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031 初依頼①

 今日はいよいよ、冒険者として初めての依頼を受けてみようと思う。と言っても、Fランク依頼の『薬草採取』なんだけど…。

 治癒ポーション(初級)の原材料となるポロン草という植物の採取らしいのだが、街の外に出なければならないこと、街道からは少し()れた場所であること、周辺に弱い魔獣が出現する可能性もあることなどから冒険者ギルドへの依頼案件になっているらしい。

 要するに、子供が小遣い稼ぎで採取できるようなものじゃないってことだ。


 とは言っても所詮はFランク依頼…。普通の大人ならそこまで危険じゃないってことだな。

 なので、依頼料はめっちゃ安い。

 ポロン草1本の買取価格は10ベルだ。100本取ってきてようやく1,000ベル(一回の食事代くらい)。

 治癒ポーション(初級)を作るのにポロン草が30本くらい必要らしいので、ポーションの価格(薬屋で1本1,000ベルだった)的にも納得できる。

 群生地なんかは無いのかな?まぁ、仮にあったとしても、根こそぎ取っていくなんてマナー違反はしないけど…。


 ちなみに新人冒険者って、(報酬の問題またはイキッて)Eランクの討伐系の依頼を受けがちで、どこかのパーティーに所属している場合だったら、パーティーとしてもっとランクの高い依頼を受けることになる。したがって、Fランクの依頼はなかなか受注者がいないらしい。

 仕方なく、冒険者ギルドの職員が課外業務としてこなすことが多いらしく、俺が『薬草採取』の依頼書を受付に持っていくと、えらく喜ばれた。

「ポーションの安定供給のためにも、ぜひよろしくお願いします(報酬は安いけど)」

 受付のお姉さんの心の声(上記のカッコ内)が聞こえた気がした。でも良いのだ。戦いなんて怖いからね。

 それに非常に低い確率だけど、中級や上級の治癒ポーションの材料になる薬草が見つかったりするかもしれない。それを採取できれば、ちょっとしたボーナス報酬になるらしいよ。

 あと俺には【鑑定】スキルがあるからね。それがきっと役に立つはずだ。


 なお、アンナさんの同行はお断りした。薬草採取程度の依頼に付いてきてもらうなんて恥ずかしい。

 俺は一人で街壁の門まで歩いていき、そこにいた門衛さんに冒険者カードを提示した。

「Fランクが一人で大丈夫か?誰も同行者はいないのか?」

 めっちゃ心配されてしまった。なんか良い人だな。

「単なる薬草採取だけなので大丈夫ですよ。ポーションも持ってますし…」

「そうか。とにかく常に周りに気を配れよ。魔獣はどこから出てくるか分からんからな」

「はい、ご助言ありがとうございます。では行ってきます」

 いや、ほんと良い人だった。


 俺は依頼書に書かれていた地図の場所へ向かってのんびりと徒歩移動する。この地域における今の季節は夏なので、日差しが少し暑く感じる。

 ただ、日本の夏のように汗が吹き出るような暑さではなく、吹き渡る風が涼しくて気持ち良い。日本で例えれば、春から初夏にかけての季節感だな。

 最初は街道沿いに歩いていたんだけど、目印となる大岩のところから街道を()れて森のほうへと進んでいった。

 時間にして2時間半、つまり距離的には約10kmってところだろう。

 地図によればこのあたりのはず…。

 俺は目についた植物を片っ端から【鑑定】していった。そして探すこと約30分。


「見つからねぇ…」

 森の中までは入らず外縁部分を探していたのだが、目的の薬草は全く見つからない。

 本当にこの辺なのか?

 少し森の中に入ってみようかな。


 依頼書には『最低でも何本採取で、足らなければ違約金』なんてことは書いていなかった。つまり、成果無しでも違約金は無い。

 とは言っても、意気込んで出発したのに成果0本では恥ずかしすぎるよ。

 仕方ない…。危険だけど森に入ろう。そう言えば、この世界に転移したときだって森の中からのスタートだったじゃないか。うん、大丈夫大丈夫。


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