表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/373

033 初依頼③

 俺は目の前の女の子を【鑑定】してみた。

 彼女は現在、地面の上に呆然と座り込んでいる状態だが、特に怪我を()っているわけではないと思う(大丈夫そうに見える)。うん、ヒールは必要無さそうだ。


・名前:ナナ

・種族:人族

・状態:健康

・職業:冒険者(Fランク)

・スキル:

 ・鑑定        15/100

 ・耐鑑定       12/100

 ・魔法抵抗      11/100

 ・剣術        31/100

 ・徒手格闘術      5/100

 ----------

 ・水魔法        0/100


 やはり新人冒険者か…。

 【剣術】だけは【コーチング】してもらったけど、その他は独学って感じかな?

 俺のステータスと比較して、スキルレベルのあまりの乖離(かいり)に驚いた。いや、これが若者の平均値なのかもしれないな。

 てか、Dランク冒険者であるアンナさんの優秀さを再認識したよ。


 あと【水魔法】の項目はあるのにスキルレベルは0だ。これが魔法適性有りってことなのか?

 【水魔法】の達人(マスター)に【コーチング】してもらえば良いと思うんだけど、この街にはいないのか、はたまた費用が高額なのか…。


 まぁ、そんなことよりも今の状況を何とかしよう。

 俺は気絶している三人の男たちをロープで後ろ手に縛り上げ、近くの木に繋いで逃げられないようにした。

 ちなみに、ロープは冒険に必要だからと道具屋で買っておいたものだ。道具屋のおじさん、ありがとう。さっそく役に立ったよ(本来の用途とは違うと思うけど…)。


 その後、女の子に(できるだけ優しく)話しかけた。

「俺はサトルというFランクの冒険者だ。いったい何があったんだ?」

 (おび)えた目で俺を見ていた女の子は恐る恐るといった感じで答えてくれた。男である俺が警戒されるのは当然なのだが、話してくれる気にはなったようだ。

「私はナナと申します。同じくFランクの冒険者で、最初は一人(ソロ)でEランクの依頼をこなしていました。ですが最近、この人たちのパーティーに誘われて加入したんです。でも、この場所で突然襲われそうになって…」

 このあと、えぐっえぐっと泣き続けるだけのナナさん。うっ、困ったな。


 こういうときの対処法を習ってないんだけど、とりあえずこの強姦未遂犯たちをギルドに連行していくしかないか。この場に放置して、もしも魔獣に襲われたら間接的な殺人になっちゃうしな。

 俺は水筒の水を三人の男の頭の上からかけて意識を回復させた。

「うぐっ、何が起こったんだ?げっ、腕が動かせねぇ。いつの間に縛られたんだ?」

 カイルほか二名の冒険者に対して俺は宣告した。

「強姦未遂のおっさんたち、犯罪者として街まで連行するので大人しく歩いてください」

「てめぇ、何者(なにもん)だ?てか、誰が犯罪者だ。俺たちは何もしてねぇぞ。とっとと縄を(ほど)きやがれ」

「ああ、あなた方が犯罪者であることは、俺がしっかりと目撃したので分かってます。置いていかれたくなかったら、歩いたほうが身のためですよ。このままここに放置していくという選択肢もあるんですからね」

 男たちは、置き去りにされるよりはギルドで身の潔白を主張したほうが良いと判断したのだろう。のろのろとではあるが、立ち上がって歩き始めた。

 なお、縛った三人をロープで連結して、そのロープの端を俺が持っているという状況だ。走って逃げられないようにね。

 ちなみに、こいつらの武器は全て俺の【アイテムボックス】に収納した。もちろん、一時的な措置だが。


「ナナさん、歩けるかい?」

「はい…」

 あまりにもショックだったのだろう。泣き()んではいるものの、言葉少なに意気消沈した様子のナナさんだった。

 ああ、アンナさんに同行してもらえば良かったな。同性の人間がいれば多少は落ち着いただろうに…。


 街壁の門まで約3時間、もう夕暮れが近い。そして、門衛さんが俺たちの一行を見咎(みとが)めた。…って、そりゃそうだ。

 ここまで帰ってくる間、おっさんたちがうるさかったので全員に猿轡(さるぐつわ)をしている。それが幸いだった…。

 カイルほか二名がうーうー(うな)りながら、門衛さんに助けを求めようとしているが、機先を制して俺が言った。

「こいつらは冒険者ではありますが、犯罪を犯そうとしましたので俺が捕縛しました。このまま冒険者ギルドに連行していきます」

 俺は自分の分の冒険者カードと三人のおっさんの分の冒険者カードを提示した(武器を取り上げた際にカードも回収していたのだ)。ナナさんも自分の冒険者カードを提示していた。

「お、おう、そうか。お前らいったい何をやったんだ?てか、Fランク二人でCランク二人とDランク一人を捕まえたのかよ。すげぇな。ま、まぁ、良いや。入って良いぞ」

 身分証である冒険者カードを提示したのだ。門衛さんとしては門を通さざるを得ないよね。

 そして俺たちは冒険者ギルドまで、この状態のまま歩いていった。いわゆる、『市中(しちゅう)引き回しの刑』ってやつだな。

 うむ、めっちゃ目立っていたよ。


 日曜日なので一気に三話を公開。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ