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066 ワイバーン討伐依頼②

 最初に森の中でサクッと魔獣を狩っておく。

 ダイアウルフやホーンラビットって人間を恐れないんだよな。向こうのほうから寄って来てくれるから、とても楽なのだ。

 いつものように俺が【風魔法】の【ウインドブラスト】をぶつけて気絶させ、ナナが剣で(とど)めを刺すという完璧な連携です。あ、これはワイバーンを(おび)き寄せるための餌の調達段階なので、俺が攻撃しても文句は言われなかった。

 ダイアウルフ二体とホーンラビット三体を狩って、街道上に停車していた荷馬車に戻る。ちなみに、アンナさんが留守番だ(荷馬車を放置しておけないからね)。

「いかがでしたか?」

「問題なく誘引用の餌を調達してきましたよ。ダイアウルフで大丈夫ですよね?」

「ええ、大丈夫だと思います」

 なお、これらの獲物は俺の【アイテムボックス】に収納している。今回の作戦で使わなかった分は、ギルドの解体場に持ち込んで現金化すれば良いしね。


 それにしてもアンナさんは伯爵家に仕える侍女で、かつDランク冒険者なんだけど、元々は貴族令嬢だ(シュバルツ男爵家の三女)。

 なのに【操車術】のスキルも無いのに、馬車の御者までこなすんだもんな。エイミーお嬢様のお世話から護衛まで、何でもできる完璧超人って感じだよ(しかも美人だ)。

 あと【解体】スキル持ちじゃないのに、魔獣の解体もお手の物らしいよ。

 うーん、できれば馬車の操車方法と魔獣の解体技術は教わりたいものだ。アンナ先生と呼ぼうかな。

 アンナさんとナナが二人で楽しく女子トークしているのを見ながら、そんなことを考えていた俺だった。


 ・・・


 現地に到着すると、横倒しになった馬車の残骸が片付けられもせずに街道脇に放置されていた。おそらく、このあたりだな。

 街道横の空き地にダイアウルフの死体を一体だけ置いて、魔石だけは抜き取っておく。てか、アンナさんが解体用のナイフを使ってあっという間にやってくれた。

 当然、血の匂いがあたり一帯に広がることになるため、肉食の魔獣が寄ってくることになる。もしもワイバーン以外の魔獣が来ても、俺は手を出すなと言われてしまった。

「依頼達成も大事ですが、私やナナさんの訓練も兼ねてますからね。サトルさんは荷馬車と馬を守っていてください」

 まぁ、守備(ディフェンス)も大事だよな。この馬車って、伯爵家からの借り物だし…。


 ワイバーンも人を恐れないため、特に身を隠す必要はないらしい。ただ、誘引用の餌(ダイアウルフの死体のこと)に向かって降下してくるところを攻撃したいので、一応岩陰に身を隠すアンナさんとナナ。

 俺は少し離れた位置にある木陰で馬の鼻先を撫でてやっている。上空のワイバーンからは見えづらいように、葉の繁っている大木のそばにいるわけだね。


 しばらく待機状態が続いたけど、山のほうから俺たちの上空に二体の鳥っぽいものが現れたのを見てほっとした。多分、あれだな。

 アンナさんとナナも気付いたようだ。

 二体が餌であるダイアウルフの上空を旋回している。周囲を警戒しているのか?

 …っと、一体のワイバーンが降下してきた。えっとプテラノドン?翼竜に分類される恐竜の一種だね。まさにアレだ。

 長い(くちばし)と大きな翼(広げたら横幅3メートルくらいはありそうだ)が特徴的だ。


 ワイバーンが脚の鉤爪(かぎづめ)で餌を(つか)もうとした瞬間、火の矢が宙を走りそのワイバーンに突き刺さった。アンナさんの放った【火魔法】の【ファイアアロー】だな。

 薄い翼部分に刺さったことで、すぐに片翼が燃え上がった。羽ばたいて上空へ逃れようとしているみたいだが、片翼が失われたため浮力が得られない。

 続けて飛んできた水の矢が胴体部分に命中し、そのワイバーンはすぐに絶命した。多分、ナナの放った【水魔法】の【ウォーターカッター】に違いない。

 すごい連携だな。事前に打ち合わせでもしていたのか?


 ただ、上空を旋回していたもう一体のワイバーンが岩陰にいる二人に急降下してきた。背後からの急襲なので、アンナさんとナナは(多分)気付いていない。

 俺は迷わず【風魔法】の【ウインドブラスト】を発動して、ワイバーンが降下するさらにその下方へと放った。当てる必要はないのだ。てか、偏差射撃(見越し射撃とも言う)は難しすぎるからね。

 案の定、命中はしなかったけど、そのワイバーンは急降下を中断し、再度上空へと戻っていった。

「アンナさん、ナナ。気を抜かないで!」

 驚いた顔で一瞬だけこちらを見たけど、すぐにもう一体のワイバーンに意識を集中させるアンナさん。

 ナナもショートソードを抜いて、アンナさんの盾になるような位置取りをしている。


 仲間を殺されて怒ったワイバーンが、再びアンナさんとナナのほうへ向かって降下していった。

 ただ、向かってくる敵に魔法を当てるのは案外簡単なのだ(横移動する相手に当てるのは難しいけどね)。

 おそらく二人同時に魔法を発動しようとしたのだと思うが、発動に成功したのは一人だけだったみたい。一本だけ細い水流が放たれたからね。

 で、それがワイバーンの頭部を貫通した。見事な腕前だ(どちらの魔法かな?)。


 脳を破壊されたワイバーンは降下の勢いのまま岩に激突したよ。もちろん、二人は見事な身のこなしで左右に跳んで回避していたけどね。

 うーん、俺の出る幕が無かったです。

 あっという間に依頼達成だ。


 その後、アンナさんが二体のワイバーンから魔石と買取可能な部位の肉を分離し、それをナナが自分の【アイテムボックス】に入れていた。

 ナナが【ウォーターストリーム】を発動することで出した水でアンナさんが血(まみ)れの手を洗ったり、残った死体を地面に埋めたりと後始末をする俺たち。

 ちなみに、シャベルで穴を掘って死体を埋めるのだが、その穴掘りにのみ活躍したのが俺だった。疲れた…。アンナさんがいなければ【土魔法】で穴を掘っちゃうんだけど…。

 …と言うか、今日の俺ってほとんど何もしてないんですけど…。まじで…。


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