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268 陛下へのお披露目②

「魔術師でなくても発動できるのか?いや、これは魔道具である(ゆえ)、今の問いは愚問であったな。うむ、それでは()も撃たせてもらおうか」

 俺はコッキングレバーの操作、ハンドル部分に取り付けた発射スイッチ、照準の付け方等を詳細に説明していった。

 その間に新たな木製の(まと)(5本ほど)が準備されていた。ただ、その位置は戦闘訓練場の中央付近だったので、(まと)までの距離は300mくらいだろうか?うん、きっと忖度(そんたく)だね。


「撃つぞ」

 その言葉と同時に発射された弾丸は、狙い過たず木製の(まと)の一つを粉砕した。侍従さんが後ろで拍手しているよ。これはお追従(ついしょう)じゃないな(実は俺も陛下の射撃技量に感心した)。

 さらにコッキングレバーを引いて次弾を装填し、次々に連続発射していく陛下…。確実に粉砕されていく(まと)…。次第に侍従さんの顔色が悪くなっているような気がする。あまりの威力に恐怖を覚えているのかもしれない。


 弾倉(マガジン)の残り全てを消費、つまり四連射したあと、満足気な表情の陛下が俺とイザベラのほうへ振り返り、こう言った。

「これは恐ろしい兵器だな。戦争の様相を一変させるような発明ではないか?しかも初級魔法しか使っていないというのが、また素晴らしい!」

「はっ、ありがとうございます。ただ、イザベラ嬢と私は、強力な魔獣に対する武器としてこれを製作致しました。戦争に用いる際は、侵略戦争ではなく防衛戦争でのみ使用していただきたく伏してお願い申し上げます」

「街壁の上や、防衛拠点に固定して運用する以外にも、装甲馬車の屋根の上に固定することで機動力も付加できると思うのだがな。それを作る気は無いと申すか?」

 ああ、その発想は無かったよ。車体の前後に各1門、合計2門を設置すれば、超強力な兵器になるだろうね。装甲馬車ならぬ装甲砲車ってところか。


「いえ、ご命令とあれば装甲馬車の製造業者と相談し、製作させていただきます。それをどう用いるかについて、口出しできる権限はございませんが…」

「うむ、製作に要する費用にもよるが、いざというときのために王室で一台くらいは所持しておきたいところよの。とりあえず、見積りを提出するように」

「はっ、かしこまりました」

 馬車の製造業者に伝手(つて)など無いから、どうしてもイザベラ頼みになるけどね。

 イザベラのほうを見ると真剣な表情で(うなず)いてくれたので、きっと大丈夫だろう。


 ・・・


 …っと、ここで新たな人物が登場した。

 真っ赤な長髪をなびかせた美人だった。年齢は不詳だが、おそらく20代後半から30代前半くらいかな?

 魔術師っぽいローブを羽織っているので、宮廷魔術師かもしれない。


「陛下、お召しにより参上致しました。これは何事ですかな?」

「おぉ、来たか。ああ、まずは彼らを紹介しておこう。ツキオカ男爵と元ハウゼン侯爵令嬢であったイザベラ嬢だ」

 陛下が俺たちのほうを向いてから続けて言った。

「彼女は宮廷魔術師長であるグロリア嬢だ。平民ではあるが二属性(ダブル)の魔術師であり、【風】は達人(マスター)、【土】は長老(エルダー)にも達しているぞ」

 俺は即座に彼女を【鑑定】してみた。


・名前:グロリア

・種族:人族

・状態:健康

・職業:エーベルスタ王国宮廷魔術師長

・スキル:

 ・鑑定        89/100

 ・耐鑑定       90/100

 ・魔法抵抗      93/110

 ・徒手格闘術     78/100

 ----------

 ・風魔法      100/100

 ・土魔法      110/110


 すごっ!

 【風魔法】も【土魔法】も上級魔法を発動できるし、【魔法抵抗】のスキルレベルは上級魔法を73%の確率で抵抗(レジスト)できるものだ。なお、当然だけど初級や中級の攻撃魔法を撃たれたとしても100%抵抗(レジスト)可能だよ。

 この国の切り札って感じの人物だな。

 見た目は若いけど、実は割と年配の方なのだろうか?いわゆる美魔女ってやつ?


「はじめまして。サトル・ツキオカと申します。お会いできて光栄です」

「ああ、グロリアだ。すまんが敬語は苦手でな。貴族相手に失礼かもしれんが、許してほしい」

「いえ、私も一年前は平民でしたから、全く問題ありません」

 彼女は裏表の無さそうな良い人っぽい。笑顔が素敵な美人さんだな(年齢不詳だが…)。


「ルナーク商会のイザベラと申します。今は平民ですのでお気遣いは無用でございます」

「ああ、よろしくな。ルナーク商会といえば、リバーシの販売元か。あれは面白いな。魔術師仲間と休憩中に楽しんでいるよ」

「ありがとうございます。今後はこちらのツキオカ男爵と共に魔道具事業にも取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます」

 イザベラから仕事におけるパートナーとして認定されたことをちょっと嬉しく感じている俺だった。

 あ、ただし、結婚とかは考えてないよ。俺の中では良い『相棒』って認識なのだ。


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