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313 王都防衛戦⑦

 壁の外側かつ東門の前、約5mほどの位置に簡易テントが張られた。テーブルと椅子も準備されている。

 これは敵軍との会見(交渉)を王都内で行いたくないためである。

「まさか降伏などはあり得ませんよね?」

 俺の質問にパレートナム課長補佐が答えた。

「ああ、当然だ。それに敵さんもそんなことは期待してないだろうよ。人質と交換って形で、食糧支援を要求するくらいが落としどころだろうぜ」

 せっかく、敵を飢えさせているのに、それもまた業腹(ごうはら)なことだ。国防軍総長、いや国王陛下はどう判断されるだろうね?


 きっちり一時間後に先ほどの軍使がやってきた。今回は二騎だ。

 おそらく、交渉役とその通訳ってことだろうな。

 こちらからもそれなりの立場にある人物と、リュミエスタ語が話せる者が会見の場に(のぞ)む。一人は国防軍第二部長であり、通訳のほうは第二部第一課の課員らしい。

「あいつが出るなら安心だ。相手に言いくるめられるってことは、絶対に無い」

 第二部長に対するパレートナム課長補佐の信頼が(あつ)い。


 ちなみに、俺たちは敵軍が変な動きをしないように、外壁上から(にら)みを()かせている。

 特に俺はイーサ(キャノン)に取りついて、いつでも発射できるような態勢だ。

「この魔道武器が100台くらいあって、弾丸も山ほどあったら、奴らを皆殺しにできますよね?」

「できるかできないかで言えば、できますね。でも、それはもはや戦闘ではなく、単なる虐殺ですよ」

 待機状態が暇なので、チェリーナさんと会話する俺。


 近くにいたパレートナム課長補佐も会話に加わった。

「エーベルスタ王国では、この武器を量産してんじゃねぇのか?いや、俺が国のトップなら間違いなく量産するぜ。まぁ、国家機密だから答えられんだろうが…」

「ご想像にお任せします。あ、一つ言っておきますが、俺を殺してこのイーサ(キャノン)を奪い、分解して調査したとしてもその秘密は分からないと思いますよ」

 中の『魔道基板』を【鑑定】しても【ウインドブラスト】のゼロ距離発動ってのは絶対に分からないからね。


「そんな信義にもとることはしねぇよ。エーベルスタ王国との敵対行動は絶対に取らんし、特にあんた個人との友好関係はずっと続けたいと思ってるぜ」

「ありがとうございます。俺も同じ気持ちですよ」

「ツキオカ様がエーベルスタ王国で叙爵されていなければ、うちの国の貴族として引き入れられたのに残念です」

 チェリーナさんが不穏な発言をしているよ。てか、パレートナム課長補佐もこの意見に賛同した。

「まったくだ。いや、今からでも遅くないぜ。我が国でも男爵位に、いや子爵位くらいに叙爵しちまえば良いんだよ。ツキオカ殿、どうよ?」

 いや、『どうよ』じゃないよ。まぁ、冗談なんだろうけど…。


 ・・・


 そんな話をしている間に、どうやら敵軍との交渉も終わったようだ。

 このあと第二部長から教えてもらった交渉内容は以下の通り。


・降伏はしないし、王都も開城しない。

・人質がどのような処遇になろうとも構わない。

・この決定は国王陛下のご意思である。

・ただ、イリチャム様のご母堂を暗殺した犯人を引き渡してもらえば、一万食分の食糧支援を行う。


 この最後の一文がポイントだな。

 犯人捜しをしている間、人質が殺されることはないだろうし、再度の戦端も開かれないだろう。要するに、時間を稼げる。

 時間の経過が敵軍の首を絞めることになるのは、相手の兵站状況を考えると明白なのだ。『一万食分の食糧支援』ってのは、釣りの餌としてはなかなか良い大きさだと思うよ。

 さて、これを受けて、果たして敵軍がどういう行動に出るのか…。不謹慎だけど、かなり興味深いね。


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