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045 迎撃準備

 森の中で戦うのと、今のだだっ広い畑の中で戦うのはどちらが有利だろう?

 襲撃者の立場になって考えてみよう。

 ()(少数)をもって(しゅう)(多数)を()つならば森の中一択だ。逆に、(しゅう)たのんで()を制すならば広い戦場のほうが望ましい(包囲殲滅できる)。

 こちらの戦力は騎士五名+冒険者六名(アンナさんも加えれば七名)だが、襲撃者側がどれだけの人数を用意したかだよな。おそらく、一か月前の襲撃時より少ないってことは無いだろう。

 だとすると30~40名くらいか?


 全周包囲されて波状攻撃を受けた場合、突破されてしまうのは容易に想像できてしまう。

 ただ、ポイントは彼我の魔術師の人数だと思う。なにしろ前回は、俺という魔術師が一人いるだけで敵を撃退できてしまったのだから。

 あとは襲撃者側の機動力の有無だな。徒歩なら良いが、騎馬がいた場合はかなり苦戦することになりそうだ。


 とにかく、敵を知らずして(いくさ)(のぞ)むのは無謀すぎる。

 ただ、斥候のサリーさんが偵察できるのは人数や武装、馬の有無などで、敵の中に魔術師が加わっているかどうかは分からない。なぜって【鑑定】のスキルレベルが22しかないから。

 だとしたら、俺(【鑑定】82)かバッツさん(【鑑定】73)の出番となる。でも身体が大き過ぎるバッツさんは隠密行動には不向きなのだ。

 消去法で俺が偵察するしかないだろう。


 エイミーお嬢様とマックス隊長、そしてバッツさんと俺を加えた四者協議(アンナさんも加えると五者協議か)を行った結果、ここでいったん小休止を取り、その間に俺だけが森へ潜入して偵察行動を実施するという作戦が可決された。

 実はデルトの街の魔道具店で(アインホールド伯爵家の予算で)新装備を購入していたのだ。まさに『こんなこともあろうかと』って感じだ。

 それが認識阻害のローブ、一着で一千万ベルなり。…って、(たか)っ!

 このローブを羽織(はお)ると、姿が消えるわけじゃないのに(つまり見えているのに)、そこには誰もいないと思ってしまうのだ。偵察行動にはうってつけだね。

 てか、これがあるからこそ斥候に立候補したんだけどね。


 ちなみに【認識阻害】はスキルの一つであり、【看破】のスキルを持っていて、そのスキルレベルが【認識阻害】より高い人間以外には上記の効果が発動する。そして【看破】を取得している人なんてめったにいないのだ。

 なので認識阻害のローブは【認識阻害+12】という低性能にもかかわらず、絶大な効果を発揮する(らしい…魔道具店の店主によると)。

 まぁ、どれだけ有効なのかは今から俺自身で検証しよう。


 こうして俺は一人で森の中へと踏み入り、隠れている襲撃者たちを一人一人【鑑定】していった。

 その人数は20名で、思ったよりも少なかったのだが、問題は彼らの所属(職業)だった。全員の職業が『ビエトナスタ王国国防軍第二部第五課』だったのだ。

 『ビエトナスタ王国』という国の名前は以前エイミーお嬢様から教えてもらったんだけど、この国(エーベルスタ王国)の隣国であり、普通に国交もあるところだ(しかも、どちらかというと友好国になるらしい)。

 『国防軍』ということは軍人ってことだな。『第二部第五課』がどういった任務を担当しているのかは分からないけど…。

 そして魔術師は…っと、いたよ。しかも複数…。

 【火魔法】のスキルレベル45が一人、【水魔法】のスキルレベル56が一人、同じく38が一人だ。

 三人とも初級魔法しか撃てないとはいっても、かなりの脅威だよ。まぁ【魔法抵抗】がそんなに高くなかったのが幸いだったけどね(こちらの中級魔法で倒せるレベル)。


 俺は敵20人分のステータスをノートに殴り書きしたものを(たずさ)え、仲間のもとへと戻ってからその結果を報告した。

「ま、まさかビエトナスタ王国の軍人が襲撃者とは…。いえ、まだ襲撃されると決まったわけではありませんよね」

 エイミーお嬢様が信じられないって表情で発言したが、アンナさんによって楽観的な観測は否定された。

「いえ、お嬢様。森の中に(ひそ)んでいるだけでも大問題でございます。まず間違いなく、私たちを襲撃するつもりでしょう」

「お嬢様、私もそう思います」

「だろうなぁ。でなきゃ何のためにそこにいるんだって話になるもんな」

 マックス隊長とバッツさんもアンナさんに同意した。ちなみに、俺も同意見だよ。


「でも、勝てるの?襲撃者の人数が予想よりも少ないとはいえ、魔術師の数はこちらの二人に対して敵方は三人でしょう?いえ、アンナが私のそばにいる以上、実質こちらの魔術師はツキオカ様一人だけよ」

 エイミーお嬢様の疑問にバッツさんが答えた。

「いや、敵の撃つ初級魔法は【魔法抵抗】が30を超えている俺やハルクには()かねぇ。マックスさんにもな。ああ、サトルも大丈夫だろ?」

「はい、もちろんです。ただ、前回の盗賊たちとは違い、俺やアンナさんの初級魔法だけで倒せるような相手ではありません。20人全員が中級魔法でないとダメージを与えられないくらいの【魔法抵抗】スキルを持っています。なので、俺は敵の魔術師のみを標的にしたいと思います。魔術師以外の敵はバッツさんたちにお任せしても良いですか?」

「分かったぜ。あとは弓矢だな。魔術師3人のほかは近接戦闘要員が12人、【弓術】スキル持ちで弓装備の敵が5人だろ。弓使いだけは早めに無力化しておきたいところだが…」

「そいつらも俺が担当しますよ。魔術師を無力化したあとになりますけど…」

 てか、中級の攻撃魔法を撃てる魔術師が俺しかいないのだ。仕方ない…。

 ただ、【水魔法】のスキルレベルが61なので、中級魔法の発動成功確率は51%なんだよな。それだけが少し心配ではある。


「あれ?ちょっと待て…。今気付いたんだが、サトルは【風魔法】と【光魔法】の二属性(ダブル)だったよな。中級が発動できるのは【光魔法】のほうじゃなかったか?」

「あー、これは秘密にしておいて欲しいんですけど、実は【水魔法】の中級も使えるんです」

「なにぃ~、三属性(トリプル)かよ!そりゃ秘密にしておかないと、王宮にでもバレたら拉致(らち)られること間違いなしだぜ」

 え?そんな大事(おおごと)なの?さすがにそれは大げさでしょ…。

「ま、まぁそんなわけで内密にお願いします」

 うう、冒険者登録を【風魔法】と【水魔法】、または【水魔法】と【光魔法】にしておけば良かったかも…。もはや後の祭りだが…。


「あの、一つ誤解があるようなので、差し出がましいとは存じますが、一言申し述べさせていただきます」

 アンナさんから何か提言があるようだ。

「【魔法抵抗】スキルのレベルが魔法の最低必要スキルレベルよりも小さい場合、魔法が当たれば必ずダメージを受けます。ですが上回っている場合であっても、100%抵抗(レジスト)できるわけではありません」

 え?そうなの?ちなみに『魔法の最低必要スキルレベル』ってのは、初級が30、中級が60、上級が90ってやつだ。

 で、アンナさんの話では抵抗(レジスト)成功確率は以下の式で判定されるらしい。


【魔法抵抗のスキルレベル-魔法の最低必要スキルレベル+70(%)】


 つまり、バッツさんの場合【魔法抵抗】のスキルレベルが59なので、敵の初級魔法は99%の確率で抵抗(レジスト)できる。でもハルクさんやマックス隊長のスキルレベルは43なので、抵抗(レジスト)に成功する確率は83%だ。ほぼ大丈夫とは思うけど、運が悪いとダメージを喰らいそうだな。

 俺の場合だと【魔法抵抗】は80なので、初級魔法は100%、中級魔法は90%の確率で抵抗(レジスト)に成功するってことになるよ。うん、全く問題ないね。


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