326 旅は道連れ
「いや、まじで助かったぜ。兄ちゃん、あんがとな」
ビエトナスタ語で話しかけてきたのは冒険者パーティーのリーダーらしき男性だった。
「いえ、大事に至らなくて良かったです。こいつらは元・騎士ですか?」
「ああ、今回の戦争のあおりでお取り潰しになった貴族家が多くてな。その家に仕えていた騎士が無職になったもんで、野盗化したって感じだろうぜ。ま、推測だがな」
むむ、それは大きな問題じゃないか?このこと、王宮や国防軍は気づいているのかな?
「そんなことより兄ちゃんの馬車はすげぇな。外装が鉄板じゃねぇか」
ゴンゴンと拳で外板を叩きながら、めっちゃ感心した風の冒険者の男性だった。いや、あまり叩かないでくださいね。
するとここで護衛対象である箱馬車から、一人の商人らしき年配の男性が降りてきた。
「これは軍用装甲馬車ですな。あ、申し遅れましたが、私ピザロ商会の会頭ピザロと申します。このたびはご助力かたじけなく、誠にありがとうございました」
「ミーツクニ商会の使用人でスケーデルと申します。エーベルスタ王国に拠点を置いている商会でして、ビエトナスタ王国との交易を行っております。ちなみに、これは装甲馬車ですが軍用ではありません」
「ほほう、商会で運用されておられる馬車ですか。大したものでございますな。あー、もしも向かう方向が同じであれば、ご一緒していただけるとありがたいのですが…」
10名規模の盗賊団(しかも元・騎士)を軽々と退ける俺を護衛に加えたいと思うのは当然だろうね。まぁ、彼らが西へ向かうのであれば、俺としても同行を拒否するほど狭量では無い。
「俺はエーベルスタ王国のデルト、リブラ、ラドハウゼンを通って最終的には王都エベロンまで行く予定なんですが、それでも良ければご一緒しましょう」
「おお、我らはデルトの街へ向かっておりますので、そこまではご一緒できますな。いやぁ、良かった。スケーデル様の馬車を見て襲ってくるような盗賊もおりますまいて」
うん、それは言えるだろうね。魔獣は別だけど…。
「兄ちゃんがいてくれりゃ、俺らも安心だ。さっきの魔道武器もすげぇ威力だったしな」
「いや、本当に。途中で何かを交換しておられたように見えましたが、あれは?」
ピザロさんも『魔道ライフル』に興味津々のようだ。
俺は魔石カートリッジを取り外してから、本体部分をピザロさんに手渡した。
「これは【土魔法】中級の【ストーンライフル】を発動できる魔道武器で『魔道ライフル』と言います。こちらの取り外し可能なカートリッジに魔石が封入されておりまして、それを交換することで何発でも撃てるのですよ」
「おお!それは画期的な発明ですな。魔道武器は魔石の交換が面倒なため、貴族や裕福な商人の道楽としか考えておりませんでした。これなら確かに実用に足るものです。これはエーベルスタ王国でお買い求めになられたのですか?」
「ええ、エーベルスタ王国における魔道武器の主流は、この魔石カートリッジ方式になりつつありますね」
そうなのだ。俺の考案したこの方式、魔道武器業者からは今ではこぞって真似されているのである。
「あ、そんなことよりこの盗賊たちをどうします?死者はいないみたいですが…」
盗賊たちは武装解除されて捕縛されている状態ではあるが、勝手に自ら所持していた治癒ポーション(初級か中級か分からないけど)を使って斬られた個所を回復していたのだ。そのポーションっておそらく騎士団時代、個人個人に配布されていたものじゃないかと推測。
まぁ、俺の【光魔法】を見せなくて済んで良かったよ。
「次の村の警吏詰所まで連行していくしかないだろうぜ。殺して埋めっちまうのが一番楽なんだけどよ」
「うーん、馬車の進行速度が遅くなりますね。あ、もし良かったらうちの馬車に詰め込みますか?10人は余裕ですし、なんだったら護衛の方々も含めて15人でも大丈夫ですよ」
武装を入れて一人あたり100kgとしても、15人なら1.5tだ。馬の負担は大きくなるけど、次の村くらいまでなら大丈夫だと思う。
「良いのか?そいつは助かるが、料金は?」
「そうですね。こいつらをお上に突き出した際に貰える報奨金の半分で如何でしょう?」
「いや、そもそもこいつらを倒したのは兄ちゃんなんだけどな」
いやいや、あとから戦いに割り込んだ形だからね。報奨の優先権はピザロさんと冒険者たちにあるだろう。
「あ、でもちょっと待ってくださいね。準備しますので…」
できるだけ軽くして、内部スペースも広げないといけない。俺は馬車の中に入って、まずは簡易ベッドを【アイテムボックス】に収納した。
さらに天井に移動してからイーサ砲の三脚部を固定している個所を外し、イーサ砲自体を砲架ごと収納。こいつが必要になるような魔獣が出てこないことを祈ろう。
こうして『装甲戦闘車』に盗賊10名と、ついでに護衛の冒険者5名を乗せて出発したピザロさんと俺の馬車二台であった。
元々、護衛の冒険者は徒歩だったので、進む速度が劇的に向上したわけだ。ピザロさんに喜ばれたのは言うまでもない。
なにしろ倍以上も速度が違うからね。このペースならすぐにでも最寄りの村へと到達することだろう。




