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372 屋敷への帰還

「…というわけで、この二人の落ち着き先が決まるまでは、ここで面倒見てもらいたいんだけど」

 屋敷のLDKリビング・ダイニング・キッチンに集合した全員に向かって、サユさんとミユちゃんの事情を説明した俺だった。

 宿屋暮らしというわけにもいかないし、賃貸の部屋か家を借りるまではここで暮らしてもらいたいのだ。いや、何かと心配だからね。


「お兄ちゃんさぁ、まーた可愛い子を引っかけてきたもんだね。ミユちゃん、私はこの人の妹でナナだよ。よろしくね」

「引っかけるとは人聞きの悪い…。あ、これ『コーア』な。今回は100kg近くあるぞ」

 『コーア』というのはカカオのことだ。チョコレートの原料だね。【アイテムボックス】から次々に取り出しては、どかどかとテーブル上に積み上げていったよ。

「おぉ、素晴らしいね。てかさぁ、そろそろチョコレート加工用の機械を作ってよ。魔道具でさぁ」

「材料を混ぜるのって大変そうだもんな。まぁ、ちょっと考えてみるよ」

 洗濯機、いやジューサーみたいに羽が下部で回転するような構造だったら良いのかな?回転速度はゆっくり目で…。

 てか、回転運動って魔道具で実現できるのだろうか?


「サユさん、このお屋敷で侍女長を勤めさせていただいておりますアンナと申します。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談くださいね。ミユちゃんもよろしくね」

「私はサーサリアムだよ。サリーって呼んでね。二人ともよろしく~」

「ツキオカ男爵家騎士団長のユーリだ。よろしく頼む」

「このお屋敷の経理を担当しておりますマリーナです。どうぞよろしく」

「マリーナの妹でサーシャと申します。侍女見習いでございます」

「お、オーレリーです。御者とか庭いじりを担当しています。よろしくお願いします」

 これで全員だな。皆、笑顔で挨拶しているのを見るに、二人(サユさんとミユちゃん)を歓迎している様子がよく分かる。まぁ、表面上は…だけど(本心は分からん)。


「ありがとうございます。すぐに住むところを決めて出ていきますので、それまでは娘のミユ共々(ともども)よろしくお願い申し上げます」

「あ、でも部屋をどうしよう?今って()いてる部屋が無いんだよね。私の部屋を提供しようか?」

「ナナ自身はどうするんだ?」

「仕方ないからお兄ちゃんと同室で良いよ。うん、仕方ないからね」

 兄妹(きょうだい)なので別に問題は無いんだけど、ナナにはちょっと申し訳ないな。


「ナナさん、ダメですよ。それなら侍女長である私がサトルさんと同室になるべきです」

「いやいや、警備責任者の私こそが1階の部屋にいるべきなんだよね。サトルも良いよね?」

 アンナさんとサリーも立候補してるけど、それはダメでしょう。特にアンナさん、未婚の貴族令嬢が身内でもない男性と同じ部屋で寝るなんて、かなりのスキャンダルですよ。

 てか、女性二人で一つの部屋を使うという発想にはならないのだろうか?いや、2階の部屋だとちょっと狭いかな?


 言い争いに終止符を打ってくれたのは騎士団長のユーリさんだった。

「この屋敷には門の近くに使用人用の小さな家があるよな。駐在所だっけか。今は誰も使っていないが…。私がそっちへ移るから、今使ってる私の部屋を提供するよ。実は以前から考えていたことなんだが、申し出る機会が無かったのさ。警備の観点からもそのほうが良いだろうしな」

 あぁ、確かに今は無人の建物が門のすぐ脇にあるんだよね。将来的にユーリさんが所帯を持つことを考えると、別棟(べつむね)のほうが良いのは確かだな。

 ただ、かなり小さめの建物で、間取りとしては1DK+トイレくらいしかないけど。

 で、結局、今から総出でその駐在所の中を掃除することになった。なにしろ今までずっと、ほったらかしだったからね。


「それじゃ、俺たちは今から王城へ行ってくる。サガワ君たちは王宮での滞在になるし、俺も国王陛下に呼び出されているからね。あぁ、御者はオーレリーちゃんに頼もうかな。護衛はサリーにお願いするよ。アンナさん、あとのことは頼みますね」

「かしこまりました。こちらのことはお任せください。どうかご武運を」

 いや、別に闘いに行くわけじゃない。


「また以前のように頻繁に遊びに来るから、そのときはよろしく」

「タイキの言う通り、また来ますね。ミユちゃん、バイバーイ」

「皆さん、今後ともお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます」

 順にサガワ君、ホシノさん、クロダ先生の挨拶だ。


「パパ、行ってらっしゃーい。はやく帰ってきてね~」

「ああ、行ってくるね。良い子でお留守番してるんだよ」

「はーい」

 うん、ほっこりだよ。ただ、ナナたちの視線が生温(なまあたた)かいような気がするのは、俺の被害妄想だろうか?


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