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065 ワイバーン討伐依頼①

 翌日の早朝、俺とナナは冒険者ギルドへと向かった。今回は、侍女服ではなく冒険者っぽい(よそお)いをしたアンナさんも同行している。

 今日は三人でパーティーを組み、CランクかDランクの依頼を受けるのだ。アンナさんがDランク冒険者だからね。

 早い時間帯にもかかわらず、多くの冒険者でごった返している冒険者ギルド・リブラ支部の建物内…。特に、依頼が貼り出される掲示板の前は大混雑だ。

「アンナさん、朝の時間帯って毎日こんなに混雑しているんですか?」

「私は週に一日くらいしか冒険者として活動しませんから、毎日の状況は分かりません。ですが、来たときにはいつもこんな感じですよ」

「お兄ちゃん、デルト支部も朝は似たようなものだよ。あっちにいた時って、朝はのんびりしてたから気付かなかったかもしれないけど…」

 おっと、そうだったのか。デルトの街ではギルドに行くのはいつも10時過ぎくらいだったからな。


 アンナさんが人込みをすいすいとかき分けて、掲示板の前まで行ったかと思うとすぐに一枚の紙を手に戻ってきた。慣れてるなぁ。

「Cランクの依頼を勝手に持ってきてしまいましたが、この依頼でよろしいでしょうか?」

 アンナさんが手渡してくれた依頼書をナナと二人で見分(けんぶん)する。

 なになに…。


・件名:ワイバーン討伐依頼

・場所:領都リブラの東側約10km地点にある山岳地帯の中を通る街道沿い

・報酬:50万ベル

・特記事項①:二体の存在が確認されているが、その両方を確実に仕留めること

・特記事項②:肩の付け根と胸部の肉は別途買取可能


 距離が遠いなぁ。徒歩だと往復で5時間だよ。

 あと、案外報酬が安いよね。いや、そうでもないのか?相場がよく分からない。

 まぁ肉を売れば追加報酬になるみたいだし、別に良いか。俺たちには(三人全員に)【アイテムボックス】があるからね。しかも、俺とナナのは時間経過無しだ。

「伯爵家の所有する荷馬車を使いますから、時間はそこまでかからないと思いますよ」

 アンナさんが馬車の利用を提案してくれたよ。うん、めっちゃありがたい。それなら現地まで一時間もかからないだろう。


 ちなみに、ワイバーンは空を飛ぶ魔獣だけど、地上の獲物を狩るときに滑空して地表近くに降りてくるらしい。そこをすかさず弓矢か魔法で仕留めなければならないので、討伐難易度が高いとのこと。

 ただ、魔獣自体の強さはオーク程度(Dランク)らしいから、飛んでいなければ問題はないみたいだけどね。

 剣や槍などの近接武器では逃げられてしまうらしいので、攻撃手段が弓矢か魔法に限られてしまう。そういう理由でCランクの依頼となっているそうだ。

 だったら俺たちには問題ないな。なんとパーティーメンバー全員が魔術師だからね。これって、なかなかすごいことらしいよ(魔術師が一人もいないパーティーってのが普通らしい)。

 まぁ、うちには逆に前衛となる人材がいないんだけどね…。【剣術】スキルを持つナナがかろうじて前衛を務められるかって感じだ。


 なお、この依頼は緊急性が高いらしい。すでに数台の馬車が街道上で襲われていて、馬たちが犠牲になっているとのこと。

 幸いなことに、まだ人的被害は出ていないみたいだけどね。ただ、人間が襲われるのも時間の問題ではないかと言われている(らしい)。

 …って、依頼主はアインホールド伯爵だったよ。街道の安全を確保するのは領主としての責任ってやつだな。

 あ、伯爵家に所属する騎士団を動員しない理由は、彼らは近接戦のエキスパートではあるけれど遠隔攻撃が苦手だかららしい…。いや、弓矢の練習もしろよ。

 この辺の内情については、現地へ着くまでの道中にアンナさんがこっそり教えてくれたのだった。


 ・・・


 今回の作戦は以下の通り。

・現地へ向かう途中にある小さな森に立ち寄り、魔獣か普通の獣を事前に狩っておく(最低でも一体)。

・馬車が襲われるポイントに到着したら、狩った魔獣の死体を街道上か街道脇に置いて、俺たちは離れたところに身を隠す。

・ワイバーンが魔獣の死体を(ついば)みにやってきたら魔法で倒す。

・二体が同時にやってくるのか、一体ずつ現れるのかが分からないので、そのあたりは臨機応変に対処する。


 ちなみに、作戦立案はアンナさんで、ナナが参謀のように意見を出していた。え?俺?…俺はどんな魔獣なのかその特徴や生態を全く知らないので、口出しできないよ。

「お兄ちゃん、できるだけ手を出さないでね。でないと瞬殺で終わっちゃいそうだし…」

「そうですね。サトルさんは見ていてください。私たちが危なくなった場合のみ、手を貸していただけると嬉しいです」

 ナナとアンナさんからの要望だ。え?俺は何もしちゃいけないの?

 なんだか付き添いの保護者的ポジションになってしまった俺だった。Fランクなのに…。


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