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062 水魔法のコーチング

 翌日は快晴だった。

 今日はアークデーモンのメフィストフェレス氏が任務を果たして戻ってくるかもしれない。しかし、戻るにしてもそれは夜になるだろう。

 なので、今日の午前中はナナと一緒に冒険者ギルドへ行ってみることにした。

 伯爵家の馬車を出してくれるという伯爵様の申し出を丁重に断り、徒歩で冒険者ギルドへ向かう俺とナナ。いや、馬車だと目立つし…。


 30分くらい歩いたかな。

 場所はアンナさんに聞いていたから迷うことは無かったよ。

 デルト支部よりも大きな建物(三階建て)で、さすがは領都って感じだった。

 大きな扉は常時いっぱいに開かれていて、誰でも入りやすい雰囲気を(かも)し出していた。中の配置はデルト支部と似たような感じだな。

 入って正面にある受付に、依頼達成の証明書類を提出した俺たち…。もちろん、エイミーお嬢様の署名(サイン)があるものだ。

 これで護衛依頼についての報酬を受け取れるわけだね。

(あかつき)双翼(そうよく)のサトルさんとナナさんですね。アインホールド伯爵家からの指名依頼の達成、確かに確認致しました。こちらが報酬になります。お納めください」

 差し出されたトレイに載せられていたのは、白金貨が二枚だった。

 へ?白金貨?それが二枚ってことは二百万ベルだよ。てか、多過ぎだよ。


「あのぉ、これって計算を間違えていませんか?」

 俺の質問に受付嬢さんが笑顔で答えてくれた。どうでも良いけど、若い美人さんだった。受付嬢ってだいたい美人だよな。

「もともとの報酬は二日間の護衛で一人二十万ベルでしたが、護衛の期間が延びたことと、さらに戦闘が発生したため、その分の手当が加算されております。これは伯爵家も了承済みですので、遠慮なさらず受け取ってください」

 二日間の予定が六日間になって一人六十万ベル、戦闘手当が一人四十万ベルと考えれば総額二百万ベルになるね。

 ちょっと高い気もするけど、ありがたく貰っておこう。

 俺は白金貨一枚をナナに手渡した。

「お兄ちゃん、私は六十万ベルだけで良いよ。戦闘ボーナスを貰えるほど戦ってないし…」

「いや、同じパーティーの仲間なんだから報酬は山分けだ。これは絶対に譲れないぞ」

 働きによって分配を変えるなんて、そんなことはしたくない。てか、査定するのが面倒くさい。均等に分けるのが一番楽なのだ。


 ギルドではもう一つ用事がある。俺は受付嬢さんに質問した。

「【水魔法】の【コーチング】を受けたいのですが、どこで申し込めば良いのでしょうか?」

「こちらの書類にお名前と【コーチング】を受けたいスキル名、この場合【水魔法】ですね、それをご記入ください。当リブラ支部の嘱託(しょくたく)である【水魔法】の魔術師様を呼んで参りますので…」

 このあと、受付嬢さんが後ろを向いて別の職員に指示を出していた。

 ナナが必要事項を記入して窓口に提出したあと、併設されている酒場のほうで待つように指示された。デルトとは違ってここには酒場があり、数人の男女がテーブルに座って飲食をしていた。

 あ、もちろん酒場と言っても真っ昼間なので、酒を飲んでる人はいないみたいだけどね。


 そこで飲み物(もちろん、お茶だ)だけを頼んで、待つこと約一時間…。

 ナナとの会話内容はだいたい食べ物のことばかり(人目があるので、地球のことはあまり話せない)で、なんと材料さえ揃えばカレーやハンバーグっぽいものも作れるとのこと。

 おぉ、今後は食材探しの旅をするってのも良いかもしれないね。ナナの前世が料理好きの女子高生(JK)で良かったよ。


「お前たちが【コーチング】の依頼者か?その若さで料金を支払えるのかね?」

 老人と言っても良いくらいの見た目で、魔術師っぽいローブを羽織った非常に偉そうな態度の男性が近付いてきた。ギルドの職員(若い女性)も一緒だ。

 俺たちは席を立って、お辞儀をしながら挨拶した。

「はじめまして。俺はサトル、この子はナナです。今日はこの子に【水魔法】の【コーチング】をお願いしたく、よろしくお願い申し上げます」

「ナナです。よろしくお願いします」

 偉そうな相手だとしても、年長者には敬意を払わないとね。この(あた)りは俺もナナも日本人としての精神を持っているので、特に問題はない。

「うむ、(わし)はジャレドという【水魔法】の達人(マスター)だ。報酬として三百万ベルを受け取ることになるのだが、本当に大丈夫かね?」

 若い俺たちが【コーチング】料金を支払えるのか、とても不安そうにしているよ。いや、分かります。


 ナナが服のポケットから白金貨を三枚取り出して見せると、ジャレド氏は相好を崩した。

「若いのに大したものだ。礼儀もわきまえておるし、なかなか見どころがある」

 一緒についてきたギルド職員さんが、なぜか驚いた顔になっていた。別に驚くことは無いよね。お金もないのに申し込まないよ。

「料金は後でこいつに渡してくれ。それでは早速始めるとするか」

 ジャレド氏がステータス画面から【コーチング】を選択したのだろう。すぐにナナの顔に満面の笑みが浮かんだ。

 俺もナナを【鑑定】してみた。


・名前:ナナ・ツキオカ

・種族:人族

・状態:健康

・職業:冒険者(Fランク)

・スキル:

 ・鑑定        16/100

 ・耐鑑定       12/100

 ・アイテムボックス  69/100(+1)

 ・状態異常耐性    64/100

 ・魔法抵抗      11/100

 ・剣術        32/100

 ・徒手格闘術      5/100

 ----------

 ・水魔法       33/100 ←ここに注目!


 お、【アイテムボックス】のスキルレベルが早くも上がってる。まぁ、めっちゃ使ってるしね。

 で、肝心の【水魔法】だけど、初期値が33なら良いほうじゃないかな?

「ジャレド様、ありがとうございました。嬉しいです」

 ナナがジャレド氏にお礼を言っていた。もちろん、俺からも感謝の言葉を伝えたよ。

 上機嫌で去っていくジャレド氏の背中を見ながらギルド職員さんが言った。

「驚きました。気難しいことで有名なジャレド様に気に入られるなんて…。あの方に【コーチング】してもらうのは大変なんですよ。いつもは嫌々ながらやるんですけどねぇ」

 え?そうなの?最初は偉そうだなって思ったけど、話してみたら普通に良い人だったけどな。


 とにかく【水魔法】の初級が使えるようになったナナのために、何か依頼を受けてみたいよね。

 俺とナナはEランクの依頼(魔獣討伐系)が貼り出されている掲示板の前へと移動した。何か手ごろな依頼はあるかな?


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