ)ぇ…。今日のワイバーン討伐みたいな依頼を100回こなせば良いってだけなんだが、いつもはこんな報酬額の高いCランクの依頼は受けられないんだよな。いや、俺たちってFランクパーティーなので…。


「一番安い【耐鑑定+】はどれですか?」

「それでしたらこちらの【耐鑑定+6】で、三十万ベルでございます」

 『+6』と『+28』で、えらい違いだな。

「同じスキルが対象の魔装具(マジックアクセサリ)を複数個装着した場合って、効果は加算されますか?」

「いえ、残念ながら最も高い数値のものだけが有効になりますな」

 なるほど…。加算されるのなら安いやつを何個か着ければ…って考えたんだけどな。そんなうまい話は無いってことか。


 ここで、少し離れてショーケースの中を見ていたナナが俺のことを呼んだ。

「お兄ちゃん、ちょっと来て。面白い物があるよ」

 ナナが指差した物を見ると、おぉ確かに面白い。

 そこにあったのは【魔法抵抗+32】の指輪だった。ただし、価格もすごかったけどな。値札に表示されていた金額は、なんと三億ベルだったよ。誰が買うんだよ、こんなの。

 いや、それよりも展示しているのは本物じゃないよね?イミテーションだよね?

 この店のセキュリティが気になって仕方がない俺だった。


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