060 眷属
『どうだ。名は決まったか?』
アークデーモンのところに戻った俺は、背筋を伸ばして毅然とした態度で言った。
『ええ、あなたの名前は【メフィストフェレス】にします。いかがでしょうか?』
この瞬間、アークデーモンの身体が光り輝いた。そして、数秒後にそれが収まったときには、前と変わらないアークデーモンの姿がそこにあった。
何なんだ?この効果…。
『おおお、我の能力が向上したぞ。思った通りだ。やはり、お主の眷属になって良かったわ』
ん?どういうこと?
俺はアークデーモンを鑑定してみた。
・名前:メフィストフェレス(サトル・ツキオカの眷属)
・種別:アークデーモン
・種族:悪魔族
・スキル:
・耐鑑定 78/100(+22)
・状態異常耐性 250/250(+64)
・魔法抵抗 60/200(+17)
・徒手格闘術 300/300(+61)
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・土魔法 164/200(+47)
・空間魔法 71/200(+20)
なんだこれ?
めっちゃスキルレベルが上がってるじゃん。もともとの数値は俺の持つノートにメモっておいたんだけど、カッコ内は元の数値からの増加分だ。
【状態異常耐性】と【徒手格闘術】なんか上限まで到達してるよ。
てか、もはや勝てる気がしないよ。【土魔法】の上級を100%の確率で発動できる上、総魔力量が295もあるからね。
もはや領都の住民全員(2万人くらいらしい)を皆殺しにできるレベルじゃないか?
一応、ノートに上記の数値を書き込んだけど、これは誰にも見せないほうが良い気がするよ。
『それでは行ってくる。早くて明日、遅くとも明後日には戻ってくるぞ。朗報を待て』
『よろしくお願いします。お帰りをお待ちしております』
言葉遣いだけ見るとどちらが上位者か分からないな。一応、俺のほうが上らしいけど…。
地図と警告文の紙を手にして飛び去って行ったアークデーモン、いやメフィストフェレスを見送った俺は、伯爵様たちのところへ戻った。
「明日か明後日には戻ってくるそうです。首尾よくいけば良いのですが…」
「そうだね。あとは彼に託そう。これで王太子殿下がエイミーのことを諦めてくれれば良いのだが…」
「もしも更なるちょっかいをかけてくるようなら、次は本当に暗殺しましょう」
そう、二度目は無いのだよ。警告文にもそう書いているからね。
「お兄ちゃん、それ見せて」
ナナが一瞬の隙をついて俺の手からノートを奪い取った。
中の文章自体は日本語で書いているから、覗き見られても構わないのだが、ナナだけは読めちゃうんだよね。日本語なので…。
最も新しい記述であるメフィストフェレスのステータス(上記)を確認したナナが絶句していた。いや、これは絶句しても仕方ないよな。
俺もつい先ほど目が点になったばかりだからね。
「お兄ちゃんって、ラノベの主人公っぽくは無いよね。認識阻害のローブで卑怯ムーブしたり、悪魔族を配下にしたり…。何というか、ダークヒーローに近いかな。いや、魔王かな?」
いやいや、俺は主人公じゃないっつーの。魔王でもないし…。
ちなみに、朝から降り続いていた雨は現在小康状態であり、曇り空を背景にして立つ黒髪の俺はナナから見ると少しだけ魔王っぽいのかもしれない。
さらに、俺の背後で稲光が発生しているんだけど、ちょっと演出過剰だろ!要らないんだよ、そんな効果。
「たとえお兄ちゃんが魔王になったとしても、私だけは妹として一緒にいてあげるよ」
魔王になんかならねぇよ。でも、ありがとう。天涯孤独の異世界転移者にとって、日本人の魂を持つ人間が近くにいることがどれだけ心強いことか…。
きっと、ナナが自分で思っているよりもずっと、俺はこの子に感謝しているんだよな。照れくさいから言わないけど…。




