032 初依頼②
森の中は奥へ進むほど木々が鬱蒼と茂っていて、日の光が差し込まない。まぁ【光魔法】の【ライト】を使うほどじゃないけど。
様々な植物を【鑑定】しつつ進んでいくと、ようやく見つけた。
・名前:ポロン草
・説明:治癒ポーションの材料となる薬草の一種。
これだよ。てか、ここには3本しかないよ。これで30ベルか…(チロルチョコ1.5個分だ)。
なんだか暗い気持ちになりそうだ。
…っと、そのとき女性の悲鳴と争うような物音が聞こえてきた。うーん、またかよ…。デジャブーを感じる。
【俺+森=トラブル】という公式でもあるのだろうか?
とにかく、物音のするほうへと急いで向かった。
「おらおら逃げねぇと捕まっちまうぞぉ」
「くぅ~、そそるねぇ」
「遊ぶな。とっとと取り押さえろ」
三人の男が一人の女の子を取り囲んでいた。盗賊だろうか?
俺は【アイテムボックス】からスマートフォンを取り出して電池残量を確認してみた。
お、さすがは時間経過無しの【アイテムボックス】だ。うっかり電源をOFFにするのを忘れてそのまま入れていたのに、電池残量は全く減っていなかったよ(94%だった)。
カメラ機能を起動してから動画モードにして、この状況の撮影を始めた。犯罪の証拠として、あとで必要になるかもしれないからね。
女の子は10代後半くらいの年齢に見える。金髪で顔立ちもなかなかだ。てか、かなり可愛い。
ショートソードってやつかな?全長が短い剣を両手で構えて男たちを威嚇している。新人の冒険者か?
男たちの中の一人が腰に佩いていた剣を抜き放った。
「おい、傷をつけるな。今からお楽しみの時間なんだからよ」
「わーかってるって。こいつの【剣術】スキルは31だぜ。すぐに終わらせてやるさ」
俺はというと、助けに入ることもなくスマホでの撮影を継続していた。薄情な気もするが、助けるのはまだ早い(てか、助けるのは確定だけどね)。
で、剣を持った中年男性を【鑑定】してみたのだが、その結果を見て驚いた。
・名前:カイル
・種族:人族
・状態:健康
・職業:冒険者(Cランク)
・スキル:
・鑑定 44/100
・耐鑑定 31/100
・剣術 52/100
・徒手格闘術 41/100
おいおい、冒険者かよ!しかもCランクだよ。これがバッツさんの言っていた不良冒険者ってやつですか?
思わず他の二人も【鑑定】してみると、一人が『冒険者(Cランク)』で、もう一人が『冒険者(Dランク)』だった。
こいつらは同じパーティーなのか?
カイルって奴は女の子をいたぶるように剣を合わせている。一合、二合…。
ここだけを見れば、先輩冒険者が新人に稽古をつけてくれているという風に見えなくもない。
でも結局、女の子の持つ剣は男の剣によって弾き飛ばされ、女の子はついに丸腰の状態になった。
男はゆっくりと剣を突き付けながら近づいて、女の子の服だけを浅く切り裂いた。危ねぇな、おい。
「よし、お前そこで服を脱げ。下着もだぞ。剣で切り裂かれたくはないだろ?」
ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる三人の男たち。
女の子は絶望の表情で、両手を服のボタンにかけている。
ここまでだな。すでに証拠は十分だ。
俺は【風魔法】の【ウインドブラスト】を発動して、まずは剣を手に持っている男(カイルって奴)をぶっ飛ばした。
続けて、残りの二人も順番にぶっ飛ばして気絶させていった。
女の子は目の前で何が起こっているのか判断できないようで、呆然としていたけどね。
「大丈夫ですか?」
木の陰から(女の子を怖がらせないように)ゆっくりと姿を現した俺。
この状況もつい最近経験したような気がする(デジャブーだ)。




