表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

254/373

254 魔獣襲撃②

 Bランク魔獣のミノタウロススカウトが俺たちに気づいたようで、こちらへ向かって駆け寄ってきた。いや、そんな柔らかい表現ではあの迫力は描写できないな。奴はまさに所持しているスキルの通り『突進』してきたのだ。

 100m走の世界記録を塗り替えるようなスピードでやってきたそいつは、大盾にぶつかって押し(とど)められた。ゴォーン!という、ものすごい音がしたけどね。

 しかも20人の騎士たちで作ったバリケードが少し後方へ移動させられたことから、その運動エネルギーのすごさを実感できるというものだ。


 ミノタウロススカウトの角が突き刺さった大盾は、そいつの頭の一振りで空中高く舞い上がった。即座に後方にいた別の騎士が最前線と入れ替わり、再び大盾の障壁を維持したよ。見事な連携だ。

 間髪入れず、左右から10騎ずつの騎兵が突撃し、左右同時攻撃を仕掛けた。

 ミノタウロススカウトが自身の持っている斧で一方の攻撃を(さば)いている隙に、もう一方の攻撃がダメージを与えていた。これは楽勝か?


 俺たち『暁の銀翼』は、負傷した騎士たちを治癒すべく後方待機となっている。俺とオーレリーちゃんは【光魔法】、サリーは健康銃(ヘルシー・ガン)、アンナさんとナナは治癒ポーションを準備して、いざというときに備えているよ。

 ただし、馬を駆る騎兵たちはヒット&アウェイを繰り返していて、決して無理な突撃はしていない。なので、現時点での怪我人は生じていないようだ。


 そして騎兵による何度目かの突撃で、ついに剣が奴の心臓を貫いた。勝負ありだな。

 …って、結局、俺たちは何もしてないじゃん。

 弛緩した空気がこの場に流れた。まさに完全勝利だな。

「マルクル小隊長、さすがですね。見事な連携攻撃でした」

 彼らを()(たた)えることしか、することがないよ。


 ・・・


「お兄ちゃん!」「サトルさん!」

 ナナとアンナさんの叫び声が同時に聞こえた。

 彼女たちの指さす方向には、先ほどと全く同じ光景が現出していた。いや、同じではないな。さっきは一体だったけど、今度は三体だ。

 即座に望遠鏡越しの【鑑定】を試みると、微妙にスキルレベルの数値は異なるけど、種別としては先ほどと同じミノタウロススカウトだった。ただし、この三体の【魔法抵抗】スキルは73・87・89だったけどね。

 これは中級魔法が抵抗(レジスト)されない確率を計算すると17%・3%・1%ということだ。ただ、上級魔法なら100%ダメージを与えることができる。


 俺は20人の騎士たちが作る大盾の障壁(バリケード)の後方に、【土魔法】を使って魔法攻撃の足場となる土台を構築した。高さ2mの土壁とその後ろに1mの土壁、さらにその後ろに50cmの土壁だ(階段状ってことだな)。

 1mの土壁の上に立って魔法攻撃を行えるようにしたのだ。

 サガワ君とホシノさん、それにクロダ先生もだけど、俺のことを驚愕の表情で見ているよ。まぁ【土魔法】が使えることは言ってなかったからね。


「マルクル小隊長!先ほどと同様の対応をお願いします。今度は俺たちもここから魔法攻撃を行いますので、よろしくです」

 続けて、仲間たちへの指示だ。

「アンナさんは『複合魔法』を。サリーとナナは俺たちの背後を警戒。オーレリーちゃんとホシノさんは後方待機で負傷者の治癒を。サガワ君も【火魔法】の中級を頼む」

 クロダ先生には戦闘力が無いから、特に指示は出さない。

 俺の作った土壁の上には左からサガワ君、アンナさん、俺の順に並んでいる。準備万端だ。


 街道の遥か先では、三人の人間らしき姿も確認できたのだが、ミノタウロススカウトによる殺戮(さつりく)劇の対象となっていた。

 おそらく自分の魔力を使って魔獣の召喚を(おこな)った者たちだろう。

 てか、魔獣召喚の人工遺物(アーティファクト)って、結構な数が出回っているのかな?

 三人の召喚主を殺害して興奮状態となったのだろう。鼻息荒く周囲を見回していたミノタウロススカウト三体は、どうやら俺たちにも気づいたようだ。そして、先ほどと同じくこちらへ向かって突進を開始した。


 【魔法抵抗】89の個体が中央先頭を走り、その右斜め後ろに【魔法抵抗】73が、左斜め後ろに87の個体が(くさび)型陣形で突進してきている。つまり、こちらから見ると左から73・89・87ってことだな。

 角を突き出し、頭を下げた前傾姿勢で突進してくるミノタウロススカウトたち。

 奴らの目線は下を向いているため、閃光銃(フラッシュ・ガン)による目潰しは難しいかな?

 俺は隣にいる二人に攻撃目標を指示した。

「左からA・B・Cと呼称する。アンナさんとサガワ君はAの足元を攻撃!俺は中央Bを攻撃する」

「「了解!(っす)」」

 本当は胸元(心臓部)や腹部を攻撃したいところなんだけど、奴らが前傾姿勢なので狙うことができない。とりあえず怖いのは『突進』なので、機動力を奪うことを優先したのだ。


 最初の奴と同じであれば、8~9秒で大盾の障壁(バリケード)まで到達するだろう。魔法攻撃が可能な時間は極僅(ごくわず)かだ。

 サガワ君が【火魔法】中級の【ファイアボール】を発動し、個体Aの足元を狙った。命中はしたみたいだけど、抵抗(レジスト)されたのかダメージは無い。

 アンナさんが【火魔法】初級の【ファイアアロー】と【水魔法】初級の【ウォーターカッター】の『複合魔法』(通称『沸騰水流』)を発動したようで、細い水流が発射されたのが確認できた。しかし、こちらも命中はしているけど抵抗(レジスト)されているみたいだね。

 もっとも、二人とも相手との距離が遠すぎて、まだ有効射程距離とは言い難いんだけど…。


 俺も【水魔法】中級の【アイススピア】と【風魔法】初級の【ウインドブラスト】の『複合魔法』を準備している。これは上級魔法相当になるので、当たれば一撃で倒せるはずだ。

 俺としては、十分に引き付けてから一発で決めるつもりだ(発動に失敗する可能性は考えない)。

 アンナさんとサガワ君も二撃目を準備している(のだと思う…この世界の魔法って無詠唱だから、発動タイミングが分からないんだよね)。しかし、奴らの到達時間を考えると、あと一回攻撃できるかどうかってところだろうか?

 うーん、これってかなりヤバい状況かもしれない…。

 三体ものミノタウロススカウトの『突進』を騎士たちの大盾の障壁(バリケード)が防げるのか、全く分からないからね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ