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003 騎士と魔術師

 剣を(まじ)えている騎士と山賊たち。

 やはり数の多い山賊たちのほうが優勢だ。ランチェスターの第一法則だな。

 たとえ騎馬武者であっても多数の雑兵(ぞうひょう)に囲まれては数の暴力に押しつぶされてしまうだろう。


 そして、俺の魔法によっていきなり背中から血を噴き出した男。

 そのすぐ隣にいた山賊の仲間がギョッとしたように周囲を見回した。対峙していた騎士がその隙を見逃さず、そいつを斬り伏せた。


 俺はどちらが正義なのか分からないまま、山賊たちを攻撃することに決めた。てか、すでに一人倒しちゃったし…。

 まぁもしかしたら極悪非道な領主を討とうとしている善良な人民の集団という可能性もあるのだが、山賊たちの顔つきはどう見ても悪人だった。うん、俺の勘(当てにならない)を信じよう。


 俺は【ウインドブラスト】を選択して、離れたところから騎士に向かって弓で矢を放とうとしていた山賊に照準をつけた。

 放たれた魔法は(目には見えなかったけど)山賊の側頭部を殴りつけた感じになった。なるほど【ウインドカッター】が斬撃で、【ウインドブラスト】が面攻撃ってわけか。

 ならば【ウインドブラスト】をメインに攻撃するか。できるだけ殺したくないしな。

 てか、さっき俺が【ウインドブラスト】で倒した山賊だが、ピクリとも動かない。まさか死んでないだろうな?まぁ【ウインドカッター】よりは殺傷力が低いと信じよう。


 俺は隠れている木の後ろから見える範囲の山賊たちを一人一人的確に昏倒させていった。あれ?そう言えば魔法を連発してるけど魔力は枯渇しないのかな?

 いきなり『魔力切れのため気絶』とかやめてくれよな。

 そしていつの間にか人数的には逆転していて、残った山賊を騎士たちが斬り伏せていった。うん、騎士側の勝利だね。

 こうして戦闘は終結した。気絶している山賊たちをロープで縛り上げていく騎士たち。運ぶのが大変そうだ。いや、足を縛ってないところを見ると歩かせるつもりだろうか?バターン死の行進。


 ちなみに、俺は騎士たちにとっては恩人のはずだが、同時に彼らから見れば得体のしれない不審者でもある。

 要人警護の任務にあたっているっぽいし、もしも姿を現して『山賊の仲間として捕縛』なんてことになったら理不尽極まりない。

 なので、街道上に出ていくかどうか迷ったのだが、彼らのほうから大声で呼びかけてきた。

「どこのどなたか存じませんが、魔法による援護射撃につきまして、(あるじ)に成り代わり感謝申し上げます。できればお姿を見せていただきたい」

 うーん、リスクはあるが、俺としても情報が欲しいんだよな。仕方ない、出ていくか…。


 俺はゆっくりと木の後ろから姿を現し、街道上に降りていった。

 数人の騎士が抜剣(ばっけん)して剣先を俺のほうへ向けたが、隊長らしき人に叱責されていた。恩人に剣を向けるとは何事だって感じだ。

 そして、その隊長らしき人が話しかけてきた。

「高名な魔術師の方とお見受け致します。このたびは我らへのご助力かたじけなく…」

「ああ、いえ礼には及びません。俺は遭難者でして、ここがどこなのかといったことをお教えいただきたくて参戦しただけなんです」

「さようですか。それでは我らにご同行願えませんか?ここから馬で半日程度の場所に我らの目的地である街がございます。捕虜となった賊たちと共に徒歩による移動となってしまい申し訳ないのですが、いかがでしょう?」

 騎士階級といえば平民よりも上の身分だろうに、腰の低い隊長さんだ。いや、隊長かどうかは知らんけど…。

「あ、申し遅れました。私は我が(あるじ)の護衛部隊長を務めておりますマクシミリアン・ロードレイクと申します。以後お見知りおきを」

 おぉ、やはり隊長さんだった。


 まぁ街へ向かうのなら好都合。ぜひ同行させてもらおう。

「俺はサトル・ツキオカと申します。ぜひ同行させていただきたく、よろしくお願い申し上げます」

 俺の名乗りを聞いて隊長さんが少し驚いていた。なぜだ?


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