358 神国出国
俺たち四人がクロムエスタ神国を出国する日となった。
国境となる街門には大勢の人々が詰めかけていて、俺たちの出立を祝ってくれている。彼ら彼女らは俺の【リジェネレーション】によって部位欠損を修復した患者たちなのだ。
満面に笑みを浮かべた五体満足な人々の姿を見ることができて、俺も嬉しく思うよ。
この場にはモーリス枢機卿、神官のクローシュさん、預言者であるアリーナ・イリーナ姉妹も来てくれている。
「かつて役立たずだった私の存在する意義を見出してくれたサトルには、どれだけ感謝しても足りないよ。心からお礼を言いたい」
「私からもお礼を言わせてください。ツキオカ様だけでなく、そちらのお三方にも感謝を捧げたく思います」
アリーナとイリーナさんの言葉だ。俺としても冒険者ギルドからの依頼を達成できて本当に良かったよ。
てか、俺一人だったら、解決するまで半年から一年くらいの時間が必要だったかもしれない。そういう意味では、三人(サガワ君、ホシノさん、クロダ先生)に感謝しているのは俺も同じだよ。
ここでモーリス枢機卿が俺だけに聞こえるよう、小声かつ耳元で囁いた。
「例の件ですが、来春には我が国から貴国へ留学生を派遣したく、現在調整中であります。その際、ツキオカ様のご支援をいただきたく、どうぞよろしくお願い申し上げまする」
例の件とは、エーベルスタ王国の王立高等学院で生み出される混乱のことだ。このお願いを快諾したのは言うまでもない。てか、所属する国がぐちゃぐちゃな状態になるのは、俺としても困るよ。
ちなみに、ゴルドレスタ帝国の帝都を経由してエーベルスタ王国へ帰国する手段だけど、二頭立ての箱馬車を一台購入した。馬車の中で二人ほど寝泊まりできるくらいの大きさで、割と堅牢なやつだった(装甲馬車ほどじゃないけど)。
なにしろ、成功報酬が莫大な金額だったからね。もっとも冒険者ギルドから1億ゴル(+必要経費)を受け取るのは帝都で手続きするつもりなので、とりあえずは俺の資産から購入費用を捻出したよ。
「それではそろそろ出立します。皆様、またお会いする機会もあるでしょうが、一先ずはお別れです。さようなら」
ブンブンと右手を大きく振り回しているアリーナと、控えめに軽く手を挙げるだけのイリーナさん。双子の姉妹といえども、その性格は大きく違うみたいで面白い。まぁ、イリーナさんのほうは転生者で、前世の記憶持ちってこともあるんだろうけど。
・・・
「ねぇ、ツキオカさん。元ギャルのアリーナさんが好意を抱いていたのは知ってますか?」
「ん?誰にかな?」
「いやいや、鈍感なふりして何言ってんですか。ツキオカさんに決まってるでしょ」
はぁ?出会ったばかりだぞ。んなわけあるかい!
「ああもう、糞でか溜め息ですよ。この陰キャ野郎」
うおっ、久々に他人から(しかも女性から)陰キャ認定されちまった。自虐のりで自称するのは良いんだけど、他者から言われると精神的ショックが割とでかい。
「アカリ、師匠に暴言吐いてんじゃねぇよ。でも師匠、あの子がギャルっぽい格好をやめた理由って、師匠に気に入られるためだぞ」
「ええ、私もそう思います。ただ、恋愛に免疫のない子だったから…ってこともあるかもしれませんね」
なるほど。クロダ先生の意見は理解できる。たまたまそこにいたのが俺だった…ってだけだろうな。
「何だか見当はずれなことを考えているような気配がありますが、もはや何も言うまい。これこそがツキオカ品質ってことでしょう」
どこぞの製造会社か、俺は。
・・・
クロムエスタ神国を出国してから二日後、再び帝都へと戻ってきた俺たち四人。
宿泊場所については、以前にも利用させてもらったグリューネワルトという名の宿屋にした。そう、初めて帝都へ来たときにイザベラやエリさんと一緒に泊まった宿だ。
「とりあえずは冒険者ギルドへ行ってくるよ。そのあとは薬屋巡りをするから、君たちとは別行動だ。あ、もっとも君たちってお披露目パレードのせいで顔が知られてるから、あまり出歩かないほうが良いかもしれないな。もしも街を散策したいときは決して一人で行動しないように、あと顔をできるだけ隠して行動するようにね」
俺が薬屋巡りをする理由はコーア(と呼ばれているカカオ)を買い占めるためだ。ナナから『絶対に買ってこい』と厳命されているものだからね。
「俺たちも師匠についていって良いかな?宿に引きこもっていても暇だし」
ん?サガワ君だけじゃなくホシノさんやクロダ先生も同意見のようで、こくこくと頷いていた。まぁ、別に良いんだけど…。
「特に面白いことも起こらないだろうけど、それで良いのなら一緒に行こうか」
あれ?これってフラグじゃないよね?
面白いことが発生するフラグが立ったような気が…。なんか嫌な予感(笑)




