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028 指名依頼

 その日の晩餐ではエイミーお嬢様から昼にあった出来事を色々と聞かれた。

「冒険者ギルドはいかがでしたか?(から)まれたりしませんでした?」

 …って、やはり(から)まれるのが様式美(テンプレ)なのだろうか?

「いえ、マウントバッテンさんというBランク冒険者と知り合いになれたので良かったです。問題なく冒険者登録もできましたし…」

「そうですか。それは良かったです。あ、そうだ!」

 お嬢様が何か良いことを思いついたって顔で、提案してきた。

「領都リブラへの帰路ですが、ここを一か月後に出立する予定です。そのときの護衛として、ツキオカ様を指名依頼させていただきますよ」

 その場にいたアンナさんが教えてくれた。食事中の現在、侍女姿でお嬢様の後ろに控えていたのだ。

「ツキオカ様、指名依頼というのは冒険者ギルド経由で特定の冒険者に依頼を出すことでございます。冒険者にとっては非常に名誉なことですので、ほとんどの方が受注されるようですよ」

 なるほど。あれ?もしかして俺を帰路の護衛として雇うために冒険者になることを勧めたのか?いや、それはさすがに穿(うが)ち過ぎか。


「ああ、もしかすると次は前よりも大規模な襲撃が考えられますよね。俺だけでは不安なので、『白銀の狼』というBランクパーティーにも指名依頼を出してはいかがでしょうか?」

「ああ、先ほど(おっしゃ)っていたマウントバッテンさんという方がそのパーティーの方なのかしら?」

「ええ、パーティーのリーダーだと言っていました」

「ふむ、ツキオカ様が信頼できる方なのは間違いないのですが、そのパーティーが信頼できるかは…。どう思う?アンナ」

 お嬢様が後ろのアンナさんに質問した。

 アンナさんは少し考えたあと、こう答えた。

「マウントバッテン氏は信用できると思います。他のメンバーの方々にはお会いしていないので判断できかねますが…」

「そう、それではアンナに命じます。その白銀のなんとかというパーティーのことを調査し、あなたが信用できると判断すればギルドに指名依頼を出すこと。良いわね?」

「承知しました」

 これでもしもバッツさんのパーティー『白銀の狼』へ伯爵家からの指名依頼が出ることになれば、少しは今日の恩を返せるんじゃないかな。


「それより、なんだかアンナとツキオカ様の様子がおかしいのだけど、どうしたの?ねぇアンナ、結婚退職されると困るのだけど…」

「お、お、お嬢様、な、な、何を!私とサトルさんは別に何でもありません」

「うわぁ、サトルさんって呼んでるんだぁ。今日一日で随分と親しくなったみたいで私も嬉しいわ」

 ニヤニヤと悪い笑顔のお嬢様…。いや、誤解です。

 でも本当に親しくなれたのなら俺も嬉しいですよ。いや、まじで。


「ところでツキオカ様、しばらくは一人(ソロ)で活動されるとのことですが、このアンナをお貸ししましょうか?これでもDランクの冒険者ですので、少しはお役に立てると思いますよ」

「え?それはとてもありがたいお話なんですが、アンナさんのご意思は?」

 顔の赤みが少しは治まってきたアンナさんが落ち着いた様子で申し出てくれた。

「お嬢様のお許しさえいただければ私に異存はございません。ツキオカ様のお役に立ちたいと思っております」

 俺としては多人数のパーティーの中に新人として入るのは気が重いけど、アンナさんと二人だったら逆に嬉しい気持ちで一杯だ。

 あ、でも、俺に気があるんじゃないか?などという勘違いだけはしないように心がけよう。『陰キャ』ってすぐ勘違いするからな。

 もっと詳しく言えば『自分に優しくしてくれる女性がいた場合、その人が実は自分のことを好きなんじゃないか?』などと勘違いしがちなのだ。誰にでも優しいってだけなのにね。…って、こういう自虐発言には我ながら悲しくなるよ。


 ・・・


 翌日の早朝、アンナさんと俺は前日と同じく馬車で街外れまで行き、そこからは歩きでデルトの街の中心部へと向かった。

 アンナさんは冒険者ギルドで『白銀の狼』の評判などを調査。

 俺のほうは道具屋や薬屋でこれからの冒険に必要な物を調達する。何か武器も欲しいな(格好付けのため)。

 道具屋で野営道具などを購入し、薬屋で各種ポーション類を買った。…ってポーションだよ!あるんだ、ポーション。

 以前やっていたゲームでは、錬金術スキルを取得して色々なポーションを作ったものだ。懐かしい…。


 購入したのは治癒ポーションの初級10本、中級2本、上級1本。魔力回復ポーションの初級を5本だ。

 治癒ポーションは俺の【光魔法】があれば()らないかな?とも思ったのだが、一応念のため…。いわゆる保険だな。

 初級が1本1,000ベル、中級が1本5,000ベル、上級が1本30,000ベルだった。(たけ)ぇ~。合計で50,000ベルだ。

 魔力回復ポーションのほうはもっと高くて、初級が1本50,000ベル。中級や上級は高価過ぎて、そもそも在庫が無かったよ。

 お嬢様からいただいたお金の三分の一くらいを(つか)ってしまった。早く自分自身で稼げるようにならないとな。


 あ、そうそう。俺の魔力量だけど、計算してみると(現時点で)431だった。これは初級魔法を43連発、中級魔法なら21連発できるだけの量だ。チートかな?

 魔力回復ポーション(初級)で回復できる魔力は、1本で30らしい。…ってことで、ポーションは5本もあれば十分だろ。

 てか、魔力って1分当たり1~3ほど回復するって聞いていたのだが、だとすると魔力回復ポーションの効能は10分から30分の時間を短縮するってだけだ。それにしては値段が高いよな。

 まぁ、連続戦闘で魔力が枯渇するような事態になったときのための保険だよ。そんなに使うことは無いと思うけど…。


 そのあと服屋で替えの服や下着を購入し、さらに武器屋や防具屋にも行ってみた。

 やっと服と下着を替えられる。なんとこの世界に転移してから着た切り雀だったのだ。悪臭を発していなかっただろうかって少し心配になったよ

 ただし、武器や防具はちょっと値段が高過ぎて手が出なかった。200~300万ベルってのが相場みたい。高いよ、買えねぇよ。俺の(今の)残金は約70万ベルだよ。

 てか、新人冒険者ってどうしてるんだろ?あとでアンナさんに聞いてみると、冒険者ギルドが武器や防具のレンタル(当然、有料)をしているそうだ。俺も借りようかな。


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