367 土魔法の魔術師
以前、俺が泊めてもらった客間のほうからどすどすと大きな足音と共にこちらへ近づいてくる気配がする。
俺たちが話をしている応接間にやってきたのは、酒に酔って赤ら顔になった中肉中背の中年男性だった(中が多いな)。泥酔というほどではないけど、かなり酔っぱらっていることが分かる。
「おぉ?若い美人が二人もいるじゃねぇか。おい、村長!こいつらを俺様に隠してやがったな。どっちか、いやどっちも今夜、俺様の相手をしろ」
何を言ってるんだ?こいつ。まさか夜のお相手じゃねぇだろうな?
思わず殺気があふれ出す俺だった。あ、サガワ君のほうからも殺気を感じるな。
それより二人って、ここには成人女性が三人いるのですが…。まぁ、おそらくサユさんとホシノさんのことだろうけど(クロダ先生ェ…)。
すぐにこの男を【鑑定】してみた。その結果が以下の通り。
・名前:サルトル
・種族:人族
・状態:微酔
・職業:冒険者(Cランク)
・スキル:
・鑑定 48/100
・耐鑑定 42/100
・状態異常耐性 23/100
・魔法抵抗 13/100
・徒手格闘術 18/100
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・土魔法 42/100
なるほど【土魔法】の魔術師だな。ただ、魔力量はかなり少ないし、初級魔法しか使えない。魔力が55しかない(【魔法抵抗】13+【土魔法】42)ってことは、初級魔法を5回ほど連続発動したら魔力の回復待ち状態になるね。
もっとも、発動に成功する確率は62%だから、5回中2回は失敗するかもしれない。
【土魔法】の初級魔法である【クレイウォール】を使って、この村の外壁となる土壁を生成してるってことだろう。
あと【状態異常耐性】が【コーチング】無しで勝手に上がっているのは酒によるものかな?アルコールって(肝臓にとっては)毒と言えなくもないからね。
「サルトルさん、はじめまして。俺は冒険者のツキオカと申します。彼女たちは俺の連れなのであなたのお相手はできませんよ」
名前が似ていてややこしいので、サトルではなくツキオカと名乗った俺。てか『サルトル』って、フランスの哲学者かよ。
「ああん?何で別の冒険者がここにいやがるんだ?俺への依頼はキャンセルってことか?それならそれで良いぜ。この村にはがっぽりと違約金を払ってもらうがな」
「いえいえ、この村に知り合いがいるので旅の途中に立ち寄ったまでですよ。それよりサルトルさん、真っ昼間からお酒とは良いご身分ですね」
「はっ、まぁな。なにしろ俺様は高名な冒険者パーティーに所属する魔術師だしな。あの伝説の冒険者パーティー『暁の銀翼』のリーダー、サルトル様たぁ俺のことよ」
うぉ!ちょっと驚いた。なんだか面白くなってきやがったな。サガワ君とホシノさんの顔もニヤニヤしているよ。
てか、『あの伝説の』という文言が意味不明なんだけど…。
ここで、ホシノさんがサルトル氏に話しかけた。
「えっと、その冒険者パーティーって男性がたった一人しかいなくて、しかも家名持ちじゃなかったですかぁ?それって、あなたのことですよね?」
「あ?う、ううん。えーっと、たしか…」
「たしかぁ?ご自分のことなのに『たしか』っておかしくないですかぁ?」
「いやいや、『たしか』なんて言ってないぞ。あああ、あっ、そうだ。アニオタだ。サルトル・アニオタってのが俺様のフルネームだぜ」
サガワ君とクロダ先生がくるっと後ろを向いて肩を震わせている。必死に笑いをこらえているって感じです。
別に俺は『アニメおたく』を馬鹿にする気も無いし、偏見も持ってないよ。日本での数少ない友人がラノベ好きのアニオタだったからね。
いや、そんなことより三文字目の『オ』しか合ってないじゃん。俺の姓はツキオカだっつーの。
「つつつ、ツキオカさんってアニメをよく見てました?」
「友人からはよく話を聞いてたけど、俺自身はあんまり…。それより、話を俺に振らないでくれる?」
ホシノさんが必死に笑いをこらえてるみたいなんだけど、そのせいで変顔になっちゃってるよ。
爆笑寸前の三人と憮然とする俺。
何がウケたのか分からずキョトンとしているサルトル氏。
ジル村長とサユさんとミユちゃんも話がよく分からないって顔をしているよ。どうすんの?この状況…。




