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370 サユさんからの依頼

「サトルさん、厚かましいお願いで大変恐縮なのですが、どうかミユと私を王都までお連れいただくことはできませんか?いえ、無理でしたら諦めますが…」

 サユさんが真剣な表情で俺に向かってこう言ったのは、ジル村長の家の大広間でのことだった。

 明日にはこの村を出立してこの領(ガードナー辺境伯領)の領都へ向かうんだけど、ジル村長が夜に小規模な宴会を開いてくれたのだ。昨夜の外壁構築のお礼という意味合いもあるのだろう(多分)。

 現在、この場にはジル村長のご家族、サユさんとミユちゃん、そして俺たち四人(サガワ君、ホシノさん、クロダ先生、俺)だけだ。総勢10名なので、宴会と言うよりは夕食会といった感じかな。


「えっと、サユさんとミユちゃんはこの村にずっと住むのだとばかり思っていたのですが、王都へ戻られるのですか?」

「はい。この村でも読み書きと簡単な計算については教えてもらえるのですが、この子にはもっと上の教育を受けさせてやりたくて…。あと、王都の職場を勝手に辞めてきたため、ご迷惑をおかけしたと思うのです。そのお詫びもしなければなりません」

 なるほど。親として自分の子供に良質な教育を受けさせたいと願うのは当然のことかもしれないね。慰謝料として辺境伯様から貰った1億ベルという資金もあることだし。


「王都ではどこにお勤めだったのですか?」

「とある工場で玩具(おもちゃ)の製造に(たずさ)わっておりました。私は【細工】のスキルを持っておりますので、細工職人を大量に募集していたその工場にたまたま雇っていただけたのです。ただ、王都を逃げ出す際、工場長の机の上に退職願を置いたまま失踪してしまいました。もちろん、再びその工場で働くことなどできないでしょう。でも一言だけでも、ご迷惑をおかけしたお詫びを申し上げたいのです」

 おぉ、サユさんって【細工】スキルを持ってたのか。彼女を【鑑定】したことがなかったから気づかなかったよ。

 てか、その工場ってまさか…。


「もしかしてルナーク商会が経営している工場ですか?作っていたのはリバーシという遊戯板ではありませんか?」

「えっ?どうしてそれを!」

「ああ、やっぱり…。いや、ルナーク商会の副商会長であるイザベラ・ハウゼンって俺の友人なんですよ。彼女の兄で商会長でもあるガイウス・ハウゼン男爵については、あまりよく知らないのですが…」

 ガイウス様の顔を見たことはあるけど、直接会話を交わしたことはないんだよね。


 ここでジル村長が不思議そうに質問してきた。

「サトル様は男爵家のご令嬢様のご友人になられるのですか?」

「ああ、それは…」

 たまたま知り合って…と言おうと思った俺の機先を制して、ホシノさんが突然会話に割り込んできた。

「この人も男爵なので、何もおかしくはありませんよ」

「「「「はぁ~?!」」」」

 ジル村長と奥さん、跡取りである息子さん夫婦が絶句してるじゃん。なんで態々(わざわざ)ばらすかな?


「パパがだんしゃく(・・・・・)だから、ミユはだんしゃく(・・・・・)れいじょう(・・・・・)なんだよ」

「ミユちゃん、可愛い!てか賢い!ツキオカさん、男爵令嬢ですって。国王陛下に言って、本当にそうしちゃいましょうよ」

「いや、簡単に言わないでくれ。だが、ミユちゃんが可愛くて賢いってことには同意する。異論は認めない!」

「師匠~、なんだか親馬鹿っぽくなってるぜ」

「ツキオカさんの意外な一面ですね」

 サガワ君とクロダ先生が(あき)れ顔になってるけど、全く気にならないぜ。親馬鹿上等!


 どうにも話がとっ散らかってしまったけど、最初の話題に戻そう。

「ごほん。とにかく、サユさんとミユちゃんを王都へ連れていく件については、その依頼を無償で受けますよ。あと、もしも職場復帰を希望する場合はイザベラに話を通してあげても良いですし…」

「あ、ありがとうございます。でも無償というわけには…」

「いや、無償なのは譲れません。というより、こっちがお金を払いたいくらいですけどね」

「きもっ!ツキオカさん、引くわぁ~。ちょっと気持ち悪いんですけど…」

 【悲報】ホシノさんがめっちゃ辛辣(しんらつ)な件について(泣)

 聖女様から『きもい』などと言われている、神使(しんし)かつ特級神官でもある男爵様がここにいた。てか、その人物は俺だった。


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