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046 迎撃開始

 協議の結果をそれぞれの部下や仲間たちに伝達し、全員の意思を統一したあと、小休止を終えていよいよ森の中へと出発する一行。

 森の中の敵の人員配置状況は先ほど俺が偵察し、全員でその情報を共有している(あのあと、配置が変わっていなければ良いのだが…)。

 したがって、襲撃ポイントも予測できているよ(その陣形から)。


 こちらの陣形だけど、アンナさんはエイミーお嬢様をお守りする最終防衛ラインとして同じ馬車に乗る。サッカーで例えれば、ゴールキーパーだな。

 マックス隊長もお嬢様の馬車からは付かず離れず護衛する。部下の騎士たちもそうだ。(ファイブ)バックのディフェンスってところだ。

 そして、フォワードやミッドフィールダーとして動くのが『白銀の狼』と、俺たち『(あかつき)双翼(そうよく)』になる。特に俺は、魔法による遠隔攻撃を一手に引き受けることになるので、かなり忙しい。

 そしてやはり怖いのは負傷だ。でもまぁ、なんとかなるだろう。俺の【アイテムボックス】には治癒ポーションや魔力回復ポーションも入っているし、なにより錬金術師(いや、自称『ポーション屋』)のイーリスさんが適宜(てきぎ)回復してくれるはずだ。

 少し心配なのは妹のナナだな。実戦経験が少ないので、常に気を配っていてやらないと、危ない場面もあるかもしれない。実戦経験が少ないのは俺も同じだけどね。

 てか、まさか職業軍人たちと戦うことになるとは思ってもみなかったよ。本当に大丈夫だろうか?


 そうそう、認識阻害のローブだけど、エイミーお嬢様に着せようとしたら拒否された。攻撃の(かなめ)である魔術師、つまり俺が着るべきだと主張されたのだ。

 まぁ、一着しかないローブだし、誰かが活用すべきなんだけど、俺としてはエイミーお嬢様かナナに着てもらいたいよ。

「もしもあなたが倒されたら戦況は一気に不利になります。逆に、あなたが生き残っている限り逆転の目は残るのです。ここはサトルさんが着用すべきかと…」

 これはアンナさんの言葉だ。周りの騎士さんたちや『白銀の狼』のメンバーも皆、うんうん(うなず)いていた。


 結局、一か月前のときと同じように、物陰に隠れた俺が魔法で攻撃していくのが最適解だという意見が大勢を占めたわけだ。あー、うん、確かにそれがベストなのかもしれないけど、俺としては卑怯な感じがして何となく後ろめたい…。

 で、最終的には、途中から俺だけが一行とは別行動をとり、森の中の敵を攻撃しやすい位置に潜伏しておくことになった。

 一本の(みき)が太い木に登って、張り出した枝の上に待機する俺。なんとか飛び降りることができるくらいの高さだ。


 ・・・


 そして、予想された襲撃ポイントに近付く騎馬と馬車の一行。

 突然、先行する馬車(バッツさんたち)の上に矢が降りそそいだ。次いで、右側から二つの水流(【ウォーターカッター】だな)、左側から一つの火の矢(【ファイアアロー】に違いない)が飛んできた。

 最初は降伏勧告を行うものだと思っていた俺は意表を突かれてしまった。まさか問答無用で攻撃してくるなんて…。

 ハルクさんの大盾が左からの【ウォーターカッター】を防いだけど、右からの攻撃に対処できない。…っと、ここでバッツさんが自分自身の身体で火の矢を受け止めた。

 魔法を抵抗(レジスト)できる確率が99%とはいえ、豪胆なことだ(俺にはできないかも…)。てか、身体は無傷みたいだけど、装備が少し()げていたよ。


 矢は次々と降りそそいでくるが、しっかりと狙いを付けているわけではないようで、致命的な一撃を受けた者はいない。

 かすった矢によって肌を傷つけられていたのは、イーリスさんやナナだ。ただ、ポーションで治癒するまでもないようなかすり傷みたいでちょっと一安心。

 しかし、このままではいつかは矢が深く刺さったりすることもあるかもしれない。

 なので、当初の予定を変更して、まずは弓兵から排除していくことに決めた。魔法はしばらくの間、バッツさんやハルクさんに防いでもらおう。


 俺は【水魔法】の中でも中級魔法である【アイススピア】を発動し、あらかじめ調べていた弓兵の位置をたどりながら一人、また一人と倒していった。

 ちなみに、この魔法…直径5cm、長さ30cmくらいの氷柱(つらら)が飛んでいくと言えばイメージしやすいだろうか。威力的には鎧ごと身体に突き刺さるほどなので、当たれば瀕死になるのは間違いない。

 即死しないことを願いながら、でも無慈悲に攻撃を続ける俺。

 敵の命よりも、味方のほうが大切だからな。敵については、死んだら死んだで仕方ないと割り切るしかない(殺したくはないけど…)。


 もちろん、位置的に魔術師を狙えるところに移動したら、弓兵と共に魔術師にも攻撃を行う。

 さすがは認識阻害のローブの威力と言うべきか、俺自身は攻撃されることもなく、こちらから一方的に攻撃をかけることができている。まさに卑怯(笑)

 あと、敵の近接戦闘要員も街道の前方及び後方から攻撃をかけてきているものの、騎士さんたちの奮戦によりなんとか防いでいるみたいだね。


 俺は弓兵と魔術師を全員無力化したあと、司令塔であるバッツさんに向けて大声で伝えた。

「弓兵と魔術師の殲滅は完了しました!ここからは攻勢に出ても大丈夫です!」

 敵の遠隔攻撃手段を持つ者たちは全滅したのだ。これでひとまずは安心できるだろう。


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